小1プロブレムの原因を知り、小学校への段差を乗り越える対策を
「小1プロブレム」という言葉が幼児教育、小学校教育において大きく話題になっています。その原因や小学校や幼稚園・保育園での取り組みを知り、家庭でも幼保と小の段差が滑らかなものとなるよう子どものサポートをしてあげましょう。【INDEX】
小1プロブレムとは?
「小1プロブレム」とは、幼稚園・保育園などと小学校の間の段差によって生じる様々なトラブルです。具体的には「教師の話を聞かない」「勝手に自分の席から離れ、歩き回ってしまう」「休み時間が終わっても遊ぶのをやめず教室に戻って来ない」といった姿などが見られます。
小学校1年生は「学び方を学ぶ」学年だとされています。話の聞き方、ノートの使い方などその後の学校生活で大切になることをいくつも学びます。その時期に個人として、または集団として、混乱した状態であることはその後に影響が出る可能性があります。
小1プロブレムに対する幼稚園・保育園や小学校での試み
「小1プロブレム」に関して、小学校や幼稚園・保育園では既に改善のための取り組みが研究として行われてきました。例えば、多くの小学校では入学後の4月の期間は、いきなり勉強に入るのではなく、遊びながら学ぶタイプの学習「スタートカリキュラム」を取り入れています。また、同様に幼稚園・保育園側では、入学前に小学校での活動を意識したプログラム「アプローチカリキュラム」などが行われています。
このような試みの中には、家庭でも入学前に取り組むと効果的なものがいくつもあります。
今回は、小学校の入学を控えた子どもがいる家庭において、小学校入学における段差をできるだけ滑らかにするための具体的な取り組みを紹介したいと思います。参考にしてください。
小1プロブレム トラブルは勉強以外が原因であることが多い
書店には「小学校入学準備◯◯ドリル」などが多数並んでいます。またネット上にも小学校入学を控えた子どもを対象としたアプリなどもたくさんあります。親の立場として「せめてひらがなは書けるようにしておかなければ……」「簡単な足し算はできるようにしておかなければ……」と先取りして勉強に取り組ませることが多いでしょう。しかし、小学校の入学時における子どもが抱えている不安について調べた研究によると、実はあまり多くの子どもが小学校入学後、勉強では苦労していないということが分かります。
入学時は学習面に不安を持っている子どもも一定数います。それは、親が子どもに向かって「小学校は勉強する所だから、しっかりやるように」というような声掛けをしていることが影響しているのではと思います。
しかし、学習面の不安は6月、9月と大幅に減っていきます。
先ほど書いたように幼保との関連を意識したような「スタートカリキュラム」を実施している学校が多いです。そのため子どもは、小学校に慣れることや、新しい友達と関わることの中で、遊びと織り交ぜたアクティビティを通して学習に入ることができます。
このようなこともあり、入学時に感じていた学習面に対する不安は多くの場合、解消されます。実際には、学習面よりも、生活面での不安が大きく、中でも通学、給食などがきっかけとなり、小1プロブレムにつながることが調査により分かりました。
小1プロブレム 家庭でできる対策1:「登下校の不安を減らす」
登下校は子どもが大きく不安を抱いている要素です。小学校入学前までは、幼稚園・保育園の通園には大人が付き添っています。親などが園まで送り迎えする場合もありますし、園バスなどが自宅の近くまで来てくれる場合もあります。どちらにしても親またはそれに代わる人が通園の際に子どもと一緒にいる形です。
小学校に入学すると登下校は子どもだけで行うことが多くなります。登校は集団登校の場合と個人での登校の場合があります。これは地域の交通事情などによります。小学生が数人で並んで歩くことで、却って危険になるような道もあります。
また、下校に関してもいくつかの問題があります。1年生は他の学年と比べ、下校時間が早いことが多いです。そうなると下校する人数も少なく、大通りなどから自宅に向かう細い道に入るとどうしても一人で歩くこともでてきます。
近年、下校時の子どもをねらった犯罪などもいくつか見られています。そういったことを子ども達も敏感に感じ取り、登下校に不安を抱く子どもが多くいます。
入学前に親ができるサポートとしては、自宅から小学校までの道を実際に歩きながら危険箇所などを確認していくということです。通学路は学校で決められています。もし分からないようであれば、入学予定の小学校に問い合わせれば教えてくれるはずです。
その道をはじめは親子で危険箇所を確認しながら歩きます。慣れてきたら、子どもが一人で通学する練習をしてみましょう。もし何かあった際に助けを求める所(コンビニや110番の家など)を確認しておくことも大切です。
小1プロブレム 家庭でできる対策2:「給食での不安を減らす」
給食も小学校入学時に子どもがつまずきやすいポイントです。ただし、これは子どもがそれまで幼稚園だったのか保育園だったのかによって大きく違ってきます。多くの場合、保育園では保護者の仕事のことなどもあり、給食が実施されています。幼稚園はお弁当であることが多いです。幼児が食べるお弁当を作る際、親はどうしても好きなものを多く入れることになります。お弁当に嫌いなものを入れて、園で食事を嫌がることを避けたいという思いもあるのだと思います。
このため、幼稚園に通っていた子どもは小学校の給食でつまずくリスクが高くなります。 家庭では、子どもが小学校での給食でつまずかぬよう、入学前に少しずつ意識して多様な食べ物をチャレンジさせていくことが大切です。お弁当に子どもが苦手な食べ物を入れにくい場合は、比較的余裕がある週末の食事の際などに、多様な食べ物に触れることができるようにしていきましょう。
その際、無理をさせないことが大切になります。あまりに親が焦ってしまうと上手くいきません。時間を掛けて、ゆっくり取り組んでください。
外食を上手に利用するやり方もあります。例えば、野菜嫌いな子どもを野菜を上手に加工し、美味しく仕上げているようなレストランなどに連れていくのです。「苦手としているものを食べた」という経験は次に生きてくるはずです。
小1プロブレム 家庭でできる対策3:「時間の区切りを意識する」
小学校は、一般的には45分を1単位とした形で授業が行われていきます。また、給食の時間、休み時間などもきちんと定められています。小学校に入学した子どもが苦労することの1つに「時間で区切る」というものがあります。
幼稚園や保育園によっては「子どもの思いを大切にする」という観点から、子どもが取り組みたいものを取り組みたいだけやらせているような園もあります。それほど、極端ではなくとも、小学校と比べ、時間に関してはきっちりとはしていないことが多いです。
そういった状況を踏まえ、家庭では様々な場面で「時間の区切り」を意識させていくことがとても有効です。例えば、「ゲームの時間は15分」、「おやつの時間は10分」といったようにです。大切なのは「決めた時間できちんと終える」ということ。
約束した時間を守ることに不慣れな子どもは、違う楽しみを伝えることなどをして、やっているものを終えるということを繰り返しやっていきましょう。
子ども自身にあらかじめ取り組む時間を決めさせるというやり方は、さらに効果的です。例えば、子どもが「ゲームをしたい」と言ってきた際、「これからゲームをしても良いけれど、何分にする?」と聞き、自分で決めさせるのです。あまりに無茶な時間設定でない限り、子どもの意見を尊重して時間の設定をします。そして、その時間が終わった時には、きっちりと終わりにさせます。「自分で決めたことなのだから守りなさい」と伝えることが大事です。
こういった経験を繰り返す中で、「時間での区切り」の意識が小学校入学前の子どもに少しずつ培われていきます。それらは、小学校入学後に成果を発揮していきます。学びの土台としてその子どものより良い学びをサポートしてくれることでしょう。
以上のように、小1プロブレムに関連し、小学校入学前に保護者が家でできるサポートは大きな役目を果たします。多くの子どもがどんなことに不安を持っているのか、小学校の仕組みはどうなっているのかなどを親が知ることで、家庭でできるサポートが増えてきます。
幼保と小の段差が滑らかなものとなるよう家庭でも対策することで、スムーズな小学校生活の始まりにつながるでしょう。
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