『タイムトラベラー』
6月7~11日=IMAホール【見どころ】
『タイムトラベラー』
第一弾に続きハマナカトオルさんが作・演出を、宮崎誠さんが作曲・編曲・音楽監督を担当。主人公の妻リンジー役の沼尾みゆきさん、光枝明彦さんら実力派たちが共演し、畠中さん演じるジョンが体験する中世から20世紀に至るまでのいくつもの時代への旅を、時にユーモラスに、時にドラマティックに魅せてくれそうです。
【主人公の妻リンジー役・沼尾みゆきさん、作曲・宮崎誠さん(崎は旧字/たつさき 以下同)インタビュー】
楽しかったり切なかったり、面白かったり。様々な時代に旅するミュージカルです
(左から)沼尾みゆき 栃木県出身。東京芸大卒業後、劇団四季に入団。『オペラ座の怪人』『ウィキッド』『ミュージカル李香蘭』等のヒロインを演じ、退団後は『ひめゆり』等に出演。宮崎誠 東京都出身。キーボード奏者、作曲家、音楽監督として、劇団四季『ソング&ダンス』シリーズ編曲、『結婚行進曲』作曲、SMAPやCHEMISTRYなどアーティストへの楽曲提供も行う。(C)Marino Matsushima
沼尾みゆきさん「私は2014年の『ひめゆり』以来ですね」
宮崎誠さん「僕は16年のブロードウェイ・ミュージカル『ブルックリン』の音楽監督をさせていただいたのが最初で、次が昨年、作曲と音楽監督を担当した『結婚行進曲』です」
――『タイムトラベラー』の台本を読まれて、最初の印象は?
沼尾「はじめは真面目な感じのお話かと思って読み進めていったら、次第にコミカルな要素も出てきて楽しくなってきました。私自身、コミカルなものは大好きなので、(演じるにあたって)猫をかぶらなくても大丈夫そうだな、と(笑)」
宮崎「前作の『結婚行進曲』は“結婚相談所あるある”と相談所所長の実人生を組み合わせたコメディでしたが、今回はイギリスが舞台で、シェイクスピアやタイタニック、ノルマンディー上陸作戦などの時代が登場するので、中世の音楽やスコットランド民謡風の旋律、そして現代の場面ではブロードウェイ・ミュージカル風の楽曲など、バラエティに富んだ曲が書けるな、と感じましたね。
台本をいただいた順に作曲してゆくなかで、最初は単純に楽しんでいましたが、短期間で数十曲書いていると、どうしても“これ、あそこで使ったモチーフだな”と言うものが出てきまして(笑)。あと数曲書く予定なので、あと二がんばりぐらいしなくちゃ、というところです。」
――“タイムトラベル”という夢のあるテーマの本作ですが、お二人はもしタイムトラベルが出来たら、行ってみたい時代はありますか?
沼尾「以前、台湾の田舎の方に行った時に、馴染みがあるような懐かしさを感じて、もしかして私は前世、ここにいたんじゃないかなと妄想を楽しんだことがありました。もしタイムマシンがあったら、それが本当だったか、確かめに行ってみたいですね」
宮崎「僕は逆に、未来に行ってみたいですね。子供のころに観た『ドラえもん』のような世界になってるのかな、とか。過去の、歴史上の謎とされていることを確認しに行ってみたい気もしますが、知らないうちが花という気もします(笑)」
――今回、このテーマがどこから生まれたか、お聞きになっていらっしゃいますか?
宮崎「有名人の方々のご先祖を辿る、NHKの『ファミリー・ヒストリー』という番組がインスピレーションになっているというのは聞いたことがあります。そして歴史的エピソードが豊富な英国を舞台にすることになった、と」
沼尾「(主演の)畠中洋さんに、イギリスのかっこいい衣裳を着てほしいということもあったそうです(笑)」
――沼尾さんが演じるのは、その畠中さんが演じる科学者の妻、リンジー。どんな女性でしょうか?
沼尾「リンジーは全面的にご主人さまを応援して、彼に尽くすし、それを自分でも楽しんでいて、“調べておいたの”と自分もわくわくしながら手伝っている。すごく仲のいい、友達のような夫婦をイメージしています。演出の過程で変わるかもしれませんが、今のところ、(演出家から)“いい夫婦になると思います”と言われています。夫の(タイムトラベルの)体験談を聞いているだけでなく、自分も“行きたい!”と言いだして、一緒に時空を超えていったりもするんですよ」
――現在、お稽古はどんな段階でしょうか。
沼尾「今はステージングと振付をつけていただいている段階で、これから深くなっていくと思います」
宮崎「(今回のキャストには)オリジナルの新作に慣れている方が多いので、積極的に皆さん“こんなのはどう?”とアイディアを出されていますね。一つ言われたことを10に膨らましてゆくことをご存知の皆さんです」
――音楽監督として、宮崎さんは稽古場に張り付いていらっしゃる感じでしょうか。
宮崎「そういう現場もありますが、今回は音楽監督助手が二人いらっしゃるので、僕は自宅で作曲をしていることが多いですね。ハマナカトオルさんの作品は、台本が素晴らしいんです。キャスト用とスタッフ用の台本があるのですが、後者のほうには“イントロが8秒くらい、わかりやすい感じで始まって、間奏が30秒、転調して盛り上がり、最後は拍手が来るように……”と、とても明確なリクエストが書かれています。
オリジナル・ミュージカルだと、例えば指示無く“イントロ”とだけ書かれていることが多いのですが、1分のつもりで書くのと15秒のつもりで書くのとでは大きく異なり、例えば15秒で作るにしても、その中で起伏を設けます。1分になったからといって、その15秒のモチーフを4回繰り返せばいいということにはなりません。そういった意味で、ハマナカさんの台本は迷いなく作曲が出来るんです。」
――例えばフランク・ワイルドホーンは、ブロードウェイ用に書いた作品が日本で上演される際に、歌う方の声質に合わせてメロディを書き換えるそうですが、宮崎さんの場合は?
宮崎「稽古を聴いて、コーラスを変えたりといったことはあります。また、今回はハマナカさんの方から沼尾さんのナンバーについて、“ラストはロングトーン。沼尾さんの高音を聴かせてください”とリクエストいただいているのが2曲あります。稽古を見ながら、試させていただいているところです」
沼尾「宮崎さんの楽曲はキャッチ―で、とても歌いやすいです。なかなか覚えられない楽曲もある中で、宮崎さんの曲は3,4回さらえば覚えられますね。皆さんがご存知の民謡がベースになって、そこに宮崎オリジナルが織り交ぜられていたり……。口ずさみながら帰っていただけるような曲もあって、すごくいいと思います」
――特に苦労されたのは?
宮崎「次に作る曲が、10分ぐらいのナンバーで、1曲としてはハマナカ先生史上、最長の曲ではないか、との噂でして。タイタニックが転覆して以降の、いくつものシーンが繋がっていて、イメージで言えば『レ・ミゼラブル』のような、歌で芝居が進行してゆくという感じですね。苦労しそうですが、一生懸命自分を奮い立たせています(笑)」
――どんな舞台に仕上がりそうでしょうか?
沼尾「主人公のジョンが、“自分がどうやって生まれてきたか知りたい”という願いのもとタイムトラベルをしてゆき、一つ一つ“そうだったのか”と明白になってゆく。各時代に、切なかったり楽しかったり、すごく面白い部分あったりといろいろなカラーで展開してゆくので、絶対飽きないし、考えさせる部分もあるかと思います。展開もスピーディーで、私たちも、お客様にとっても楽しい舞台になると思います。開幕までにリンジーさんを(体の中に)しっかり入れ、良き妻として演じられればと思っています」
宮崎「ある家族の歴史物語を御覧いただくなかで、“自分の家族はどうだったのかな”とお客様に思ってもらえるかなと思います。僕の課題としては、現在、1幕頭と2幕頭以外は今のところ全部異なる曲で、20曲ぐらい違う曲を聴き続けるのはお客様にとっても情報量が多すぎると思うので、例えばBGMであったり、こっそりしみこませるようなテーマで、一つ、(音楽的に)筋を通せたらと考えています。ずっと聴き進めるなかで、“このメロディ、聴いたな”と感じていただいたり、音楽の世界観がお客様にも伝わるといいなと思いますね」
――プロフィールについても少しお尋ねしたいのですが、お二人のミュージカルとの出会いは?
沼尾「私は宇都宮育ちでミュージカルは全く観たことがなく、大学1年の時に、青山劇場で(劇団四季の)『夢から醒めた夢』を観たのが最初です。そしてその少し後に、(大学の恩師である)平野忠彦先生が『アニー』のウォーバックス役を勤められていて、舞台袖から見学するチャンスをいただいたんですね。グレースが早替えのためにはけてこられる様子に、“かっこいい!”とわくわくしました。
当時はまだ音楽大学ではミュージカルは敬遠されている空気があって、好きな人はサークルでこっそりやっていましたが、平野先生は“ミュージカルだって素晴らしいものだし、自分に合うものならやっていいじゃないか”とおっしゃり、ご自身もワーグナーのオペラにも出れば『アニー』にも出る、という方でした。私もミュージカルに触れて“これは面白い!”と思い続け、卒業後、劇団四季に入団。
けれども入ってからダンスを始めたので、はじめは大変でしたね(笑)。『オペラ座の怪人』で(バレエ・ダンサーの)クリスティーヌ・ダーエ役をいただいた時は、3人の先輩に囲まれて特訓していただきましたが、“スーパー・亀”なのでなかなかできず(笑)、時間がかかりました」
宮崎「僕は、エピソード1としては、エレクトーンの師匠が奏者として出演していた岡幸二郎さん主演のミュージカルで、次回公演キャストオーディションのチラシを見つけて、演奏者として立候補させていただいたのがはじめ。エピソード2としては、やはり『夢から醒めた夢』をテレビで見て、三木たかしさんの楽曲とキャストの保坂知寿さん、光枝明彦さんに衝撃を受け、この方たちと仕事をしてみたい!と思ったんです。1年後に団員の方を通して、劇団四季の音楽部にご紹介いただき、『南十字星』で演奏をすることになりました。
それからいろいろな作品に演奏・編曲で参加することになり、三木さんとも(劇団四季ではないですが)『愛と青春の宝塚』という作品でご一緒させていただき、出来立ての譜面がファックスで送られてきたのには感動しました。この世界に飛び込んで良かったと思っています」
――沼尾さんは劇団で様々な演目に出演されましたが、やはり日本版オリジナル・キャストとしてグリンダを演じた『ウィキッド』が強く印象に残っています。
沼尾「思い出深いですね。劇団四季のレパートリーにはそれまで、女性でああいった三枚目的な役が無かったので、どこまでやればいいのか、前例が無く、迷いました。アメリカからいらっしゃったスーパーバイザーさんが“あなたが思うようにやっていいのよ”と言ってくれたり、みんな(共演者)からもアドバイスをもらって試行錯誤するうち、“なんとか見えてきたかも!”と思えるようになりました」
――退団後は『ひめゆり』等で活躍されるいっぽう、昨年はママになられたのですね。
沼尾「はい、マイペースでやっています(笑)。子供は先月、1歳を迎えましたが、保育園が決まるまでは、ご自宅で赤ちゃんを見てくれる簡易保育所のようなところに片道45分かけて預けに行ってから稽古に通っていて、ギリギリ綱渡りの生活でした。劇団四季も相当大変だと思っていましたが、それ以上に大変なことが世の中にあるんだなと思いましたね(笑)」
――表現者として、どんなビジョンをお持ちですか?
沼尾「いい感じで年を重ねてきましたし、子供も生まれたりといった変化をうまく取り入れて、経験しないとどうしても出せないこと、この年になってわかってきたことが滲み出る役者になれたら、と思っています。(今夏、再び婦長役を演じる)『ひめゆり』でしたら、子供たちに対する愛情表現に生かせるといいですね」
――宮崎さん、沼尾さん主演で、母の愛を描くミュージカルなど、いかがでしょうか?(笑)
宮崎「いいですねぇ。僕のビジョンとしては、作品を書いたり弾いたりしつつ、僕がかつて『夢から醒めた夢』で三木たかしさんに憧れたように、若い世代がミュージカルに興味をもつきっかけになる存在になれたらと思っています。
例えば今回、出演者のオーディション書類を見ていたら、(既に出演が決まっていた)沼尾みゆきさんに憧れてオーディションを受験します、と書き込んでいる方が何人もいらして、沼尾さんの存在によって作品にいい人材が集まってきている。僕も誰かのきっかけになって、ミュージカル界の戦力になってくれる人がどんどん増えてきてくれたらと思います」
【観劇レポート】
静寂の中で幕が上がり、人々が登場。寄贈された屋敷を見学に訪れた彼らは、かつての持ち主、ジョン・テイラーはどこへ行ってしまったのかと不思議がる。唯一事情を知るジムによると、理論物理学者だったジョンは自分の家系図にいくつかの謎を発見、タイムマシンを開発してそれらを確かめに行ったという。そこでジョンが知った、驚くべき真実とは……。
“自分の先祖はどんな人々だったのだろう”という普遍的な疑問を、“タイムマシン”によって叶える本作。ジョンが実際に旅してみると、15世紀のご先祖が突然貴族に取り立てられた事情や、“あの”シェイクスピアとご先祖との思いがけない関わり、そしてタイタニック号に乗っていた筈の曽祖父が乗船記録に名を連ねていなかった理由が明らかになり、観客はジョン・テイラーとともに感嘆したり、笑ったり。そしてジョンが最も知りたかった自分の出生の秘密が判明し、場内はしんみり。タイムマシンに似つかわしい勇壮なフレーズを随所に挟みつつ、カラフルに展開する宮崎誠さん(崎は旧字の“タツサキ”)の音楽に彩られ、“わくわく感”と分かりやすさを持続しながら物語は展開します。
主人公ジョン・テイラーを演じるのは畠中洋さん。“真実を知りたい”という願望のもと、未知の世界に臆せず飛び込んでゆく人物を力強く、時にお茶目に体現。その妻リンジー役の沼尾みゆきさんは、夫のために徹底的なリサーチを行い、遂には共にタイタニックに乗り込む行動的な女性を軽やかに演じ、もう一役、終盤に重要なキャラクターも担当、愛情深い表現で涙を誘います。またタイタニック号の乗客役など数役をこなす光枝明彦さんが味わいのある美声を聴かせ、“ちょっと情けない”ご先祖、スティーヴンを演じる麻田キョウヤさんには“悲喜劇”を心得たカラリとした味わいが。序盤で幼少期のジョンに冷たく当たるクラスメート役やタイタニック号の三等客役などで活躍する子役の皆さんも、舞台の奥行きに大きく貢献しています。
その幕切れ、“ジョン・テイラーの行き先”についてジムが語る台詞は、同席する大学関係者たちに向けられたものですが、それを聞く観客の中には、未来に対する希望と“責任”に思いを馳せる方も少なくないかも。ポジティブな“気”とともに帰途につける作品です。
*次ページで『銀河鉄道999 GALAXY OPERA』をご紹介します!
『銀河鉄道999 GALAXY OPERA』
【見どころ】『銀河鉄道999 GALAXY OPERA』(C)松本零士・東映アニメーション(C)舞台『銀河鉄道999』実行委員会2018
今回は宝塚歌劇団出身の児玉明子さんが演出を、石丸さち子さん(『マタ・ハリ』演出)が作詞を担当。テーマ曲も担当する中川晃教さん(鉄郎)ほか、凰稀かなめさん(クイーン・エメラルダス)、平方元基さん(キャプテン・ハーロック)、入野自由さん(大山トチロー)、雅原慶さん(元・劇団四季)ら、ミュージカル・ファンには見逃せないキャスティングで、様々な星での出会いを通して少年が成長し、命の尊さを知ってゆく過程が描かれます。
ダイナミックな中にも独特の詩情と哀しみの漂う原作が、舞台という媒体ではどのように表現されるか。最先端の映像演出(ムーチョ村松さん)ともコラボしての成果が期待される企画です。
【観劇レポート】
『銀河鉄道999 GALAXY OPERA』(C)Marino Matsushima
『銀河鉄道999 GALAXY OPERA』(C)Marino Matsushima
『銀河鉄道999 GALAXY OPERA』(C)Marino Matsushima
『銀河鉄道999 GALAXY OPERA』(C)Marino Matsushima
『銀河鉄道999 GALAXY OPERA』(C)Marino Matsushima
『銀河鉄道999 GALAXY OPERA』(C)Marino Matsushima
『銀河鉄道999 GALAXY OPERA』(C)Marino Matsushima
『銀河鉄道999 GALAXY OPERA』(C)Marino Matsushima
『銀河鉄道999 GALAXY OPERA』(C)Marino Matsushima
【演出・児玉明子さんインタビュー】
児玉明子 東京都出身。97年に宝塚歌劇団に入団し、翌年演出家デビュー。2010年、文化庁の新進芸術家海外研修制度でモントリオールに留学。13年に宝塚を退団、『NARUTO』『ミュージカル 黒執事-Tango on the Campania-』『アメリ』等を演出している。(C)Marino Matsushima
「子供の頃は兄とアニメ版を観て、ゴダイゴの主題歌を歌ったり、年上のいとこの家に行くと、家にあった原作漫画を読んでいたりしましたね」
――長大な原作を、どのように舞台化していますか?
『銀河鉄道999 GALAXY OPERA』(C)松本零士・東映アニメーション(C)舞台『銀河鉄道999』実行委員会2018
――最近、児玉さんが演出された『アメリ』のように、俳優の演技と映像がシンクロするイメージでしょうか?
「『アメリ』は絵本を見るようなあたたかい風合いの作品でしたが、今回は(宇宙が舞台ということで)無限の奥行きの感じられる舞台になるかと思います」
――お稽古の手ごたえはいかがでしょうか?
『銀河鉄道999 GALAXY OPERA』(C)松本零士・東映アニメーション(C)舞台『銀河鉄道999』実行委員会2018
――どんな舞台に仕上がりそうでしょうか?
『銀河鉄道999 GALAXY OPERA』(C)松本零士・東映アニメーション(C)舞台『銀河鉄道999』実行委員会2018
――プロフィールについても少しうかがいたいのですが、児玉さんは大学では法学部にいらっしゃったのですよね。どのように演劇の道に入られたのですか?
「もともと書くことが好きで、文学部志望でしたが、家族と相談して法学部に進みました。在学中に映画のシナリオ教室、次に日本演劇協会の劇作塾で学び、後者で北条秀司さんのお弟子さんの佐々木武観さんに卒業制作を読んでいただいたのがきっかけで弟子にしてくださり、3年ほど台本を書いては赤ペンを入れていただくということが続きました。てにおはであるとか、“だ”のような不要な部分を削除されることが多かったですね。
大学卒業にあたり、家族に安心してもらおうと、毎月新作を送り出しているし、女性たちが世界に誇れる文化を発信している劇団ということで、宝塚歌劇団に入団しました」
――宝塚在籍中にモントリオールに留学されたのはなぜでしょうか?
「宝塚に入ってしばらくして、ある日友人と山登りをしていたら、“そろそろ留学したら?行くとしたらどこがいい?”と聞かれて、(ケベック出身の世界的な演出家)ロベール・ルパージュが好きなので“カナダかな”と何気なく言ったら、あれよあれよという間に(文化庁の派遣事業に)応募することになりまして。
(ケベックの都市である)モントリオールに着いてみると、こぢんまりとした街で、はじめはここに劇場があるのか、と不安に思いましたが、実際は演劇がものすごく盛んでした。舞台ってこういうもの、という限界が無く、例えばサーカスを観に行っても一か所で観るのではなく、移動してパフォーマーが肉を食べている光景を眺めさせられたりと、パフォーマンス性の強いものが多くてとても刺激的でした」
――どんな表現者を目指していらっしゃいますか?
「今回、『銀河鉄道999』に取り組む中で、そのことについて考えています。これまでは、例えば2.5次元の作品であれば原作を舞台でどう表現するか、がポイントでしたが、その先まで行ってみたい。何を表現したいのか、をもっと追求していけたらと思っています」