アドバイス1 大事なのは現状の貯蓄ペースを継続すること
保険と老後資金について、自身の適正を知りたいというご相談ですが、ともに大きな問題はないと思います。まず保険ですが、掛け方に無駄がありません。死亡保障はありませんが、まとまった資金を遺す家族はまだいませんので、現時点では不要です。医療保障については、家計が赤字であれば、医療保険とがん保険のどちらかに絞ってもいいでしょう。ただ、家計は健全ですし、保険料自体も決して高くはありません。また、現状、マリアンヌさんがマネープラン的にもっとも回避したいのは、働けず減収になることです。したがって、病気やケガによるコスト増をケアする意味でも、この2本は加入のままでいいですし、これ以上、保障を加える必要も今のところないと考えます。
アドバイス2 大事なのは現状の貯蓄ペースを継続すること
貯蓄については、現在、毎月4万5000円、ボーナス40万円を財形貯蓄で積み立てをし、他に投資信託を月8000円購入されています。ともに19年間継続すれば、合わせて、およそ1970万円(投資商品の評価額は元本のままとする)。今ある貯蓄と投資商品と合わせて2030万円。退職金は勤務23年間で、月6000円の積立をそのまま受け取るとすれば165万円となりますから、計2200万円。これが想定される、マリアンヌさんの老後資金となります。老後資金が足りるかどうかは、老後の生活費が公的年金だけではどれだけ不足するのかが、その判断材料になりますが、まだ不確定要素が多く何とも言えません。ただ、不足額が月額3万円程度なら、100歳まで生きても1260万円(65歳から35年間)。これを老後資金から差し引いても、1000万円近く手元に残ります。単身者の予備費としては十分でしょう。
したがって、貯蓄ペースも今のままで構いません。大事なのは、このペースを維持していくということ。それができれば、老後資金も十分用意ができます。
アドバイス3 投資をするならiDeCoを利用してもいい
今後、マネープランでポイントとなりそうなのが、定年から公的年金の支給が始まる65歳までの5年間。再雇用で勤務できるとのことですが、収入はどのくらいになるのか。仮に、生活費に対して月5万~6万円の赤字になると、老後資金から300万~360万円を別途取り崩すことになります。それでも、過度に心配する必要はありません。例えば、65歳以降も働くことで、老後資金を取り崩すペースを遅くすることができます。また、マリアンヌさん自身が、上手に家計管理をされているので、減収となれば、それなりに家計をやりくりし、赤字幅も小さくできるはず。それよりも、将来を必要以上に不安視し、無用なストレスを溜め込むことの方が避けるべきことです。
投資は続けていいと思います。ただ、老後資金づくりと割り切るなら、iDeCo(個人型確定拠出年金)を利用してはどうでしょう。メリットは掛金が全額所得控除になるという点。月8000円の掛金で、マリアンヌさんの収入であれば所得税と住民税合わせて、1万7000円前後が還付されるはず。掛金が増えれば、還付金の額も当然アップします。加えて、運用による配当、売却益が非課税という利点もあります。
ただし、利用にあたって、口座管理コスト等が年間数千円発生します(コスト額は金融機関によって異なります)。また、選択できる投資商品は投資信託となりますが(他に定期預金のような元本保証商品もある)、各金融機関が用意している商品に限られます。積み立てた資産を引き出すのは原則60歳以降となる点も注意が必要です。ともあれ、iDeCoの比較サイトでいくつかの金融機関を比較検討してみるといいでしょう。
相談者「マリアンヌ」さんから寄せられた感想
ありがとうございました。これまでまったく貯金というものをしてきておらず、ここにきて、人に話を聞いたりしてとても心配していましたが、今回のお話を伺い安心しました。また、iDeCoは資料を見たことはあっても内容がよく分からなかったので、普通に投資信託していましたが、これを機にiDeCoを検討してみようと思います。今後も貯蓄額をキープできるようにしたいと思います。この度はありがとうございました。教えてくれたのは……
深野 康彦さん
マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。近著に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など
取材・文/清水京武
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