味噌汁は味噌・出汁・具材でバリエーションも豊富
「おふくろの味」と言われて、思い浮かべる人が多そうな味噌汁。味噌だけでも、自家製のものはもちろん、日本全国にさまざまな種類のものがありますし、味を引き立たせる出汁の取り方もさまざま。味噌と出汁の組み合わせだけでもバリエーションが豊富です。
「汁」の部分だけでも、それぞれの家庭の味が出る味噌汁ですが、これに具材の種類が加わると、「味噌汁」という料理には数え切れないほどのバリエーションがあり、「毎日飲んでも飽きない」と言われる家庭料理だと感じます。
<目次>
味噌汁は具材の組み合わせを工夫し、栄養バランスを!
出汁のうま味は味噌汁に不可欠です。うま味の成分は「アミノ酸」ですので、たんぱく質補給になりそうなものですが、量が少ないので栄養としては期待できません。
味噌も「発酵食品で体に良い」と言われたりもしますが、日本人にとっては発酵食品であるというメリット以上に「食塩の摂りすぎ」の方が体に影響を与えてしまうことから、積極的に多く摂るというよりは、味つけのワンポイントとして使うように考える方が栄養学的見地からは正解です。
味噌汁を栄養学的にも体によい食べ物にしていくためには、やはり「具材」が重要です。具材をうまく組み合わせて栄養バランスをよくし、汁を飲むというよりも、具を食べる一品に仕立てるのがよいでしょう。
具沢山味噌汁で栄養を補う「一汁一菜」という提案
2016年に調理師の土井 善晴さんが『一汁一菜でよいという提案』という本を出版し、話題になりました。これまでは一汁三菜と言われてきたことから、「汁とおかずで、全部で2品だけ?」と読者に衝撃を与えたのは記憶に新しいところだと思います。実は、この考え方のベースになっているのは、「具だくさんの味噌汁」です。食材を1~2品しか使わないおかずを毎食3品揃えるのは少し大変なものです。これに対して具だくさんの味噌汁とおかずで、それぞれに多種類の食材を使った料理を作れば、栄養バランスも整いやすく、調理時間も短くすることもできるため、シンプルに健康的な生活ができるようになるのではないか、と提案されていました。
正直なところ、栄養士の目から見ると「さすがに2品ではさみしくないかな?」とも感じますが、料理初心者さんのハードルを下げるという意味では嬉しい提案だったからこそ、話題になったのでしょう。
それでは、汁で栄養をとるには、具体的にどのようにすればよいのでしょうか?
味噌汁に入れる具の組み合わせ
栄養バランスをとるためには「主食」「主菜」「副菜」の3つの要素がそろっていることが重要です。そのため、1品で栄養バランスをとるためには「主菜」「副菜」の役目を果たすことができる味噌汁を目指せば、良いわけです。仮に、1日3食のうち1食くらいであれば、具だくさん味噌汁とご飯だけ組み合わせであっても、菓子パンとコーヒーで済ませる1食よりも、1日トータルの栄養バランスは大きく崩れません。
まずオススメしたいのは王道の「豚汁」。豚肉に大根、ニンジン、サトイモ、ゴボウ、こんにゃくなどを入れるのが一般的ですが、難しく考えず、豚肉+冷蔵庫の余り野菜を全種類入れてしまうといった気持ちでも問題ありません。
キュウリやトマトなどの夏野菜は煮てしまうとあまりおいしくありませんが、なすは賛否両論あるものの、味噌汁に入れて食べる家庭も多いようです。また、大根やニンジン、ゴボウなどの根菜類やイモ類、キノコ類、海藻類は、何を入れてもおいしくなります。
豚汁の豚肉を豆腐や油揚げ、納豆に変更するのもおいしいですよ。「納豆を味噌汁に入れるの?」と思った人もいるかもしれませんが、山形県の郷土料理に刻み納豆を入れる汁があります。私も山形でこれを知った後、納豆が冷蔵庫に残っているときは、自分で作ったりしています。
他にも、「雑魚」と呼ばれる小さい魚が手に入る地域であれば、ぶつ切りにして野菜と一緒に煮込んで味噌汁にすると、魚と野菜から出汁がたっぷり出ておいしくなります。いわゆる漁師メシに多く見られる食べ方ですね。
味噌汁の具というと、「わかめと豆腐」「長ねぎと大根」など2種類の組み合わせを考える人が多いようですが、2種類に限定せず、冷蔵庫のあまり物で「煮物」にするとおいしい食材をすべて入れてしまうくらいのつもりで作ると、さまざまな食材からいろんな味の出汁が出ておいしい味噌汁になります(ご家族に「同じのが食べたい」と言われても再現できないのは辛いところかもしれませんが……)。
具を食べたら汁はほとんど残らないくらい具をたっぷり入れて作ると体にもおいしい味噌汁になるので、ぜひ具だくさんの味噌汁を作ってみてください。
食塩摂取制限のある人が味噌汁を飲むときの注意点
最後に食塩量が気になる人もいると思いますので味噌汁の食塩含量についてお話しておきます。味噌汁は通常の作り方をした場合、1杯に1g程度の食塩が含まれています。そのため、病院等で「食塩摂取制限」の指示が出ている方は、「味噌汁は飲まないで」と言いたいところですが、飲むなら、味噌汁を湯で薄めて飲むよりは、量を減らすようにしましょう。
全部飲むことを想定した場合、量を半分にしても、湯で濃さを半分にして1杯分を飲んだとしても、その1杯に入っている食塩の量は同じ。どうせなら、普通の濃さのものを少量だけ飲むほうが満足感は高いのです。
家庭で手軽に作ることができる味噌汁は、具材を上手に選べば、健康的な一品になります。ぜひ、美味しくて健康的な味噌汁を楽しんでくださいね。
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