アドバイス1 繰上返済はより早めを選択すべき
住宅ローンの繰上返済の時期ですが、先に結論を言えば、早い方がいいでしょう。ご自身が返済できるタイミングで、すぐに返済をするといいと思います。その理由ですが、まず、住宅ローンの繰上返済の実施について、今後のライフイベントに影響のない、余裕資金で行うということが基本条件となります。まあまさんの家計は、現時点でまとまった資金があり、毎月貯蓄もできているので、現時点でそれを十分クリアしています。であれば、軽減される支払利息が多い分、早く実施した方が効果的となります。
具体的に試算してみます。すぐに繰上返済で完済する場合、ローン残高は570万円ですから、貯蓄は1650万円から1080万円に減ります(繰上返済の手数料は考慮せず)。完済後、住宅ローンに充てていた5万円がそのまま貯蓄に回るとします。結果、毎月の貯蓄額は17万円となり、3年後には貯蓄額は1692万円まで増え、繰上返済前のそれを上回ります。
対して、2年後に同様に完済する場合。ローン残高は500万円で、このとき貯蓄は1938万円になっていますから、貯蓄は1438万円に減ります。そして、その1年後の貯蓄は1642万円。今から3年後という同じ時期を比較すると、すぐに完済した方が50万円ほど増えているのがわかります。
もうひとつの理由は、今後のマネープランで懸念されるのはご主人の健康面であるということです。悪化して、転職等で減収、もしくは一定期間、収入が途絶えるとなった場合、家計支出、とりわけ固定支出はなるべく減らしておくことが家計防衛につながります。その意味でも、住宅ローンの完済は早めに実施したいところです。
加えて言えば、そもそも当初の住宅ローンの組み方がとても上手かったと思います。借入額が大きくなく、それでいて30年返済と比較的長めに組み、毎月の返済に余裕を持たせている。結果、貯蓄がしやすい家計となり、繰上返済が十分できる貯蓄額に達した。もともと、早めに完済できる下地が、まあまさんにはあったということです。
アドバイス2 収入は7年程度の現状維持をまずは目標に
家計については、とくに見直す必要はありません。大変しっかり管理されています。貯蓄についても、すぐに住宅ローンを完済した場合は、特別児童扶養手当の対象から外れたとしても、10年後には2710万円。時期を前後して、ここから教育費、クルマの買い替え費用などが捻出されますが、それでも2000万円前後は手元に残ると想定されます。仮に60歳まで収入が維持できれば、計算上、定年時には3000万円程度の貯蓄=老後資金が準備できることになります。ただし、リスクとしては先ほども触れましたが、ご主人の体調によっては減収の可能性もあるという点。しかし、資金的には定年まででなくとも、今後10年、少なくとも7年程度、収入を現状維持すれば、そう不安に思うことはないと考えます。
アドバイス3 今後は家族の健康を最優先に
仮に7年後にご主人の収入が再雇用となった場合の年収程度(250万円前後)に下がっても、月2、3万円程度の貯蓄はできるでしょう。10年間で300万円程度にはなりますから、それでも定年時には退職金と合わせて2000万円前後の老後資金は見込めるはず。定年後、65歳までは働く(家計赤字を出さない程度の収入確保)ことが前提ですが、そうであれば、老後資金としてはさほど不安に思う金額ではありません。まあまさんの体調次第では、パートで収入を得る可能性もあるわけですから、そうなれば資金的余裕も生まれるでしょう。
そう考えれば、今後優先すべきは、一にも二にも家族の健康。収入を維持しようと、あるいは増やそうと無理をすることは禁物です。家族3人が健康で元気な暮らしを維持する。そのためには、生活の楽しみも大切。結果、多少支出が増えても構いません。まずは、焦らず日々の健康管理に努めてください。
相談者「まあま」さんから寄せられた感想
今回家計相談をさせていただき、今後の働き方など具体的に心配な点をアドバイスいただきとても安心しました。また悩んでいた住宅ローンの繰上返済は早期完済のメリットを知ることができました。「何事もなく貯金して住宅ローンを完済して」と思っていた自分のマネープランに思いがけない夫の手術などがあり、将来を心配していましたが、本当に安心することができました。今は夫も再発することなく、普通に働いてくれています。この度は貴重なアドバイスをいただき本当にありがとうございました。教えてくれたのは……
深野 康彦さん
マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。近著に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など
取材・文/清水京武
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