世界中の子どもを夢中にさせる『YouTube』
YouTuberは現代の子どもにとって憧れの職業
こうした現象は、日本だけでみられることではありません。イギリスを拠点とする旅行会社『First Choice』が発表した小学生から高校生1000人を対象とした調査でも、「なりたい職業」の第1位にYouTuberがあげられているのです。
世界中の子どもたちの間で大人気のYouTubeとは、はたして、子どもにどんな影響を与えているのでしょうか?
YouTubeが与える子どもへのポジティブな影響
■様々な視点から興味を深められる例えば、「昆虫」について興味を持つ子がYouTubeを検索すると、世界各地の昆虫の生態から、日本の子どもが昆虫を採集する様子まで、様々な側面から「昆虫」に関わる動画に触れることができます。YouTubeはこうして子どもの興味に広がりをもたらしてくれます。
■「自分にもできるかな」と能動的な意欲を掻き立ててくれる
自分と同じような環境に暮らす等身大の人物が、身近な周りの様子を動画として発表する姿に、多くの子どもが「自分にもできるかもしれない」と思うかもしれません。そうして、テレビのように受け身的に観るだけではなく、自分も「作る側に回りたい」という、より能動的な意欲が育つこともあるでしょう。
米国では、小学生のYouTuberが動画を作成することで、年に億単位の金銭を稼いでいるという事実もあります。それらを視聴する子どもたちも、自分も同じように有名なお金持ちになれるかもしれないと、夢も膨らむかもしれません。
■想像力や表現力が磨かれる
動画を「作ってみたい」と思い、実際に演技したり動画を撮ってみることもあるかもしれません。自ら創作するならば、想像力や表現力も磨かれるでしょう。そして、お友達と共に動画制作に取り組むならば、協働力も培われます。
YouTubeが与える子どもへのネガティブな影響
■他の動画への誘導が巧みなため依存を促しやすい動画をひとつ見終わっても、次から次へと関連する動画が現れ、区切りをつけるのが難しくなります。
■悪質な内容の動画へと誘導される危険性がある
「他の動画」への誘導は、時に、子どもには適切でなく、性的であったり暴力的であったりする「悪質な内容」も含まれるかもしれません。
■安易な批判や悪意あるコメントにさらされる場合がある
動画につけられるコメントには、時に子どもには不適切な非難や罵倒なども含まれるかもしれません。
子どものYouTubeとの付き合い方
親として実行したい6つのこと
1.乳幼児のYouTube視聴はなるべく避ける
スマホなどのタッチスクリーンに触れている乳幼児は、51%というイギリスの調査もあります。(*1) そして、2歳以下にスクリーンを観せたとしても、何の学び効果もなく、かえって言葉の発達を遅らせてしまうという研究もあります。(*2 ) また、乳幼児の発達にとって最も重要な「睡眠時間」が短くなってしまうという研究もあります。(*1) 乳幼児には、なるべくYouTubeやスクリーン以外の楽しみを用意してあげましょう。
2.ピンチの時は時間と内容を決めて活用する
とはいえ、親として、公共の場でどうしても静かにしてほしい場合や、体調がすぐれず休む時間が欲しい時などには、乳幼児をはじめ子どもに動画を観せることもあるでしょう。
周りに気を遣い何度も子どもに注意したり、疲れ切った状態で必死に子どもに向き合うことでストレスをため余計にイライラするよりは、ピンチの時ほど、スマホ等のスクリーンを活用するのもいいのではないでしょうか。 ただ、子どもの年齢が低い場合ほど、長時間の視聴とならないよう、なるべくスクリーン以外の玩具や絵本などを楽しめるよう用意してあげたいです。また内容も年齢に合った適切なものを選びましょう。 また「ここは静かにする場所だから動画をみて静かにしていようね」「お母さん体調がよくないから30分だけ動画みていてくれるかな」といった説明が分かる年齢ならば、子どもにも「特別な状況」だと伝えておきましょう。
3.テレビの視聴以上に計画する
YouTube動画は、上にあげたように、区切りをつけるのが難しい仕組みになっています。ですからテレビ以上に、付き合い方について計画を立てたいものです。YouTubeの良い面と悪い面について子どもと話し合い、「1日3動画/30分まで」など一緒にルールを決めましょう。
子どもは、親が決めたことを与えられるより、自分で決めたことは、より守ろうとするものです。子ども本人が決めた時間が来たら、スマホやタブレットといった機器自体を、目の届かないところにしまってしまうのも方法です。
4.フィルターを用いたり、親のそば以外で観ないようにする
子どもが危険なサイトや動画に触れることを防ぐため、フィルターを活用しましょう。とはいえ、フィルターの網を通りぬける悪質な動画もあるかもしれません。ですから、「YouTubeの動画視聴は、親がそばにいるときのみ」と、子どもと同意しておくのも大切です。
5.インターネットに掲載するよりまずは親族や友人間で楽しむ
インターネットに載せる画像は、一生残る可能性もあり、悪用される場合もあると話し合いたいです。子どもがYouTubeを観て、「作ってみたい!」と感化されたのならば、まずは全世界に向けて放つより、家族や親戚や親しい友人向けに動画を制作して楽しむことを、勧めてあげましょう。
6.スクリーン以外の楽しみを整える
メディアとの付き合い方の基本は、「観てはダメ!」と迫るより、他に楽しみを作ることです。工作やスポーツや漫画や読書や公園遊びや家族でのお出かけなど、スクリーン以外の喜びをたくさん体験することで、スクリーンに向かう時間を、「多くある楽しみのひとつ」にしてあげましょう。
これからを生きる子どもたちは、より洗練された電子機器やYouTubeなどのサービスにますます囲まれることになるでしょう。子どもがこれからの世界へと健やかに羽ばたいていけるよう、より主体的にYouTubeなどのサービスを活用できる力とスキルを培ってあげたいですね。
参考資料:
(*1 ) Celeste H. M. Cheung, Rachael Bedford, Irati R. Saez De Urabain, Annette Karmiloff-Smith & Tim J. Smith ’Daily touchscreen use in infants and toddlers is associated with reduced sleep and delayed sleep onset
(*2 )'Handheld screen time linked with speech delays in young children' ScienceDaily, 4 May 2017.
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