フランスの性事情を明らかにするセンセーショナルな1冊が登場

「セックスレス大国、ニッポン」というイメージを定着させたことでも知られる、英国のコンドームメーカーDurex(デュレックス)社による世界最大規模の性意識・実態調査「グローバルセックスサーベイ」(2006年に行われた記者会見にはガイドもパネリストとして登壇しました)。

当時の調査によれば、世界でもっともセックス頻度が多いのは“ギリシャ”という結果でしたが、私は当初フランスが1位になると予測していました。その理由は「フランスはアムール(愛)の国。年を重ねたマダムがモテる国なので、セックスレスはないでしょう」というイメージがあったことに加えて、PACS制度も整備され、少子化対策も成功していたから。実際のところフランスは6位でしたが、それでも日本に比べてとてもセックスの回数が多いことには違いありません。
 
フランスの熟年世代のセックス事情が明らかに

フランスの熟年世代のセックス事情が明らかに

一方で、フランス在住のエッセイスト中島さおりさんによる「フランスにもセックスレスはある」という報告もあります。アムールの国の寝室事情の真実や如何に? ……と思っていたところに、フランスの性事情にまつわる疑問を明らかにするセンセーショナルな翻訳本が出版されました。

フランス人の心理学者マリー・ド・エヌゼル氏による『セックス・アンド・ザ・シックスティーズ』は、1年間の取材を通じてわかった、フランスの熟年世代=我が国では7割以上がセックスレスと言われている世代のセックスについての意識、実例が紹介された一冊。

この本を読んで、最近のフランス人、特に熟年世代のセックス感を知ることができたので、今回は同書の感想を通じて「フランス人を見習うと夫婦の悩みが減るぞ」というポイントを挙げてみたいと思います。
 

 

多数のフランス人の「愛とセックスの悩み・憂い・希望」。

本の中ではフランスと我が国の熟年世代の大きく異なる点として、フランスは熟年になってもなお「エロス的能力を開発する必要性がある」と語られています。実際、熟年恋愛サイトに登録してデート(withセックス)を復活させる女性も多いらしく、「エロス的友情を求める男性と、それに答えて快感を思い出す」人もいるそうです。私は以前に「40代から二極化する、妻達の性に対する本音」という記事を書きましたが、フランスにおいては40代などまだまだ甘い。60歳を過ぎてもなおエロス的能力を意識している方が少なくないのです。

一方で、日本とフランスで共通する悩みも少なくありません。たとえば“離婚”の問題。日本は3組に1組の夫婦が離婚していますが、フランスもそれは同じ。むしろパリに限ると5割が離婚しているという状況です。理由はそれぞれでしょうが、セックスレスや不倫が理由になり得ると推測できます。加えて、フランス人は嫉妬深いが冷めるとクールになるタイプが多いのも離婚原因に挙げられるでしょう。

もうひとつは“不倫”の問題。不倫ニュースが駆け巡る日本列島です。フランス人もまたそこに悩んでいます。かつてフランスには、文化的に上位身分の既婚女性に恋をする叙情詩が流行った時代がありました。夫以外の男性と恋をする風潮が“宮廷文化”と呼ばれて盛んだったのです。高貴な人たちが複数セックスにいそしむ……いつぞやの「不倫は文化」という有名人発言は、この背景から出た言葉かとも思っていました。

『セックス・アンド・ザ・シックスティーズ』の中でも「家族になると安定して欲情しない」という発言が出てきますが、私は安定性(結婚相手との愛)とは別にトキメキ(浮気相手との愛)を外で補充するのはOKと考えます。ただし、エア(擬似)恋愛でときめく、タレントおっかけでときめく、ネット上の恋愛でときめくなど策を練る必要はあるでしょう。セカンドパートナーがカンフル剤になるという人もいますが、夫婦の協定がしっかりできている人にしかおすすめしません。

フランス人同様、日本人も嫉妬はします(夫婦仲相談所で修羅場を多数見てきました)。しかし、安定とトキメキの均衡の保ち方を習得すれば離婚に発展することはないでしょう。

 

”欲求不満&倦怠”を打ち砕くために必要な別世界への冒険

夫婦間にもある程度の「謎」は必要です

夫婦間にもある程度の「謎」は必要です

フランスの劇作家エリック=エマニエル・シュミットは「愛と欲望は関係ない」と言い切りました。夫婦で一緒にいて安心を得たいという気持ちは、ときに欲望の維持を阻害します。それを予防するために必要なのは「安心をゆるがす戦略」。結婚してすべてをさらけ出す(暴く)のではなく、相手の「謎」の部分を探り当て、発見することを長く続けられれば常にパートナーに好奇心を持つことができるのです。

昔の彼や彼女とどんなセックスをしていたかなど話す必要はありません。「妻のすべてを知り尽くした」「夫のことが手に取るようにわかる」はむしろ飽きられる原因。私も自著の中で「妻は夫に秘密を持つほうがエロチックだ」と書きましたが、謎めきと、予測不可能な相手の態度が性の欲望をキープする基本です。

たとえば「今日は出かけるから、お食事は一人で食べてね」とデコルテを露出したきれいなワンピースと黒いストッキングとパンプスで謎めいた微笑みを残して玄関を出る。あるいは帰宅した時、いつもとまったく違うメイクをして夫を誘う。長年文通している人と再会すると言い残して外泊するとか……映画のシナリオを紡ぎだすかのように「謎」を創作してみてください。

とは言え、夫婦で何年も暮らしていると緊張感がなくなり、相手に性の欲望を抱かなくなるのは言わずと知れた事実。フランスでももちろん同じです。フランスではそれと同時に「そこをなんとかしようじゃないか」という前向きな精神もあります。セックスカウンセリングを受けたり、異国の性の技法を学んだり、性の講習会に参加してセックスレスを克服したカップルもいます。

“性の講習会”と聞くとなんだか怪しくも感じられますが、この本で取り上げられているカップルは講習会を通じて新しい愛の形を見つけ、以前よりも誠実で強い絆を結べたというのですから、頭ごなしに怪しいと却下するのはよくないかもしれません。また、この講習会を受けた男性は「人生で大事なのは勃起だけじゃない!」と言い切っています。

セックスという行為に執着せず、相手と触れ合うことで存在を認め合う。性をつき詰めると哲学の粋に踏み込むことができます。

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