お金の悩みを解決!マネープランクリニック/20代のお金の悩み相談

28歳、奨学金840万円を返済中だが一人暮らしを始めたい(2ページ目)

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、奨学金840万円を返済中ながら、一人暮らしを始めたいという28歳の会社員女性。実際どのように返済するのが有効か、また返済をして一人暮らしを続けられるのか、ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

あるじゃん 編集部

執筆者:あるじゃん 編集部

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アドバイス1 完済できる部分から返済することがポイント

まず奨学金の繰上返済についてですが、ちわさんが言われるように、有利子から返済していく方が支払利息の軽減という点で、返済効果は高いことになります。ただし、奨学金の繰上返済は住宅ローンとは違い、一般には期間短縮型のみなので、完済しなければ毎月の返済額は変わりません。
 
ちわさんの場合、現在の家計収支では十分に貯蓄体質ですが、近いうちに一人暮らしを希望されている。そうなると、大きく貯蓄ペースが落ちるため、毎月の奨学金返済が今以上に家計負担となります。一方、現時点でまとまった貯蓄はありますが、結婚などライフイベントも控えていることを考慮すれば、手元にある程度資金は残しておきたい。

そう考えると、借りている奨学金が3種類ありますから、そのうち、もっとも完済がしやすいものから繰上返済をしていく方が合理的だと思います。
 

アドバイス2 一人暮らしを始める時期に応じた返済を

繰上返済のタイミングですが、手持ち資金300万円の維持をひとつの目安にしてはどうでしょう。つまり、それを超える分は繰上返済に回すという考え方です。その間、貯蓄は増えませんが、絶えずまとまった資金は確保されていることになります。

現在のそれぞれの奨学金の残高ですが、高校の分が70万円、大学の無利子が200万円、有利子が480万円くらいでしょうか。したがって、高校での奨学金は今すぐ完済できます。それでもまだ手持資金は400万円残ります。ひとつ完済したという意味で、精神的な重荷も軽減されるのではないでしょうか。
 
その後は、一人暮らしを始める時期によって返済プランも変わってきます。一人暮らしが来年であれば、1年間は今の貯蓄ペースが維持できます。高校の奨学金返済がなくなりましたから、それも貯蓄に回し、毎月の貯蓄額は7万8000円に。これにボーナスから60万円の貯蓄が可能とすれば、それも加算して年間154万円。1年後には貯蓄が554万円になりますので、その時点で、大学の無利子の分を完済できます。これで、奨学金返済は月2万円強と今の半分になり、一人暮らしでの家計のやりくりが多少なりともラクになるはずです。
 
あるいは、一人暮らしの時期が2年以上先であれば、2年間で300万円貯蓄を上積みできますから、先に有利子分を返済する方が、繰上返済としては効果的と言えるでしょう。
 
では、もしも、すぐにでも一人暮らし始めるとしたらどうでしょう。家計収支はほぼトントンとすれば、貯蓄はボーナスから。それが年間60万円は可能とすると、2年間で120万円。この時点で大学の無利子の分を完済する。あるいは3年後180万円にして、そのときは有利子の残高も300万円程度に減っていますので、そちらを完済してもいいと思います。その際、軽減できる支払利息は20万円前後となるはずです。
 

アドバイス3 仕送りは「65歳まで」と明確に線引きする

​​奨学金の繰上返済以外に、気になる部分をいくつか。
まず、ご両親への仕送りですが、「父の年金受給が始まり、生活が安定すれば仕送りはしない予定」とのことですが、一方で「実家を出たとしても両親のために月5万の仕送りは続けたい」と言われている点。

お父さんが65歳になる来年、公的年金(老齢厚生年金と老齢基礎年金)の受給が始まります(ただし、年齢的にすでに特別支給の老齢厚生年金は受給しているはず)。そうなると、例えば、ちわさんがすぐに一人暮らしを始めたら、少なくとも1年は月5万円の仕送りを続けることになります。しかし、その結果、おそらく家計収支は毎月赤字となるでしょう。奨学金返済をしながら一人暮らしをする。その目標そのものが、きびしいものになってしまいます。

さらに言えば、お父さんが年金を受給しても生活が安定しないなら、65歳以降も仕送りを続けることになるのでしょうか。ちわさんのマネープランにおいては、それが望ましいとは言えません。
 
親を思う気持ちはもちろん理解できます。仕送りを実際に行うことは大変立派です。ただし、資金は有限です。その優先順位を考える際、親よりも自分が、結婚されれば自分の家族が、少なくとも資金面では優先されるべきだからです。

つまり、年金が出るまでの仕送りは月2万円程度として、自身の貯蓄ペースを上げることが、ライフプランにとっては重要ということです。
 
また、確認しづらいとのことですが、ご両親がどれだけ年金を受け取り、生活費はどのくらい必要なのか。ご兄弟と一緒に確認しておく。その上で、生活がままならない限り、親は親の資金で生活をしてもらう。つまり、「仕送りは65歳になるまで」と、その期限をしっかり線引きをしておくことが大切です。
 
仕送りの他に気になるのが、ちわさんの健康面です。健康を害しては、奨学金返済も含めた、今後のマネープランが大きく崩れます。健康管理はしっかりと行ってください。とくに精神面。頑張ることも大切ですが、返済にしろ、貯蓄にしろ、継続することがポイントです。そのためには定期的な息抜き、生活のメリハリは欠かせません。節約一辺倒ではなく、ときにそのために支出をする。それもまた有意義なお金の使い方なのです。
 
最後に、保険料が月400円の保険の中身が不明ですが、今後一人暮らしを始めるなら、最小限の医療保障は確保しておいた方がいいでしょう。入院日額5000円、終身保障終身払いのシンプルな内容で構いません。共済でも単体の医療保険でもいいと思います。
 

相談者「ちわ」さんから寄せられた感想

今まで有利子分の月々の返済額ばかり考えて、全て完済できるのはまだまだ先のことと悩んでいました。今回、すぐに完済できる部分、今後の状況に応じて返済する点を具体的に示していただいて、最低限の貯蓄を残しながらでも完済までの期間を短縮する希望がもてました。仕送りについても、続けるのではなく明確に区切るという考えをもつことができました。また、体調面についてもお気遣いのアドバイスをいただき感謝申し上げます。アドバイスを生かし、メリハリのある生活を心がけます。ありがとうございました。


 教えてくれたのは……
深野 康彦さん
   
 

 


マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。近著に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など


取材・文/清水京武

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