間取りの大切な考え方。「ゾーニング」と「動線」
「ゾーニング」という言葉にあまり聞きなじみはないが、「動線」や「動線計画」なら聞いたことがある、という方はいらっしゃるのではないでしょうか。どちらも間取りを決める際に重要な考え方ですが、それぞれ意味合いが変わってきます。まずは「動線」と「ゾーニング」の違いを理解しておきましょう。・動線:人の動きを、線で結んだもの
・ゾーニング:空間を、目的ごとに分類すること
動線とは、人の動きを線で結んだものをいいます。
例として、買い物から帰ってきてから、夕食の支度に入るまでの動きを考えてみましょう。下の1~4は、「人の動き(場所)」になっています。
1.帰宅(玄関)
↓
2.物の仕分けと収納(キッチン・食品庫)
↓
3.仕事帰りの買物であれば、着替え(ウォーキング・クローゼット)
↓
4.洗濯物があれば、取込みや整理(収納)
買い物から夕飯の支度までに、これだけの動きがあります。
これを図面に落とし込んで、頻繁に動く部分を短くし、たまにしか通らないところは長くしてもいいと考えていくのが、動線計画です。
いっぽうでゾーニングとは、ゾーン(地域、区域)を、目的をもって分けることをいいます。建物のかたちは、いきなり部屋の配置が決まるわけではなく、まずは色々な可能性を求めてシミュレーションを行います。この作業をゾーニングというのです。
ゾーニングは家の外側ゾーンをしっかり抑えることが肝
ゾーニングを考えるにあたって、日照、通風、眺望を考慮しながら、建物を敷地の中にどう配置し、建物の形を決めていくかという、敷地全体を含めた家の外側のゾーン=「外部ゾーニング」(道路からのアプローチ、駐車場、庭など)を押さえておくことが肝になります。ここをきちんと押さえておけば、建物の輪郭が見え、輪郭の中に部屋をどうつなげていけばよいのかが見えてくるからです。これが内部のゾーニング計画につながっていくのです。
家の中の内部ゾーニングは3つに分けて考える
住まいの機能は、家族全員が使うスペース、各個人が使うスペース、さらに水まわりなどのサービススペースと、大きく3つに分けることができます。ゾーンもそれに沿って3分割してみると分かりやすくなります。・第一のゾーン
第一が、リビング、ダイニング、畳スペースなど家族全員が集まり、使うゾーン。
これを「パブリックゾーン」といいます。
・第二のゾーン
第二が、家族それぞれの部屋で夫婦の寝室、子ども部屋、老人室などです。
ここが「プライベートゾーン」です。
・第三のゾーン
第三のゾーンがキッチン、ユーティリティ、浴室、トイレなど、生活に必要なサービスを受け持つ部分が「サービスゾーン」と呼んでいます。
この3つのゾーンが複雑に入り組まないようにすることがゾーニングの基本的な考え方です。
失敗しない間取りのコツはパブリックゾーンの位置にあり
住まいで最も大切なスペースは、家族が集まるパブリックゾーンです。したがって、一番初めにこのゾーン(スペース)をどこにするかを中心に考えていくことが失敗しない間取りのつくり方です。仮に建築家に依頼する場合であっても自分でゾーニングをしてみて下さい。敷地の特徴を理解し、家族が何を一番優先したいのかを、整理することにも役立つからです。騒音や振動など立体的なゾーン分けも重要
次に注意しておくことは、平面の区分だけでなく立体としてのゾーン分けです。例えば、リビングなどのパブリックゾーンは、寝室などのプライベートゾーンに騒音や振動などの影響を及ぼさない位置に設けるべきですし、トイレや洗面台といった家族が日々使うサービスゾーンはパブリックとプライベートの両ゾーンと同じくらいの距離にあるのが、望ましいところです。
ただ、仮に平面と立体が少しずれていても、そこは建築家が上手く空きスペースにしたり、あるいは吹抜スペースにしたりとちょっとしたアイデアでより魅力的なスペースにしてくれるはずです。むしろ、建て主は家族の成長、あるいは家族構成の変化など予想できるのであれば、この段階で考えておくことです。なぜならちょっとしたリフォームで、リビングの隣に畳スペースや家事室などをつくることも可能だからです。失敗しない様にとあまり固定的に考えると、可変性がなくなりますので注意しましょう。
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