女性の性欲・セックスは、40代、50代、60代にとっても重要なテーマ
夏といえば、女性誌でのセックス特集。私も取材される機会が多くあります。2018年の『anan』のセックス特集号の表紙には、けだるい表情でベッドに横たわる俳優が。たくさんの女性たちの夜のお供になったことが想像できます。あくまでも想像です。また2017年には『with』7月号で「結婚できるSEX」というすごいタイトルの特集が組まれ、ネットをざわつかせたりもしていました。はたしてセックスは、若者世代だけのテーマなのでしょうか。40代、50代、60代でも格好いい俳優はたくさんいます。たとえばそのなかの◯◯と一晩……なんて想像したとき、ミドルエイジの女性たちからは「アリでしょう」という声が聴こえてくると思います。
「婦人公論」がリードするミドルエイジ女性の性
また、女性誌で性に関して積極的に記事発信をしていると言えば『婦人公論』。この雑誌の存在を忘れることはできません。2007年から2014年までは性に特化した別冊『快楽白書』を年1回のペースで発行していました。今でこそ40代女性の性を取り上げる雑誌は珍しくありませんが、当時は大変衝撃的でした。婦人公論は別冊だけでなく本誌でも時折性に関する特集を打っており、例えば2010年の「大人を満たす“性”と“愛”」特集では「読者体験手記」の所には
・夫が発した「ゆるい」のひと言。女としての自信を取り戻し、性的欲求を満たしてくれた年上の彼との出会い(主婦・39歳)
・子宮が疼くような心身を満たす快感は、ヨン様と東方神起が与えてくれた(無職・56歳)
といった見出しがおどっています。さらに中村うさぎさんが「閉経した私の欲望はどこへ向かうのか」という特別寄稿をされていたりなど、アラフォーだけでなくアラフィフ、アラカン(=還暦前後)までをターゲットにしたコンテンツをバンバン発信しています。
現在の50代、60代といえば、実はバブル世代。もともと消費意欲が旺盛で、20代のころからさまざまな新しい流行やブームを作り出し、それに次々と乗っかり続けることで、マーケットを引っ張ってきた年齢層です。今でもこの世代を対象に、さまざまなトレンドが仕掛けられている中で、そのうちの1つがセックスであり性であることは間違いないでしょう。
そしてミドルエイジの性が、私も含めたバブル世代の手によって実際にどんどん変わっていることを、主宰している「恋人・夫婦仲相談所」などで身近に感じています。
日本人全体がセックスレスの風潮
ただし一方で、世代を問わず、日本人全体がセックスレスの風潮にあることは否めない事実です。2016年に出版され、日本性科学会セクシュアリティ研究会代表である荒木乳根子先生らによって書かれた『セックスレス時代の中高年「性」白書』では、関東圏在住の40~79歳の男女に行った、セックスに関する調査結果が掲載されています。それによれば、「この1年まったくセックスをしていない」という女性は40代で30%、50代で53%、60代で66%、70代で76%。また、セックスの頻度が月1回未満という「セックスレス」の割合は40代で54%、50代で75%でした。
私は常々「40代以降、女性の性は二極化する」と申し上げていますが、50代以降になると「性的なことと無縁になる人」と「性を積極的に楽しむ人」が、さらにはっきり分かれてきます。前者に関しては自ら望んでそうなる場合もありますし、望まなくてそうなる場合もあります。
性のテーマはミドルエイジからシニアへ
そして、高齢化社会を迎え、性のテーマはミドルエイジを超えシニアにも広がっています。2016年に出版された『セックス・アンド・ザ・シックスティーズ』(マリー・ド・エヌゼル・著、小原龍彦・翻訳/エクスナレッジ)という本が話題になったのはご存知でしょうか? タイトルはもちろんあの「セックス・アンド・ザ・シティ」へのオマージュ。なんとオビは私が書かせていただきました。この本ではフランスの有名女優や一般人など60代以降のシニア男女31人にインタビューして分かった、彼らの性生活をリアルに描いた本です。フランス人と言えば愛とセックスは得意中の得意というイメージもありますが、そんな彼らも、実は未知なる「シニアの性」に対して、迷ったり難しさを感じたりしていることがよくわかります。
日本の「シニアの性」にも注目が
そしてフランス以上……いえいえ、世界最速のペースで高齢化社会を迎えている日本においても、シニアの性について、じわじわと関心が高まっています。従来の「シニア=枯れてる」というイメージに対して「実は生涯セックスは現役でいられる」「性欲はなくならない」ということが、きちんと語られるようになってきました。今までタブーだった「シニアの性」の顕在化です。そして、シニア男性の性が話題になった後を追うようにして今、シニア女性の性もどんどん語られるようになってきました。私の所にも最近はシニアの方からのご相談がしばしば寄せられます。人生の先輩たちの旺盛なセックスライフに、私たちが勇気をもらえることもあります。
一例を挙げましょう。私がお話を伺った、ある80代の男性の場合です。彼は病気で入院中の奥さんが一時期自宅に戻られたときに、お風呂できれいに体を洗ってあげたそうです。そしてそのまま2人とも裸でお布団に入り、髪や身体、性器を撫で合いました。奥さんは涙を流して喜ばれ「あなたのために早く病気を治す」と、とても力強く語られたそうです。こんなお話しを伺うと「性」はまさに「生」と同じ、生きることであり元気の源だと感じませんか?
また、奥様が若い頃婦人科系の病気をして、挿入をともなうセックスができなくなった80代のご夫婦がいます。それでもお2人は「かけがえのないパートナーだから慈しみあいたい」と、スキンシップを積極的に継続しました。そして今では裸で肌と肌をくっつけて眠ることで安心感を得られると気付き、お互いの体温を感じながらウトウトするそうです。湧き上がるエロスを感じなくとも、男女の関係をきちんとわかりあえている素敵なご夫婦です。
もはや自らの性欲やセックスライフに関しては「年だから」「色ボケと言われるから」という言い訳でお茶を濁す時代ではありません。人生100年を生き生きと過ごすために、どの年代の男女も自分の性としっかり向き合う時代が来ていると私は確信しています。フランスの本『セックス・アンド・ザ・シックスティーズ』のオビに寄せた私の言葉は「セックスの定義を変えてみたら? 違うあなたが歩き出すから。」です。
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