原作がおっさんの声だから。

名探偵ピカチュウの図

何かおでこにシワがあったりして、見た目も渋さを漂わせるピカチュウ

ハリウッドで実写映画化され、2019年5月に公開予定の『名探偵ピカチュウ』の予告編が、2018年11月12日にYouTubeで公開されました。公開されるとたった2日で2,000万もの再生回数を記録して、全世界的に大変な話題となります。実写化ということで、ポケモンたちの描かれ方にも注目が集まる中、多くの人をにぎわせたのは声でした。ピカチュウと言えば、アニメでおなじみの「ピカチュウ!」という鳴き声をイメージする人が多いかと思いますが、映画の中のピカチュウは、なんとおっさんの声だったのです。しかも「ピカチュウ!」ではなく普通にしゃべります。

声の主はライアン・レイノルズ氏。カナダ出身の俳優で、マーベル・コミックから映画化された「デッド・プール」にて、主人公の傭兵デッド・プールを演じていることでも知られています。よく知らない人に簡単に言えば、声の渋いおじさんがピカチュウを演じているのです。

多くの人が持つイメージとあまりに違う声に、どうしてこんな声なんだ、という反応がインターネットなどに挙がります。ハリウッドが原作を無視して、かわいいはずのピカチュウの声を勝手に改変しておじさんの声にしてしまったんじゃないか、と考えると、なんだか映画のデキも怪しそうに思えてきますが、そういうわけではありません。

答えは冒頭申し上げた通りで、原作がおっさんの声だから。え、原作はこんな声じゃないよ、と思った方、あなたが思っている原作はどのポケットモンスターでしょうか? 実は、実写版名探偵ピカチュウは、そのタイトル通り、『名探偵ピカチュウ』というニンテンドー3DSで発売されたポケットモンスターシリーズのスピンオフ作品を原作としています。そしてそこに登場するピカチュウは、おっさん声なのです。

名探偵ピカチュウの声が渋いおっさんである説明は、原作がおっさんの声だから、で終わりなんですが、これではあんまりなので、ピカチュウの声についての話をもう少ししてみたいと思います。
 

そもそもピカチュウの声はかわいくはなかった

ポケモンの図

ゲームの方のポケモン達は、基本的には機械音の声なのです

多くの人が頭に思い浮かべるかわいい「ピカチュウ!」という声の主は、大谷育江さんという声優の方です。ピカチュウの他にはアニメ版ワンピースのトニートニー・チョッパー役などで有名な可愛らしい声の方です。しかし、もともとゲームのポケモンのピカチュウの声は大谷さんではありません。そもそも、初代である『ポケットモンスター赤・緑』はゲームボーイのゲームであり、生の声が表現できるようなハードではありません。ですから、元となるゲームのピカチュウの声というのは、テキストでは形容しがたい機械音でした。

もっと言うと、実は未だに基本的には、ポケモンの鳴き声というのはゲームでは機械音なんです。2018年11月16日に発売されたニンテンドースイッチ用最新作の『ポケットモンスター Let's Go! ピカチュウ・イーブイ(以下ピカブイ)』でも、ポケモン達の声というのは、基本的には機械音で表現されています。

これが、テレビ東京でアニメ化されるとなった時に、大谷育江さんが声優となったわけです。アニメ版におけるポケモン達の鳴き声は、機械音から自分たちの名前に変更されました。当時ガイドは大学生でしたが、大谷さんの声のかわいらしさに大変ときめきまして、これは人気が出るぞと感じたことをよく覚えています。
 

サトシのピカチュウと、サトシのじゃないピカチュウ

ポケモンの図

ピカチュウにも色々いるのです

さて、じゃあ、アニメのピカチュウは大谷育江さんかと言えば、実はこれがそう簡単でもなかったりします。大谷育江さんの可愛らしい声をイメージした時のピカチュウというのは、おそらくはサトシのピカチュウでしょう。そう、ピカチュウというのは個体の名前ではなく、ピカチュウと言うポケモンの種類の名前です。犬で言えば、タロウとか、シロとかではなくて、シベリアンハスキーとか、柴犬という範囲の名前です。

例えば、現在放送しているアニメの『ポケットモンスター サン&ムーン』に登場する、ピカチュウのたにというピカチュウがたくさん住んでいる谷にいるアイドル的な存在のピカチュウ、クリンちゃんの声はファッションモデルの藤田ニコルさんが担当しています。にこるんですね、にこるん。日曜朝8時にテレビ東京系列で放送しているポケモンバラエティの『ポケモンの家あつまる?』を観ているポケモンファンにはにこるんは大のポケモン好きとしておなじみです。

名探偵ピカチュウに話を戻すと、あのおっさん声のピカチュウは、サトシのピカチュウではないわけで、声が違うのは当然と言えば当然なのです。あんなに渋い声のピカチュウは、珍しいことではありますが、ピカチュウとしてより特別なのは、声質よりは、主人公の少年と普通に話ができてしまっていることの方かもしれません。
 

大谷さんのピカチュウ達

ピカブイの図

最新作ではイーブイもかわいくブイブイ言ってくれます(イラスト 橋本モチ)

さて、大谷育江さんの声で思い浮かべているのはサトシのピカチュウでしょう、という言い方をしましたが、大谷さん声はサトシのピカチュウにしか使われていないかというと、実はそんなこともありません。大谷さんのピカチュウの声はスタンダードなピカチュウの声として定着してしまったためか、かつては機械音だったゲームの方も、他のポケモン達は相変わらず機械音が使われているにもかかわらず、今ではピカチュウは特別扱いで大谷さんの「ピカチュウ!」と可愛らしくしゃべったりします。そう、ポケモンの声は未だに基本的には機械音だと言いましたが、この基本的にの例外がピカチュウです。

ポケモンGOでポケモンに触れた人は非常に多いかと思うんですが、ポケモンGOでも他のポケモンは何かピギャーとした音を発するんですが、ピカチュウは「ピカチュウ!」とかわいい声で鳴いてくれます。余談ですが、最新作のピカブイではピカチュウのほかに、イーブイも機械音ではなく「ブイブイ!」とかわいい声を聴かせてくれます。

そういう意味では、ピカチュウのスタンダードが大谷さんの声であると感じている人は少なくないでしょうし、名探偵ピカチュウの渋いおじさん声に驚くことは無理もないことでしょう。しかし、これまで説明してきた通り、ピカチュウにも色々いるわけで、大谷さんの声のピカチュウもいれば、にこるんの声のピカチュウもいて、名探偵ピカチュウのピカチュウは渋いおじさんの声なのです。ちなみに、ゲーム版の名探偵ピカチュウで日本語のキャストを担当している方は、大平透さんという方で『鋼の錬金術師』のロイ・マスタングというとピンと来る方もいらっしゃるかもしれません。

何か、ハリウッドが原作を理解せずにかわいい声のはずのピカチュウの声をおじさんの声にしてしまった! と不安に思っていた方がいたとしたら、それは誤解であることがご理解いただけたのではないでしょうか。これを機会に興味を持った方がいらっしゃいましたら、2019年公開の映画はもちろんのこと、ゲームの方を遊んでみるのも良いかもしれません。

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