お金の悩みを解決!マネープランクリニック/50代以上の家庭のお金悩み相談

夫57歳、貯金は330万円。これから住宅ローンを組んで大丈夫?(2ページ目)

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、自宅の買い替えを検討中という、パートで働く49歳の主婦の方。ただし、夫は57歳。これから住宅ローンを組んで家計は大丈夫か、教育資金や老後資金は用意できるか。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

あるじゃん 編集部

執筆者:あるじゃん 編集部

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アドバイス1 年間で家計を見直し、貯蓄の目標額を決める

まず、貯蓄が増えないということについて、確かにご主人の二重生活の解消はその解決策として有効でしょう。ただ、その前に明確な家計収支を把握してほしいと思います。
 
いただいたデータによりますと、毎月の収支は約21万円の黒字。一方、貯蓄ペースはご主人の小規模企業共済を含めて月9万円ですから、まだ10万円が余ります。ただし、リーさん世帯はボーナス支給がないため、年間での支出をここから捻出することになります。具体的には、クルマの維持費、税金(夫の所得税、住民税、固定資産税)、その他の不定期支出とのこと。問題は、これらを10万円×12カ月=120万円から捻出して、どの程度余る、つまり貯蓄に回るのかということ。
 
あくまで概算ですが、健康保険料から類推して、所得税と住民税で年間25万~30万円でしょうか。さらに固定資産税が10万円前後、クルマの維持費(車検、保険、税金など)は仮に2台保有(ともに普通車)で年間25万~30万円としても、トータルで多くて70万円。したがって、毎月の9万円以外、貯蓄が増えていないなら、残りの50万円超はすべて支出していることになります。旅行費用、交際費、家電などの大きな買い物など、支出先はいろいろ考えられますが、それが使途不明金なら、問題です。家計簿をつけるなどして、明らかにしてください。
 
ともあれ、世帯収入から考えて、月9万円以上の貯蓄は可能だと思います。貯蓄ペースを上げたいなら、まずは貯蓄目標額を設定して、残りでやりくりする家計習慣が必要です。
 

アドバイス2 二重生活解消による貯蓄ペースアップが重要

次に住宅について。実際の見積もりを拝見すると、私も現在のお住まいは手放して、新たに住宅を購入する方が賢明だと思います。
 
検討されている中古の一戸建てですが、諸費用200万円は貯蓄から捻出して、残りは物件価格の1800万円。これは全額借り入れとなります。ただし、購入を前提に、今の住宅を売却すると800万~900万円とのことですが、もし本当にその金額で売却できれば、借り入れは1000万円。実際のローンを15年返済、全期間固定、金利1.5%とすると、毎月の返済額は6万2000円。だが、完済はご主人が72歳のとき。本来なら勧められないプランですが、ご主人が自営業であることや新たな家計負担を考慮して、このあたりが妥当と考えました。
 
ここで大事になってくるのは、住宅購入後、二重生活で発生していた経費がどの程度減って、それが確実に貯蓄に回っているかということ。先に触れた、年間120万円からの貯蓄も含めて、具体的に目標額を決めることです。例えば、家計を見直し、ローンとして増えた分=月6万2000円と同額を新たに貯蓄に回すことができれば、ローンを支払いながら現在の月9万円の貯蓄ペースは保つことができるわけです。
 
では、教育資金はどうでしょうか。貯蓄ペースが今とかわらなければ年間108万円、お子さんが高校卒業となる9年後で972万円。諸経費を支払った残りの貯蓄130万円を加算して約1100万円(小規模企業共済の積立金も含む)が手持ち資金となります。さらに、学資保険代わりに加入されているリーさん名義の終身保険について、9年後の解約返戻金が不明ですが、仮に300万円とすると、計1400万円。大学費用として400万円(私立文系)を捻出しても、1000万円が残る計算になります。ただし、中学、高校で私立に入学した場合や、進学塾などの学校外費用も考慮すると、さらに教育費がかかる可能性があることは、頭に入れておいてください。
 

アドバイス3 ご主人には「生涯現役」という意識を

ここまでの試算には大前提があります。それはご夫婦とも、継続的に働き、かつ一定の収入を維持すること。住宅ローンを考えれば、ご主人には「生涯現役」という意識が必要です。65歳以降は公的年金が支給されますが、ご主人が国民年金であることでも、それは言えることです。そのためにも、家計管理と同様に家族の健康管理もしっかり行ってください。
 
最後に保険について。住宅購入後、手持ち資金がグッと少なくなること。さらには、教育資金が今後どれだけ必要か、まだ不確定な部分があること。そういったことに備えるには、やはりキャッシュを増やすことが重要なのです。

その意味で、固定支出となる保険料コストはできるだけ抑えたい。現状では、ご主人加入の終身保険とリーさん加入の低解約型終身保険は払済保険でいいと思います。もちろん、浮いた保険料は貯蓄にまわしましょう。
 

相談者「リー」さんから寄せられた感想

この度は家計診断をしていただきありがとうございました。アドバイスを拝見し、再度、家計の収支をきちんと夫婦で見直そうと思いました。そして、家族が楽しく暮らせるよう健康第一で生涯現役を目指し頑張ってみます。本当に今回、アドバイスをいただきました事、誠にありがとうございました。


教えてくれたのは……
深野 康彦さん
 
 

 


マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。近著に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など


取材・文/清水京武


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