犬がブルブル震える理由とは

犬が震えることはよくありますよね。その理由・原因には生理的なものや精神的なもの、病気に関連するものなどいくつかあります。明らかに「これ」が原因であると限定するのはなかなか難しいこともありますが、それぞれの可能性とその対処法について考えてみましょう。

<目次>
原因1.寒さ
原因2.痛みや病気
原因3.恐怖や不安、緊張などストレス
原因4.高齢
 

原因1.犬が震えるのは寒いから?

子犬(寒い)

あまりに過保護過ぎると、寒さから体を守る役目もある被毛の伸びが悪くなることもあるのでご注意を:(c)daj/amanaimages

「犬はよろこび にわ かけまわり……」、ご存知のとおり、童謡『雪』の中に出てくる歌詞です。この歌のように犬は寒さに強いというイメージがありますが、中には寒さが苦手なコもいます。

ベルクマンの法則やアレンの法則といった生物学的な論理(*1)でいけば、より大型で耳も小さめ、口吻もやや詰まったタイプの犬(例:サモエド)のほうが寒さに強く、より小型で耳も大きめ、口吻も長めの犬(例:バセンジー)のほうが寒さに弱いということになります。しかし、犬の場合、多くが人間によってつくり上げられた犬種なので、100%それがあてはまるというわけでもありません。

犬のような動物では、寒い時には立毛筋が収縮することによって毛が逆立ち、被毛の中に空気の層をつくることで体温を外に逃しにくくしているので、ダブルコート(オーバーコート<上毛>とアンダーコート<下毛>からなる二重構造)で被毛が密な犬のほうがやはり有利であり、シングルコート(オーバーコートの一重構造)や短毛の犬では不利になるでしょう。

加えて、体脂肪が少ない犬も寒さは苦手とされます。
 
また、体温調節がまだしづらい子犬や、体内の熱をつくり出す基礎代謝が低下するシニア犬も寒さには弱いと言えます。
 
寒さから震えている場合の対処法
寒さから震えが出ていると考えられる場合、震えること自体で体内の熱をつくり出してもいるわけですが、それだけではやはり足りません。毛布を敷くなどして寝場所を温かくしてあげる、冷たい空気は下にたまりやすいので犬の居場所が冷え過ぎていないかチェックしてみる、場合によっては犬用の洋服を着せるというのもいいでしょう。ただし、洋服の材質によっては稀にアレルギーを起こすこともある他、着せっぱなしであると毛玉ができる、毛がすれる、それによって皮膚炎を起こす、毛伸びが悪くなるということもあるので、散歩の時だけ着せるなど適度な範囲で着せることをおすすめします。

その他、食事が手作り食であるならば、体を温める作用のある根野菜を使用するのもいいでしょう。
 

原因2.犬が震えるのは痛みや病気があるから?

ゴールデン(トイレを我慢)

痛みや病気にはなるべく早く気づいてあげたい:(c)AKIRA MATOBA/a.collectionRF/amanaimages

犬の体が震える時、体のどこかに痛みや苦しさがあることが原因になっていることもあります。
 
これは単純な例ですが、ある犬がずっとぷるぷる震えており、飼い主さんが心配していました。その日のお腹の調子はどうだったか聞いてみると、「そういえば、今朝のウンチは少し緩かった」という返事。その犬は外でしかトイレをせず、試しに外に出してみると下痢便が出て、すっきりした後は震えも止まりました。
 
また、痛みは何らかの病気から生じることもありますし、低血糖症やてんかんといった病気、中毒などによって震えが出ることもあります。
 
低血糖症は食事の不足や気温の低下などにより、特に子犬がなりやすいとされますが、成犬やシニア犬でも肝機能の低下や脾臓の腫瘍などに関連して発症することも。

痛みや病気から震えている場合の対処法
子犬では、体のつくりがまだ完全にはでき上がっておらず、糖を蓄えておく機能も不十分なため、食事の時間が空き過ぎないように配慮してあげることは大切です。万一、低血糖症らしき様子が見られた時には、応急処置として砂糖水を舐めさせ、暖かくしてあげるのがよいと言われますが、状況によっては命に関わることもあるので、早めに動物病院で診てもらうのがいいでしょう。
 
てんかんの場合は、それまで症状らしいものが出ていなくとも、台風の前に初めてのてんかん発作が出るケースが意外に多いと救急専門の獣医師さんからお聞きしたことがあります。場合によっては気候的に注意したいこともあるということですね。
 
そして中毒に関しては、誤飲したものを吐かせるために塩を飲ませるという方法が以前からあちらこちらで見受けられますが、それはやめたほうがよいと、これも救急専門の獣医師さんに教えていただきました。塩の刺激によって吐かなかった場合、電解質の乱れが生じ、高ナトリウム血症となり、脱水が起きやすくなってしまうそうです。また、うまく吐いた場合であっても電解質の乱れは生じる可能性がある他、脱水を起こしているならば、それが進むほどにぐったりしたり、神経異常が出たりする可能性もあるそうなので塩の使用にはご注意を。何より、中毒と思われる時には病院に急ぐことが望まれます。
 
いずれにしても、震えが気になる時は、どこかケガをしていないか、触ると嫌がるようなところはないか、体に不調はないかチェックしてみることも必要でしょう。
 

原因3.犬が震えるのは恐怖や不安、緊張などストレスのせい?

チワワ(ストレス)

抱っこが嫌いな犬にとっては、抱っこされることがストレスになって震えることもあるかもしれない:(c)daj/amanaimages

人は何かが怖い時、不安な時、緊張した時に震えることがありますが、犬も同じように震えることがあります。
 
ここでも出てくるのが立毛筋。恐怖や不安、緊張というのはすなわちストレスであり、それを感じると交感神経が働き出すことによって血管や立毛筋が収縮します。立毛筋が収縮すると犬のような動物では毛が逆立ちますが、人では全身に毛がないので、鳥肌が立つような状態になります。
 
この時、人では体温が下がらずともゾクッとした寒気を感じるのはみなさんも経験がおありでしょう。また、交感神経が働き続けると血管が収縮していることによって血流が悪くなり、冷えを感じるようにもなると言います。犬も同様に血管が収縮することでゾクッとした寒気を感じるのかはわかりませんが、強い恐怖や緊張などを感じた時に震えることがあるのは確かです。
 
ちなみに、京都大学が行ったある実験によると、強い精神的ストレスを受け続けたラットは体温が平熱より2度上がったそうで、強いストレス環境下で体温が上がるということは、闘うにしろ、逃げるにしろ、筋肉や神経など体の組織が最大限に機能できるよう生存をかけた反応と考えられると研究者が述べているのはたいへん興味深いと思います(*2)。
 
震えることによって体内の熱を産生できるので、強いストレス時に犬が震えるのは、「この状況、なんとかしなきゃ!」と思っているのかもしれませんね。
 
ストレスから震えている場合の対処法
参考までに、行動治療専門の獣医師さんによると、犬にストレスサイン(例:あくびをする、鼻先をなめる、パンティングなど)が見られる時には、そのストレスからなんとか逃げよう、自分を落ち着かせようと「ストレス対処(ストレスコーピング)」をしている状況であり、個体によってはこれがストレス解消法になっている場合もあるとか。つまり、犬自身がなんとかその状況を乗り切ろうとしているので、ストレスサインがすぐに消える、頻繁には見られないというような軽度の場合は、様子を見守ってあげるのがよいそうです。
 
ただし、ストレスサインがなかなか消えない、強くなっていく、頻繁に起こるという時にはストレスの原因と思われるものを除去する、弱い刺激から徐々に慣らすトレーニングをする、状況によっては行動治療の専門家に相談するなどしたほうがいいでしょう。
 

原因4.犬が震えるのは高齢になったから?

シニア犬(高齢)

犬が高齢であり、他に原因らしきものがなければ、震えの原因は老化によるものかも

前出のように高齢になると基礎代謝が低下して寒さを感じやすくなる他、体を支える筋力も低下し、体が(特に脚)ぷるぷると震えることがあります。
 
高齢により震えている場合の対処法
立ち上がることもおぼつかなくなってくるので、滑り止めのマットを敷く、なるべく段差を少なく、かつ低くするなど生活環境をシニア仕様にしてあげるといいでしょう。
 
また、シニア犬であっても筋肉を維持することは大切なので、無理のない範囲で散歩や軽い運動をする、歩行が困難であればサポートをする、マッサージをする、筋肉をつくるための良質な蛋白質を与えるなども必要です。 
 

以上、犬が震える時には、状況や環境を考慮して判断を。



注釈
(*1)生物学的には「ベルクマンの法則」と呼ばれるものがあり、恒温動物では近縁の種の間、また同じ種の間であっても、寒冷地域に生息する動物ほど体重が重く、大きくなり、温暖地域に生息する動物では軽く、小さくなる傾向にあると言われています。たとえば、ホッキョクグマよりも、もっと温かい地域に生息するツキノワグマのほうが小さいというように。
 
恒温動物は体内で熱をつくり出し、体温を一定に保っていますが、そのためには、寒いところでは体内の熱を外に逃がさないようし、暑いところでは逆に放出することが必要になります。
 
ここで関係してくるのが体重と体表面積です。体重があって大きなほうが体表面積は小さく、その分、熱の放出が抑えられるので、寒冷地では大型であることが有利となり、逆に体が小さいと体表面積は大きくなるので熱をより放出できることから、暑い地域では小型であることが有利とされます。
 
また、近縁の種および同種の間では、寒冷地に生息する動物のほうが耳や口吻、脚、しっぽなど体の“外”に出ている部分が短い傾向にあるとする「アレンの法則」というものもあり、これも体内熱の保持や放出と関係しています。たとえば、ロシア出身のシベリアン・ハスキーとアフリカ原産のバセンジーの耳を比べてみると、確かにバセンジーのほうが大きな耳をしています。それだけ熱を放出しやすいということでしょう。

(*2)参考資料:「武者震い」はなぜ起こるの? - 生き残りをかけた戦いの場では体温が上がる/日経Gooday, 2014.12.25

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※ペットは、種類や体格(体重、サイズ、成長)などにより個体差があります。記事内容は全ての個体へ一様に当てはまるわけではありません。