お金の悩みを解決!マネープランクリニック/マイホーム購入・住宅ローンで悩むファミリー世帯

38歳貯蓄なし、毎月赤字、それでも2800万円の住宅購入(2ページ目)

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、貯蓄もなく、毎月赤字でありながら、2800万円の住宅を購入することにした38歳の主婦の方。契約後、家計を立て直すことができるかどうか……。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

あるじゃん 編集部

執筆者:あるじゃん 編集部

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アドバイス1 住宅購入は断念することを勧めます

先に結論から申し上げます。「今後、どう生活していけば良いのでしょうか?」というご相談ですが、家計を立て直すにためには、現在進めているマイホーム購入を断念することが、最優先にすべきことだと考えます。もっと言えば、現状で住宅を購入をすると自己破産の可能性すらあります。なぜそう考えるのか、まずは試算してみます。
 
具体的な住宅ローンの内容ですが、借入額2800万円、35年返済はほぼ確定とのこと。問題の金利ですが、全期間固定で1.5%とすると、毎月の返済額は約8万6000円。家賃をほぼ3万円上回ります。また、持ち家になることで、毎年発生する固定資産税を加えれば、月4万円近いアップ額と考えていいでしょう。
 
では、そうなった場合、家計はどうなるでしょうか。

現在の収支ですが、データ上は毎月1万2000円の赤字。厳密には学資保険の保険料が含まれているので、毎月の収支はほぼトントン。しかし一方で、毎月1万~3万円、生活費の不足分をなっちさんのお母さんに借りているわけですから、実際はその額がそのまま赤字部分となります。ボーナスからも、データを見る限り貯蓄には回っていないはず。手持ちの資金もほぼない中、このまま住宅を購入すれば、毎月5万~7万円赤字が増え続けることになります。
 
次に、この赤字分をどのように補てんすればいいでしょうか。カードローンやキャッシングは絶対に利用してはいけません。住宅ローンという大きな負債を抱える以上、新たな借り入れは、家計破綻を早めます。少なくとも現状では、親御さん頼みとなるでしょう。しかし、今後も借り続けることが可能なほど、親御さんに十分な金融資産がないのなら、家を失うか、最悪親子で共倒れになってしまう可能性すら否定できません。さらに言えば、住宅購入時に発生する諸費用(各種手数料、税金、その他引っ越し等の経費)は、一般に100万円前後にはなります。これも結局は親御さんから借りることになるはずです。
 

アドバイス2 場合によっては親子共倒れのリスクも

先の試算は、金利そのものは高めの全期間固定で行ったものです。では、変動もしくは2年固定といったもっとも低い金利で試算したらどうでしょう。ここ最近、金利が上昇傾向にありますが、一応、低めの0.5%で計算すると、毎月の返済額は約7万3000円。先の試算より1万円下がりますが、この程度であれば状況はさして変わりません。
 
これにボーナス払いを併用すれば、さらに毎月の返済額は下がります。例えば、ボーナス月に15万6000円加算で、毎月の返済額は4万7000円。固定資産税(月割り分)を足しても、金額は今の家賃を超えません。しかし、現状ではボーナスからそれだけ(年間30万円ほど)負担する余裕はないはずです。
 
加えて、そもそもなぜ変動金利で試算しないかと言えば、途中で金利が上昇すれば、当然ローンの返済額も増えます。当初から変動などの低い金利で、家計的にギリギリで返済計画を立ててしまうと、その時点で返済が困難になります。そして今後、金利が上がらないという保証はどこにもありません。
 
もうひとつ。金利が変動でも固定でも、返済期間は35年であれば、途中繰上返済をしない限り、完済はご主人73歳のとき。定年後、13年間もまだ支払い続けなくてはなりません。もちろん、35年間、親御さんの援助を受けることは不可能だと思われます。
 
手打ち金と契約金合わせて21万円をすでに支払済とのこと。住宅購入をキャンセルしても、一般にそれは戻らないお金です。そのことをとっても「もったいない」と感じ、住宅購入を断念することができないかもしれません。もちろん、最終的な判断はご本人がするわけですが、私であれば、その21万円をあきらめることで大事には至らなかったと考えます。
 

アドバイス3 家計改善後でも住宅購入は遅くない

では、今後はどうすべきか。賃貸住宅に住み続け、とにかく家計の黒字を目指す。少なくとも、児童手当分(毎月2万5000円)は確実に貯めたい。そして、親御さんからの借り入れをなるべく早く返済すべきです。
 
そのためには、家計の見直しと収入アップしかありません。見直しについては、さほどその余地はないのですが、不便でも通信費を削るか、クルマを可能なら1台に減らすといった方法しかないでしょう。少なくとも食費を削るようなことはすべきではありません。
 
そうなると、有効な手段は収入アップとなりますが、現在なっちさんがされている深夜のアルバイトは、空いている時間でかつ時給は高めだから選んだと想像できます。しかし、身体が心配です。とにかく働かなくては、という思いは十分理解できます。それでも、病気にでもなったらその苦労も無駄になってしまうのです。
 
働くなら日中と決めてください。家事、育児はご主人にもさらに協力してもらい、働く時間を何とか確保する。理想のパート収入は月7万~8万円。順次、お子さんが小学校に入学すれば、教育費はぐっと下がります。そうなれば、なっちさんはフルタイム勤務を目指すこともできるはず。
児童手当分とは別に、毎月5万円、ボーナスから半分貯蓄できれば、年間85万円。5年間で425万円。頭金を300万円(うち100万円は諸費用)入れて、返済期間20年、金利1.5%で1500万円借り入れると、返済は毎月7万2000円ほど。今と違い、親御さんやキャッシング等の返済も終わり、世帯収入もアップしていれば、十分返済可能です。このプランだと購入可能な物件価格は1700万円程度ですが、エリアによっては中古でも築年数の浅い物件に手が届くと考えます。
 
「兄弟もマイホームを買ったから」「家賃を払い続けるのはもったいない」といった発想ではなく、実際に購入したときのお金の流れを理解した上で決断してほしいと思います。そして、ご主人やご実家ともよく相談した上で、どうすべきかを決めてください。
 

相談者「なっち」さんより寄せられた感想

とても参考になるご回答ありがとうございます。 子どもが小学生になったら日中のパートはやりたいと思っております。 少しでも貯蓄できるよう、頑張ります。

教えてくれたのは……
深野 康彦さん
 
 

 


マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。近著に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など

取材・文/清水京武


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