ミュージカル/注目のミュージカルレビュー・開幕レポート

『タイタニック』鎮魂の群像劇を演じる人々に訊く(2ページ目)

氷山に衝突して沈没したタイタニック号。その船上で交錯した人間群像を感動的に描き出すミュージカルが、待望の再演を迎えます。この特集では、生と死のドラマに真摯に取り組む出演者たちへのインタビューを、不定期で更新。10月の上演に向けて、期待を高めて行きましょう!

松島 まり乃

執筆者:松島 まり乃

ミュージカルガイド

相葉裕樹さん(二等船室客・チャールズ役)インタビュー

 
相葉裕樹 87年千葉県出身。2004年映画でデビュー。『PIPPIN』『SEMINAR -セミナー-』『ラ・カージュ・オ・フォール 籠の中の道化たち』『スカーレット・ピンパーネル』『レ・ミゼラブル』『HEADS UP!』『ウーマン・オブ・ザ・イヤー』などで活躍。近年は海外ドラマ『S.W.A.T.』等、声優の仕事にも取組み、演技の幅を広げている。(C)Marino Matsushima

相葉裕樹 87年千葉県出身。2004年映画でデビュー。『PIPPIN』『SEMINAR -セミナー-』『ラ・カージュ・オ・フォール 籠の中の道化たち』『スカーレット・ピンパーネル』『レ・ミゼラブル』『HEADS UP!』『ウーマン・オブ・ザ・イヤー』などで活躍。近年は海外ドラマ『S.W.A.T.』等、声優の仕事にも取組み、演技の幅を広げている。(C)Marino Matsushima


インタビュー第二弾は相葉裕樹さん。貴族令嬢キャロラインと駆け落ちして新天地アメリカに向かう二等客・チャールズ・クラーク役で、今回が初参加となります。駆け落ちするほど情熱的な役柄ですが、危機的状況に陥ってからのチャールズのリアクションには、相葉さんもびっくりだとか。現時点でどのようなキャラクターととらえているでしょうか。
 

本当の意味で”紳士”だったチャールズを、自分らしく演じたい

――前回公演の印象は?

「まずは重厚な音楽だなぁというのが第一印象で、主人公一人の物語というのではなく、群像劇で、登場人物一人一人の思いがフィーチャーされている。それぞれの人間ドラマが、タイタニック号に乗り合わせたことで沈んでいくというのがなんとも儚く、哀しくて。何をもって生きていくのかと考えさせられる、深い作品だなと思いました」

――モーリー・イェストンさんの音楽は重厚ですが、キャッチ―なフレーズが繰り返されるというより、どんどん流れていくというか、歌う方にとっては難しい楽曲のようにも聞こえます。

「僕も難しいと思いました。ものすごくキャッチ―というわけではなく、複雑なメロディに、ハーモニーが組み合わさっていて、すっと歌えるような楽曲ではないのですが、だからこそ耳を傾けたくなる。お客様にとっては作品に集中できる音楽なのかなと思いますね」

――男女を問わず、共感できるキャラクターはありましたか?

「“共感”という観点では観ていなかったです。それより、みんなが主役で、それぞれにナンバーがあり、場を任される瞬間があるというのが印象的で、見ごたえを感じました。あと、本作では俳優が本役以外にも、いろいろな役を演じるという趣向が面白いですよね(注・乗客を演じる俳優がある場面では船のスタッフを演じるといった演出)」

――チャールズ役はいかがでしょう?
『タイタニック』チャールズ役(相葉裕樹)

『タイタニック』チャールズ役(相葉裕樹)

「前作の『ウーマン・オブ・ザ・イヤー』でも夫婦役を演じて、今回、夫婦役が二度目なんです。30代に入って、そういう役も演じる年齢になってきたなと感じますね。(現実的には)結婚経験がないので背伸びする感覚があるし、今回はそれに“駆け落ち”という要素も加わります。恋に燃えるというところに関しては、わからないわけではないけど、いろんなものを捨ててまで愛する女性と新しい人生を生きる覚悟というのは、尋常ではない。そんな大きな夢を持ってタイタニック号に乗り込む彼は、最終的に儚く散ってゆくわけですが、最後はとても紳士的で、度量のある人物で、かっこいいと思いました」

――タイタニックが氷山に衝突し、沈むかもしれないとなってからは、人間の本性というか、醜い部分を見せる人物もいますが、チャールズは正反対ですね。

「かなり紳士的ですよね。悪あがきをしないというか、潔いです。それまでは階級の違いから嫌味を言ったりとか、繊細な部分があるようにも見えるのですが、船が沈むとなってからは、男の矜持を見せていて、かっこいいんですよ。台詞で“気付けの一杯いかがか”と言うようなことを言うんですが、そんなお洒落なこと、なかなか言えません」

――もし自分だったら?

「いやもう、大変ですよ。いくらボートが足りないとなっても、(最後まで)なんとかしようとするんじゃないかな」

――彼は2等客室の乗客ですが、もともと2等の層の人物なのでしょうか。ひょっとして、3等の(労働者階級の)人間だったけれど、貴族令嬢のキャロラインとの間をとって2等に乗っているとか?

「それは僕も思いました。彼女は本来は1等に乗る人で、お金持ちなわけですよね。ものすごい格差だけど、一緒に自由の国へ駆け落ちをしたくなるほどの恋だったんでしょうね。演じるには、ものすごくパワーの必要な役だと思います。それもただ押せばいいというものではない。歌にしても、ただ歌い上げるのではなく、彼の本質的な部分をどうやって表現するか。難しいなと感じています」

――トム・サザーランドさんの演出は今回が初めてですよね。

「はい。初めてお会いした時、否定をしないというか、優しい方だなという印象を受けました。まだ一度しかお会いしていないのでわからない部分もあるけれど、こちらの気持ちを汲み取ってくれる方なのかなと感じています。ご一緒するのが楽しみです」

――どんな舞台になるといいなと思っていらっしゃいますか?

「 “再演”に初参加させていただく形になるので、まずはご迷惑がかからないよう、しっかりやりたいと思っています。“再演”というのは、前回公演が素晴らしい成果で、待望してくださるお客様がたくさんいらっしゃることで成立すると思うのですが、その期待を裏切らないようにしつつも、今回は僕以外にも新キャストが何人かいますし、前回の舞台を追いすぎるのではなく、自分のチャールズを作れたら。新たな『タイタニック』の中で、皆さんとご一緒しつつ、新鮮な気持ちでいろいろとトライしていけたらと思っています」

*『タイタニック』以外の最近の演目についての相葉さんへのインタビューはこちら

*次頁で鈴木壮麻さんインタビューをお届けします!
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