定年・退職のお金/退職金の相場

勤続年数別・もらえる退職金の相場はいくら?

勤続年数が5年、10年、20年、30年と、長くなると退職金はどれくらい違うのでしょうか。大企業と中小企業、東京と地方、自己都合退職と会社都合退職のそれぞれの相場を比較してみます。

井上 陽一

執筆者:井上 陽一

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退職金相場を比較! 勤続年数や会社規模などでいくら違う?

退職金は、会社から、退職した人に支払われるお金のことです。退職金には長い歴史があり、江戸時代の「のれん分け」が起源といわれています。退職金といえば、定年退職時に一括で支払われる退職一時金の印象が強いのですが、その他にも確定給付年金や確定拠出年金のように、年金として受け取る退職金もあります。
勤務年数別退職金相場を規模や地方別に比較

勤続年数別退職金相場を規模や地方別に比較

退職金のことを意識するのは、就職・転職先を選ぶ時、あるいは定年退職が近づいた時くらいでしょうか。しかし、転職・退職・起業の予定が当面ない場合でも、退職金は人生計画を立てる上で影響が大きいので、勤務先の退職金規程やご自身の退職金がいくらになるのかを確認しておきましょう。
 

勤続年数別・退職金の相場はいくら?

勤続年数別のモデル退職金(東京都の中小企業で自己都合退職の場合)

勤続年数別のモデル退職金(出典:東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和2年版)」)

表は、東京都の中小企業の勤続年数別のモデル退職金です。モデル退職金とは、学校卒業後に入社し、標準的な昇進をした場合の退職金の水準のことです。

東京都の場合は、300人未満の事業者(中小企業)を対象とした調査を行っており、約1000社のデータを基にモデル退職金が算出されています。

表を見ての通り、勤続年数を重ねるごとに退職金額は増えていくのが一般的です。例えば、大学卒の人が勤続15年で自己都合退職した場合の退職金額は、214万9000円になります。グラフにすると次のようになります。

 
勤続年数別退職金額グラフ(自己都合退職)(出典:東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和2年版)」を基に作成)

勤続年数別退職金額グラフ(自己都合退職)(出典:東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和2年版)」を基に作成)



また、前回(平成30年)の調査と比べると、いずれの勤続年数も退職金額が減少しています。
勤続年数別のモデル退職金今回と前回の比較(出典:東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(平成30年・令和2年版)」)

勤続年数別のモデル退職金今回と前回の比較(出典:東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(平成30年・令和2年版)」)

 

福岡県の中小企業の退職金比較

東京と地方の勤続年数別の退職金額を比べてみます。地方を代表して、福岡県のモデル退職金を使用します。参考までに福岡の2022年時点の最新データである「平成27年度福岡県の賃金事情」を見てみましょう
勤続年数別の退職金(福岡県の中小企業で自己都合退職の場合)

勤続年数別の退職金(福岡県の中小企業で自己都合退職の場合)

大学卒の場合、勤続年数5年を除いては東京の退職金の方が高く、年数が経過するごとに差は広がっているのに対し、高校卒では福岡の退職金が東京を上回っています。
 

退職の分類

ここまで自己都合退職金額のデータを見比べてきましたが、退職は「定年退職」「会社都合退職」「自己都合退職」の3つに分けることができます。

<定年退職>
定年退職とは、定年制度で定められた年齢の到来による退職のことです。定年制を設けている会社は全体の約95%あり、うち8割ほどが60歳定年です。平成17年の調査では60歳定年の割合が9割を超えていましたので、定年の年齢は上がっているようです(出典:厚生労働省『平成29年就労条件総合調査』)。

<会社都合退職>
会社都合退職とは、会社側の都合による退職のことです。例えば、経営不振・業績悪化によるリストラで労働契約を解除されることなどです。早期希望退職などは、自己都合退職と比べて退職金が割り増しで支払われることがあります。

<自己都合退職>
自己都合退職とは、転職、引越しや結婚など自分の意思や都合で退職することです。
 

会社都合退職と自己都合退職の退職金比較

退職の事由によって退職金額に差が出ます。自己都合と会社都合の退職金額の差がどれくらいあるのか、見てみましょう。定年は会社都合に含まれています。
自己都合退職と会社都合退職の退職金比較

自己都合退職と会社都合退職の退職金比較(出典:中央労働委員会「令和3年退職金、年金及び定年制事情調査」)

自己都合退職の退職金額は、会社都合と比べてかなり少ないことがわかります。ただし、自己都合退職と会社都合退職の差を表した「自己都合の減額率(黄色い網掛け部分)」は勤続年数を重ねるごとに小さくなっています。これは、勤続年数が長くなるにつれ、自己都合と会社都合の差が縮まっているということです。
 

退職金給付は会社の義務ではない

退職金給付は企業の義務ではないため、退職金制度がない企業もあります。厚生労働省の調査によると、退職金制度がある企業の割合は、2018年時点で80.5%でした。前回調査(2013年)の75.5%と比べると、退職金制度のある会社は増えています。
退職給付(一時金・年金)制度がある企業の割合とその変化

退職給付(一時金・年金)制度がある企業の割合とその変化

企業規模別に見ると、1000人以上が92.3%、300~999人が91.8%、100~299人が84.9%、30~99人が77.6%となっていて、退職金(一時金・年金)制度の導入率と企業規模は比例しています。前回を比較すると、会社規模が300人未満の中小企業で退職金制度の導入が進んだことがわかります。

ちなみに日本全国にある事業者数は、中小企業庁によると382万(2016年)あり、そのうち中小企業・小規模事業者は357.8万と99.7%を占めています。

参考・中小企業庁 「中小企業・小規模事業者の数(2016年6月時点)の集計結果」
https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/chousa/chu_kigyocnt/2018/181130chukigyocnt.html
 

勤続年数別の大企業の退職金

最後に、大企業と中小企業の退職金を比べてみます。大企業は、資本金5億円以上、労働者1000人以上の企業から選定された380社のモデル退職金です。中小企業は、東京都の中小企業のモデル退職金で、自己都合退職で大学卒の場合の退職金額を比較しています。

中央労働委員会「令和3年退職金、年金及び定年制事情調査」、東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和2年版)と調査年は違いますが、比較してみましょう。
大企業と中小企業の勤続年数別退職金の比較(自己都合)(出典:中央労働委員会「令和3年退職金、年金及び定年制事情調査」、東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和2年版)」)

大企業と中小企業の勤続年数別退職金の比較(自己都合)(出典:中央労働委員会「令和3年退職金、年金及び定年制事情調査」、東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和2年版)」)

いずれの勤続年数でも大企業の退職金が中小企業の退職金を上回っているがわかります。勤続20年を超えると退職金額は2倍以上の差となっています。
 

おわりに

勤続年数別の退職金相場をご紹介しました。退職金はライフプランを立てる上で重要です。これを機に勤務先の退職金規程やご自身の退職金がいくらになるのかをチェックしておきましょう。

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