勃起なんか関係ない! 年を重ねたからこその完熟した快感
若いころとは違ったセックスができる年代とも考えられます
さきほど紹介したように「勃起なんか関係ない」という人もいれば、強壮剤を飲まずとも身体が共鳴すると言う人もいます。若いころの粗さが消えて完成されたセックスができるのはこの年代だと語る様子からは、年を重ねてこそわかる完熟したオーガズムと快感がうかがえます。
しかし多くの男性は「やっぱり硬くなりたいさ!」と思うのが常。フランス人の医師が96歳の患者にバイアグラを処方するとき言った言葉は「オトコであることを感じる必要があります」でした。96歳にバイアグラ……フランスの勃起に対する価値観も多種多様ですね(この勃起問題に関してはまた別途記事にしようと思います)。
「うちの夫はいかせてくれない」という妻たちへ
女性も自身の性を磨く必要があります
女性の性を開花するためにいろいろ試してもいいじゃないか? と背中を押す話題も、本の中では扱われています。もちろん、女性向け風俗に行けというのではありません。オーガズムを期待せず求めすぎない、自分で感じるポイントと高まるための導線を知るのが先決――もっと自分の身体と心に性の喜びを受け入れやすくしてあげようというメッセージです。
たとえば、73歳の女性が、自分の性器を自立した人格のように扱う話。恋人とのセックスも現役な彼女は、作者のエリック氏から「美しいですね」と言われ、「愛されている女性は美しいものよ」と答えます。自身の性を磨くことでパートナーにも愛される。そして美しく年を重ねられる好循環がわかります。
ちなみにフランスやアメリカのカリフォルニアでは「メイキング・ラブ・リトリート」という性のセッションが流行り始めているんだとか。それ以外にも世界には性の開放について学ぶ経典が星の数ほど存在します。タントラ、素女経、カーマ・スートラなどなど。セックスレスを克服したい、夫のせいにしていたという人は、チラリと覗いてみるのもよいでしょう。ちなみに私は仕事柄「カーマ・スートラ」はじっくり読み、DVDもすべて観ました。たしかに開放されます。そして性への興味がどんどん湧いてくるようになりました。
長生きの秘訣は快楽、80歳を過ぎても週3回の“愛の行為”
夫婦仲相談所の相談事例では、30代前半の女性がセックスレスで悩んだあげくに「一生夫に触れられないのは辛いけど、夫は性欲がないからあきらめる」といった”あきらめ発言”をする例が後をたちません。30歳以降まったくセックスがない生活を人生後半の60年間続ける……妻があきらめることで平穏な結婚生活が送れるならそれでいいのでしょうか?本の中の数ある事例でも、とくに胸がジンとしたものに90歳の未亡人のエピソードがあります。80歳を過ぎても愛の行為を週3回していた彼女は、夫が先に旅立ち病気になってしまいます。しかし、マスターベーションによって健康に戻るのです。「私の長生きの秘訣は快楽よ……」という彼女の言葉から、日本の夫婦が学ぶことは多いでしょう。
一方で、セックスがないのは賢明と考えるフランスの熟年もいます。仲間や友達がいればいいと。これもまた日本人にも多い意見です。しかし、フランス人は常にスキンシップを欠かしません。挨拶のハグ、おはようのキス、性行為はないけれど毎晩抱き合いながら眠る老夫婦もいます。
セックスのある夫婦が豊かで、ない夫婦が冷えていると断定はできません。
しかし「セックスはないけど、一生愛してる」とパートナーに抱きつくことができるか? その手をはらわず、キュっと抱き返すことができるか? そこだけは確認してみても損はないと思います。そして、この『セックス・アンド・ザ・シックスティーズ』を読んで、10年後の私たち夫婦の未来像を描いてみてください。性の価値観が、小鳥の羽のように震えてくるはずです。
作者のエヌゼル氏は熟年世代のみならず次世代のカップルに向けて大切なメッセージをくれました。次世代、まさに現代の働き盛りの夫婦たち。仕事と子育てに100%エネルギーを使わず、パートナーとゆっくり見つめ合う時間を大切にしてください。
こちらの本、帯は私が心をこめて書きました。書店で見かけたら帯の文言にも注目してください。
『セックス・アンド・ザ・シックスティーズ』(株式会社エクスナレッジ)
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