ピーターパン

7月21日~8月1日=東京国際フォーラムホールC、8月12日=梅田芸術劇場メインホール

【見どころ】
『ピーターパン』

『ピーターパン』

世界中で愛されているジェームズ・バリの原作小説を1954年にミュージカル化、日本でも81年から上演されている“夏の風物詩”ミュージカルが、今年も登場。昨年“ピーター”デビューした吉柳咲良さん、演出の藤田俊太郎さんが、今年も続投します。

観客を“絵本の世界”に誘う藤田演出の中で、いっそうの輝きを放つ吉柳さんに対して、今回はフック船長・ダーリング氏の2役でISSAさんが登場。『ロッキーホラー・ショー』での怪演も記憶に新しいISSAさんが、本作ではどんなカラーを見せるでしょうか。他にも新キャストのウェンディ役=河西智美さん、タイガー・リリー役=莉奈さん、前回好評を博した続投キャスト、ダーリング夫人役=入絵加奈子さん、ライザ役=久保田磨希さんら、強力キャストが集結。時代を超えてフレッシュであり続ける演目の“最新版”に期待が寄せられます。

【タイガー・リリー役
莉奈さんインタビュー】

大人の目線、子供の目線、両方を持っている
藤田俊太郎さん版『ピーターパン』の中で、
“かっこいい”タイガー・リリーを目指しています
莉奈undefined北海道出身。モデルを経て2011年、『ロミオ&ジュリエット』ジュリエット役で女優デビュー。『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』『ザ・ビューティフル・ゲーム』『パレード』『ペール・ギュント』などの舞台で活躍。18年11月から舞台「命売ります」(演出ノゾエ征爾)に出演予定。(C)Marino Matsushima

莉奈 北海道出身。モデルを経て2011年、『ロミオ&ジュリエット』ジュリエット役で女優デビュー。『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』『ザ・ビューティフル・ゲーム』『パレード』『ペール・ギュント』などの舞台で活躍。18年11月から舞台「命売ります」(演出ノゾエ征爾)に出演予定。(C)Marino Matsushima

――莉奈さんは子供の頃からタイガー・リリーに憧れていたそうですね。

「きっかけはディズニーのアニメ版でした。小さいころは父に酋長役になってもらって、よく一緒にインディアンごっこをしていましたね。かっこいい女の子が好きで、“群れない”リリーが素敵に見えたのだと思います。その後、上京してミュージカル版があることを知り、拝見したらそこでもタイガー・リリーがかっこよくて。ある舞台で共演した池田有希子さんという、憧れの女優さんが過去にこの役をなさっていたこともあって、密かに憧れていました。

でも海外では体操の選手が演じている例もあるほど、タイガー・リリーは体を使う役なので、自分には無縁だろうと思い込んでいて、今回、キャスティングしていただけて驚きました。以前はリリーと自分に共通する部分は一つもないと思っていたけど、私の中にも強く、たくましく生きたいという願望があって、そういう部分は似ているかなと思えますね」

――『ピーターパン』という作品の中で、タイガー・リリーはどんな存在なのでしょうか。
『ピーターパン』2018製作発表にて。タイガー・リリーの衣裳は今回、リニューアルされ、莉奈さんはネイティブ・アメリカン調のパターン(タイツのサイドにも施されている)をとても気に入っているそう。(C)Marino Matsushima

『ピーターパン』2018製作発表にて。演出の藤田さんからは「(演出は2回目ですが)役者が変われば演出も変わります。今回はセットを減らし、ISSAさんが踊れるスペースも作りました。飛び出す絵本のように飛び出す舞台になると思います」と説明。タイガー・リリーの衣裳は今回、リニューアルされ、莉奈さんはネイティブ・アメリカン調のパターン(タイツのサイドにも施されている)をとても気に入っているそう。(C)Marino Matsushima

「ピーターとウェンディ、タイガー・リリーという関係性の中で、ウェンディは大人になれるけどリリーはずっと子供のまま。ウェンディはネバーランドを通り過ぎてゆく人であり、リリーはずっとそこで戦い抜く人というように、ウェンディの存在を際立たせる存在ですね。

それと(演出の)藤田(俊太郎)さんから聞いてはっとしたのが、“本作のインディアンたちは、奪われた土地を奪い返したい人たちである”ということ。ネバーランドにはまず“インディアンたち”と“迷子たち”の対立構造があって、だからこそ後半の仲直りのシーンが活きてくる。インディアンの存在って大きいんだなと気づかされました」

――ネバーランドでは“海賊”と“そのほかの人々”が対立している、と思いがちですが、はじめは様々な勢力がひしめいているのですね。

「インディアンと海賊、そして迷子たちが互いに対立していて、海賊とピーターの構図は分かりやすいのですが、インディアンは“恐れられている”存在で、彼らの音楽が聞こえてきただけで皆、隠れたりするという状態です」

――稽古の手ごたえはいかがですか?

「これほど疑問なく、自分で裏付けをする必要のない作品も珍しくて、自然とリリーに共感できるようになってきました。藤田さんからは“莉奈さんもタイガー・リリーも、いい意味で“はみ出し者”の部分があるから、そのままやって下さい“とおっしゃっていただきましたが、リリーは孤高の存在で、一緒にいる他のインディアンの男たちは求婚者なのだそうです。その中にすっと“居て”下さい、と。

藤田さんは以前、『ザ・ビューティフル・ゲーム』でもご一緒したのですが、役者の気持ちを尊重して毎日のようにディスカッションしてくださるけれど、ご自身のビジョンははっきりしていて、それをわかりやすく伝えようとしてくださる演出家です。今回も(演出のインスピレーションとなっている)飛び出す絵本をたくさん稽古場に持ってきたり、ピーターパンの銅像があるロンドンのケンジントン公園の写真を貼ったりと、私たちとイメージを共有しようとしてくださっていて、とてもやりやすいです。

でも動きの部分はやっぱり大変で、タイガー・リリーはアクションもあるので、初めて槍を使ったりしながら、人生でこんなに動いたことない!というくらい動いています(笑)。これまでに傷んだことのない筋肉が痛んだりしていますね。食べて体力つけようかと思ったのですが、食べ過ぎると体が重くなって動かなくなるので、今は栄養剤を試しています。ダンスの部分は、ジャズダンス的な要素に加えて野生的というか、民族舞踊的であったりコンテンポラリー・ダンス的であったり。そんな中でもぴんと足を伸ばす瞬間があって、面白いです」

――どんな公演になりそうでしょう?
製作発表ではピーターパン役・吉柳咲良さんによる歌唱披露も。(C)Marino Matsushima

製作発表ではピーターパン役・吉柳咲良さんによる歌唱披露も。(C)Marino Matsushima

「これほど子供がたくさん観に来る演目もなかなかないと思いますが、藤田さん演出の『ピーターパン』は、大人と子供、どちらにも向けて作られているような気がします。完全にどちらか向け、ということではなくて、均等に二つの視点が同時進行しているように感じるんですね。御覧になった方からどんな感想・ご意見が出てくるか、とても楽しみです。そんな中で、私は憧れていたタイガー・リリーを“子供たちのヒーロー”として演じたいので、最近は日常生活でも弱音を吐かないようになってきました(笑)。彼らに憧れてもらえるような、かっこいいリリー像を作りたいですね」

――ご自身についても少しうかがいますが、最近、LAに行かれたそうですね。

「私は子供の頃からハリウッドに憧れていて、今も“いつか自分も”と思っています。その夢のために、現地の演技学校に行ったり、ダンスレッスンを受けたりしながら、あちらのショービズのシステムや俳優の生活を、取材かというくらい、いろいろな方にリサーチしました。あちらでは、みなさんとにかく自分で行動するという印象で、自分で宣材写真を撮ったりビデオを作って、それを持ち歩いていらっしゃいましたね」

――どんな映画をやってみたいですか?

「人間ドラマはもちろんですが、私は壮大な世界への憧れがあって、『ハリー・ポッター』的な、別の世界に行ける作品をやっていたいです。そういう意味ではそこに踏み込んだだけで別世界に行けるミュージカルも大好きな世界。ですので、ミュージカル映画にも挑戦してみたいですね」

――『ラ・ラ・ランド』のような?

「憧れています!! これからも舞台に映像にと、幅広く活動していきたいです」


【観劇レポート】

『ピーターパン』撮影・渡部孝弘

『ピーターパン』撮影・渡部孝弘

客席通路に現れたキャストが、観客に向けて絵本の読み聞かせをしながら始まった、昨年の『ピーターパン』。藤田俊太郎さんにとって二度目の演出となった今回は、召使の扮装をした女性が「私の名前はライザです、これから『ピーターパン』の世界を一緒に旅しましょう」と自己紹介、幕に映し出された大きな本を開くという趣向でスタート。その後も彼女は舞台下手、もしくは上手に佇み、時にうっとり、また時にははらはらドキドキのていで舞台を眺め、観客と物語世界との間に介在し続けます。“お姉さんと一緒に本の世界を眺める”という前提がより明確になったことで、会場の半数近くを占める子供たちもするりと物語世界へ。飼い犬と(どうやら犬嫌いらしい)ダーリング氏の攻防や、颯爽と現れたピーターが石鹸で影を自分につけようと格闘する様など、コミカルな場面では“もれなく”場内が子供たちの笑い声に包まれます。
『ピーターパン』撮影・渡部孝弘

『ピーターパン』撮影・渡部孝弘

ダーリング家の子どもたちがピーターに誘われ、“楽しいことを考えて”空を飛べるようになるまでを描く1幕、ネヴァーランドに到着した彼らが迷子・インディアン・海賊たちの対立に巻き込まれてゆく2幕、そして海賊に囚われた子供たちが間一髪でピーターに助け出され、迷子たちとともに懐かしい我が家へ帰還する3幕。流麗かつ和やかなナンバーに彩られた舞台はテンポよく進行、たっぷり子供たちを楽しませますが、幕に映し出されたビッグベンの時計の針がぐるぐると廻り、再び幕が開くと、そこは前場と同じ寝室のように見えて、何かが違う。そして見慣れぬ婦人の姿が……。“時間の残酷さ”と、ピーターという存在に対する原作者の視点が浮かび上がり、それまで”子供の付き添い“感覚で観ていた大人たちが一瞬にして胸締め付けられる、切ないエピローグとなっています。
『ピーターパン』撮影・渡部孝弘

『ピーターパン』撮影・渡部孝弘

藤田さん同様、今回が二度目となるピーター役の吉柳咲良さんは“少年っぷり”に磨きがかかり、ISSAさんは威厳がありそうでいていささか頼りないダーリング氏役と、ピーターとはまた違った意味で“大人になれない”フック船長役のギャップを鮮やかに表現。ウェンディ役・河西智美さんの、見知らぬ世界への旅に目を輝かせる少女時代と後年の、落ち着きと憂いを含んだ“大人ウェンディ”との演じ分けも印象を残します。
『ピーターパン』撮影・渡部孝弘

『ピーターパン』撮影・渡部孝弘

タイガー・リリー役の莉奈さんは太く、しっかりとした発声で勇猛果敢なリリーを体現、ライザ役の久保田磨希さんも決して台詞が多いわけではない役どころながら、舞台上の出来事に繊細に反応、舞台と客席との懸け橋であると同時に観客の代表として、親近感を与える存在に。そして序盤と終盤の登場時、抜群の安定感を見せるのが、ダーリング夫人役の入絵加奈子さん。家族に対する言葉の一つ一つに愛が溢れ、終盤、迷子5人を“家族にして”と無理難題を言われた彼女が“何とかなりますよ”と夫を説得する様には大いに説得力が。今回、ダーリング夫人役が恒例の“或る役”を兼ねていないのは残念ですが、本作において大きなテーマである“お母さん”の、一つの”理想像“を示していると言っていいでしょう。
『ピーターパン』撮影・渡部孝弘

『ピーターパン』撮影・渡部孝弘

本編でもキャストが客席通路に降り、歌いながらハイタッチなどで観客と触れ合う場面もありますが、公演中、ロビーにはインディアン気分になれるフェイスペインティングコーナーや衣裳・小道具をつけて記念写真を撮れるコーナー、迷路など、子供が楽しめる仕掛けがたっぷり。“時間がなくて遊べなかった”ということのないよう、早めに(開場は30分前)に来場することをお勧めします。

 





 

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