『ピーターパン』
7月21日~8月1日=東京国際フォーラムホールC、8月12日=梅田芸術劇場メインホール【見どころ】
『ピーターパン』
観客を“絵本の世界”に誘う藤田演出の中で、いっそうの輝きを放つ吉柳さんに対して、今回はフック船長・ダーリング氏の2役でISSAさんが登場。『ロッキーホラー・ショー』での怪演も記憶に新しいISSAさんが、本作ではどんなカラーを見せるでしょうか。他にも新キャストのウェンディ役=河西智美さん、タイガー・リリー役=莉奈さん、前回好評を博した続投キャスト、ダーリング夫人役=入絵加奈子さん、ライザ役=久保田磨希さんら、強力キャストが集結。時代を超えてフレッシュであり続ける演目の“最新版”に期待が寄せられます。
【タイガー・リリー役
莉奈さんインタビュー】
大人の目線、子供の目線、両方を持っている
藤田俊太郎さん版『ピーターパン』の中で、
“かっこいい”タイガー・リリーを目指しています
莉奈 北海道出身。モデルを経て2011年、『ロミオ&ジュリエット』ジュリエット役で女優デビュー。『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』『ザ・ビューティフル・ゲーム』『パレード』『ペール・ギュント』などの舞台で活躍。18年11月から舞台「命売ります」(演出ノゾエ征爾)に出演予定。(C)Marino Matsushima
「きっかけはディズニーのアニメ版でした。小さいころは父に酋長役になってもらって、よく一緒にインディアンごっこをしていましたね。かっこいい女の子が好きで、“群れない”リリーが素敵に見えたのだと思います。その後、上京してミュージカル版があることを知り、拝見したらそこでもタイガー・リリーがかっこよくて。ある舞台で共演した池田有希子さんという、憧れの女優さんが過去にこの役をなさっていたこともあって、密かに憧れていました。
でも海外では体操の選手が演じている例もあるほど、タイガー・リリーは体を使う役なので、自分には無縁だろうと思い込んでいて、今回、キャスティングしていただけて驚きました。以前はリリーと自分に共通する部分は一つもないと思っていたけど、私の中にも強く、たくましく生きたいという願望があって、そういう部分は似ているかなと思えますね」
――『ピーターパン』という作品の中で、タイガー・リリーはどんな存在なのでしょうか。
『ピーターパン』2018製作発表にて。演出の藤田さんからは「(演出は2回目ですが)役者が変われば演出も変わります。今回はセットを減らし、ISSAさんが踊れるスペースも作りました。飛び出す絵本のように飛び出す舞台になると思います」と説明。タイガー・リリーの衣裳は今回、リニューアルされ、莉奈さんはネイティブ・アメリカン調のパターン(タイツのサイドにも施されている)をとても気に入っているそう。(C)Marino Matsushima
それと(演出の)藤田(俊太郎)さんから聞いてはっとしたのが、“本作のインディアンたちは、奪われた土地を奪い返したい人たちである”ということ。ネバーランドにはまず“インディアンたち”と“迷子たち”の対立構造があって、だからこそ後半の仲直りのシーンが活きてくる。インディアンの存在って大きいんだなと気づかされました」
――ネバーランドでは“海賊”と“そのほかの人々”が対立している、と思いがちですが、はじめは様々な勢力がひしめいているのですね。
「インディアンと海賊、そして迷子たちが互いに対立していて、海賊とピーターの構図は分かりやすいのですが、インディアンは“恐れられている”存在で、彼らの音楽が聞こえてきただけで皆、隠れたりするという状態です」
――稽古の手ごたえはいかがですか?
「これほど疑問なく、自分で裏付けをする必要のない作品も珍しくて、自然とリリーに共感できるようになってきました。藤田さんからは“莉奈さんもタイガー・リリーも、いい意味で“はみ出し者”の部分があるから、そのままやって下さい“とおっしゃっていただきましたが、リリーは孤高の存在で、一緒にいる他のインディアンの男たちは求婚者なのだそうです。その中にすっと“居て”下さい、と。
藤田さんは以前、『ザ・ビューティフル・ゲーム』でもご一緒したのですが、役者の気持ちを尊重して毎日のようにディスカッションしてくださるけれど、ご自身のビジョンははっきりしていて、それをわかりやすく伝えようとしてくださる演出家です。今回も(演出のインスピレーションとなっている)飛び出す絵本をたくさん稽古場に持ってきたり、ピーターパンの銅像があるロンドンのケンジントン公園の写真を貼ったりと、私たちとイメージを共有しようとしてくださっていて、とてもやりやすいです。
でも動きの部分はやっぱり大変で、タイガー・リリーはアクションもあるので、初めて槍を使ったりしながら、人生でこんなに動いたことない!というくらい動いています(笑)。これまでに傷んだことのない筋肉が痛んだりしていますね。食べて体力つけようかと思ったのですが、食べ過ぎると体が重くなって動かなくなるので、今は栄養剤を試しています。ダンスの部分は、ジャズダンス的な要素に加えて野生的というか、民族舞踊的であったりコンテンポラリー・ダンス的であったり。そんな中でもぴんと足を伸ばす瞬間があって、面白いです」
――どんな公演になりそうでしょう?
製作発表ではピーターパン役・吉柳咲良さんによる歌唱披露も。(C)Marino Matsushima
――ご自身についても少しうかがいますが、最近、LAに行かれたそうですね。
「私は子供の頃からハリウッドに憧れていて、今も“いつか自分も”と思っています。その夢のために、現地の演技学校に行ったり、ダンスレッスンを受けたりしながら、あちらのショービズのシステムや俳優の生活を、取材かというくらい、いろいろな方にリサーチしました。あちらでは、みなさんとにかく自分で行動するという印象で、自分で宣材写真を撮ったりビデオを作って、それを持ち歩いていらっしゃいましたね」
――どんな映画をやってみたいですか?
「人間ドラマはもちろんですが、私は壮大な世界への憧れがあって、『ハリー・ポッター』的な、別の世界に行ける作品をやっていたいです。そういう意味ではそこに踏み込んだだけで別世界に行けるミュージカルも大好きな世界。ですので、ミュージカル映画にも挑戦してみたいですね」
――『ラ・ラ・ランド』のような?
「憧れています!! これからも舞台に映像にと、幅広く活動していきたいです」
【観劇レポート】