インセンティブの基礎知識
「インセンティブ」という言葉には、目的や課題を達成するための動機や刺激、という意味があります。インセンティブ制度とは、社員を励ましてモチベーションをアップさせることで、企業としての目標を達成しようと導入された制度です。日本では、通常の給与形態に加えて賞与などの報酬としてインセンティブ制度を取り入れている企業が多くありますが、必ずしもお金だけがインセンティブではなく、表彰や副賞など、社員のモチベーションを上げる効果があるものはすべてインセンティブに該当します。アルバイトでも、月何回勤務したかなどを報酬に反映させるなどインセンティブ制度が導入されているところもあります。
また、個人の成果や成績をインセンティブにどのように反映するかは、各企業の業種などによってもさまざまです。これからインセンティブ制度を企業に導入する場合には、
- 対象者
- 成果の評価方法
- 何をインセンティブとするか(賞与?表彰?賞品?)
- 期間
インセンティブとボーナスの違いとは?
ボーナスも賞与ですが、ボーナスは企業全体の業績によって基本的な額が決まります。支給される時期も決まっていますし、正社員全員がもらえる、基本給与に追加して支払われる給与です。一方インセンティブでは、個人の成績によって額が決まります。個人個人が企業のために結果を出したからこそ支給されるものが、インセンティブです。企業側のメリット
■優秀な人材を確保でき、人材募集時のアピールにもなる日本ではインセンティブ制度をまだ導入していない企業も多いため、人材確保の際にインセンティブ制度を導入しているということはアピールポイントになります。また、前述のとおり結果を出したからこそもたらされるのがインセンティブ制度。成果を出す人に対しインセンティブがあるということで、能力や実力がある、意欲のある人が集まってくることに繋がるでしょう。
■社員の意欲向上
努力すればするほど報われる環境にすることで、社員のモチベーションも上がることが期待できます。やりがいを持ち、社員同士が競争しながら目的を持って業務に打ち込むことで、企業全体が高めあう雰囲気になり、企業の力も強くなっていきます。
企業側のデメリット
必ずしも全ての業種がインセンティブ制度に向いているわけではない企業側のデメリットとして挙げられるのは、業種によってはインセンティブ制度には向かない業種や職種があるということです。例えば営業職は個人の成績が可視化されやすい職種ですが、経理や事務などの職種は評価するのが難しく、導入を検討する際にはどのような場合にインセンティブが発生するのかを慎重に整備しておかなければなりません。
社員側のメリット
■実力が正当に評価され、モチベーションアップ一般的に企業では実力が評価されて昇進していきますが、中には成果を上げていたとしても上司との折り合いが悪く、きちんと評価されないこともあるかもしれません。そういった場合、インセンティブ制度が導入されることで、表彰や賞与など、数字で成績を見られることになり、実力を正当に評価してもらえる機会が増えるのです。
社員側のデメリット
■仕事に対する意欲がダイレクトに反映されるインセンティブ制度において、賞与など金銭でインセンティブを反映させることが多いため、その時どきの成績や結果がインセンティブに反映されると、給与額に大きな影響を与えます。やる気があってインセンティブもがんがん貰いに行くような人ならいいですが、全ての社員が高い志を持って仕事に取り組んでいるわけではないでしょう。
どんなに頑張っても、成績を残すことができないひとも中にはいます。実力を結果に反映することができない社員は、モチベーションがどんどん下がってしまい悪循環に陥る危険性があります。
■人間関係が悪化する可能性も
インセンティブ制度は基本的に個人単位で争い、目に見える成果を競うものなので、同僚がライバルになりやすいです。その結果、チームでの結束力が弱まったり、個人の成績だけを追いかけて人間関係にヒビが入る可能性もあります。社員は自分の成果ばかりを追い過ぎず、企業全体としての成長や企業全体の利益を考える視点を持つ必要があるでしょう。
まとめ
インセンティブ制度は、やる気のある社員を励ますだけでなく、企業としての機運醸成ものぞめる画期的な制度です。一方で、意欲の有無や実力の有無によって社員の評価に差が開いてしまう危険性もあります。企業としては、それぞれの企業の業種や社風に合うかたちで導入されていること、社員としては、インセンティブ制度を理解した上で自分が納得できる給与形態や働き方であることを確認しましょう。インセンティブ制度をうまく活用して、実力が発揮しやすく、企業全体が成長していける職場を目指しましょう。文/鈴木麻理奈
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