お金の悩みを解決!マネープランクリニック/50代シングルの人のお金相談

50歳貯金3300万円。つつましやかで、時々贅沢する老後を送りたい(2ページ目)

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、老後を過ごすためのマンション購入を計画している50歳、独身の会社員女性。加えて、早期退職の希望もあり、資金的に同時に実現できるか悩んでいるとのこと。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

あるじゃん 編集部

執筆者:あるじゃん 編集部

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アドバイス1 この貯蓄ペースなら望む老後は十分に可能

マンション購入についてのご相談ですが、希望されている内容でまずは試算してみます。
 
購入時期は5年後、物件価格は諸経費込みで2500万円とします。年間300万円の貯蓄ペースが継続されているとすると、購入時には1500万円貯蓄が上乗せされますから、金融資産の総額は計4800万円(投資商品は評価額が変わらないとする)。この時点での年齢が55歳。それ以降、決まっている大きな支出はないわけですから、わざわざ利息が発生する住宅ローンを組む必要はありません。現金で購入します。
 
ただ、ご本人としても気になるのが、もうひとつの希望である早期退職でしょう。給与所得がなくなる上、貯蓄は半減してしまうわけですから。
 
例えば、マンション購入と同時に退職したとします。幸い家賃収入がありますので、これが実質の利益が月4万円ですから、生活費が現在と変わらないなら、毎月6万~7万円のマイナス。ただし、マンションの管理費が新たに発生します。月1万5000円~2万円とすれば、トータルの赤字は年間で約100万円。公的年金支給となる10年間で1000万円。これを貯蓄から差し引けば、65歳で手元に残る貯蓄は1300万円となります。また、生活費とは別に5年間は国民年金保険料が、またそれ以降も健康保険料等が発生しますが、これは退職金でほぼ相殺され、貯蓄はおよそ上記の額と考えていいでしょう。
 
公的年金の受給額は140万円とのこと。これが現在まで支払った保険料から算出した額なのか、あるいは定年時まで勤務した場合の額かが不明ですが、ここは便宜上そのまま140万円とします。手取額は、社会保険料等が天引きされ、月10万円前後でしょうか。だとすれば、現在の生活費+マンション管理費=12万円程度とすれば、毎月の赤字は2万円前後。家賃収入はどこまで継続されるのかは不確定ですので、ここでは考慮しないとして、90歳まで生きるとすれば、25年間で600万円。まだ手持ち資金が700万円残っています。さらに、65歳以降の試算では家賃収入を加えていません。どこまでそれが得られるかは不確定ですが、物件自体を売却してもいいわけですから、実質、手持ち資金はさらに増えているはず。したがって、長生きリスクや医療費、介護費用等が発生しても、それが一般的なコストであれば、老後について資金的に心配することはないと考えますし、相談文にあります「時々贅沢をする老後」も十分に可能です。
 

アドバイス2 退職後はセミリタイアで選択肢を増やす

ただし、ここまではあくまで試算です。心配してはキリがないですが、想定外のことが起こらないとも限りません。そこで、どういう状況にも対応ができるよう、マルチーズさんに提案したいのがフルリタイアではなくセミリタイアです。
 
多くの収入を得る必要はありません。心身に負担がかからず、自分の時間も十分持てる程度の働き方で構わないのです。パート、アルバイトで月5万円得られれば、年間60万円。65歳まで10年間、働けば600万円が先の老後資金に上乗せされます。半分の5年間でも300万円。老後にはさらに資金的余裕が生まれます。
 
さらにセミリタイアには、早期退職の時期やマンション価格について選択肢の幅が生まれるというメリットもあります。
 
例えば、早期退職とマンション購入を5年後ではなく、3年後の53歳のときとします。貯蓄の上積みは900万円ですから、金融資産の総額は3900万円。先程と同様のマンションを購入すると、手持ち資金は1400万円。退職後、家賃収入とパート収入で生活費をカバーできれば、金融資産そのものは減りませんから、少なくとも65歳までパートを継続できれば、老後資金は1400万円準備できることになり、5年後にフルリタイアするよりも、逆に老後資金は増えています。
 
あるいは、購入するマンション価格をある程度引き上げることも、当然可能です。先に示した、53歳に早期退職し、家計が赤字にならない程度に収入を得るケースでは、物件価格を200万円引き上げて2700万円(諸経費込み)とすると、65歳のときに準備できる老後資金は1200万円。これでも、不安になる額ではありません。逆にマンション価格を下げることで、さらに早期退職を早めたり、老後資金を増やすこともできるわけです。
 

アドバイス3 死亡保障も医療保障もあえて確保する必要はない

最後に保険について。死亡保障はいわれるように、資金を遺す家族がいないのですから、不要です。ましてや、加入されている終身保険は、付加している特約保険料が途中で上がって、60歳以降に2万円になるとのこと。すぐに払済保険にして、その後は適当なタイミングで解約し、解約返戻金を得ればいいでしょう。加入年数から考えて、いつ解約しても支払った保険料の総額より、解約返戻金が低いことはないと思います。
 
医療保障についても、ある程度、まとまった資金がありますから、これも不要です。国民健康保険にも加入していますから、ほとんどの治療は保険の適用が受けられます。保険適用外の先進医療についても、確かに高額なものは300万円程度のコストが発生しますが、それを利用する確率は低く、仮にその治療を受けるとしてもそれを貯蓄から支払うことは家計的に不可能ではありません。

ただし、実質のコストより気持ちの部分で、何の保障もないのは不安という方もいます。そのことをいつも心配しながら生活を送るのであれば、持病もあるということですので、安心材料として共済の1だけを継続し、2を解約してはどうでしょうか。
 

相談者「マルチーズ」さんより寄せられた感想

できるだけ長く仕事をするなどして収入を得ていくことで、選択肢を増やし、より充実した人生にしていける考えさせられ、早期退職希望を改めないといけないのかもしれないと思いました。購入するマンションの築年数により、リフォーム代が必要となってくるかもしれませんし、できるだけ、今の仕事を続けるように努力していきます。貯蓄がもっと増えると心にも余裕がでて、職場での生活も視界が良くなり長く続けていけるかもしれません。保険については今のもので十分であるとのことなので安心しました。ありがとうございました。


教えてくれたのは……
深野 康彦さん
   
 

 


マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。近著に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など


取材・文/清水京武


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