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試用期間中に解雇される?正当な解雇理由と判例

試用期間とは、いわゆる「お試し期間」として、新入社員の業務遂行状況を判断して本採用をするかどうかを会社が見定めること。試用期間中に解雇された場合には、争うことはできないのか。試用期間中の解雇はどのような場合に有効なのかを解説していきます。

鬼沢 健士

執筆者:鬼沢 健士

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 試用期間とは?

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試用期間とは


会社が社員を採用するとき、筆記試験や面接試験等の採用選考を行い、社員としての適格性があるかどうかの判断をします。しかし、それらで得られる情報には限界があり、社員の適格性が本当にあるかどうかが分かりません。

そこで入社後、いわゆる「お試し期間」として、新入社員の業務遂行状況を判断して本採用をするかどうかを会社が見定めることがあります。これを試用期間です。企業にとっては新入社員の能力を測ったり、仕事に慣れてもらうなどのメリットがあり、多くの企業が試用期間制度を採用しています。

試用期間の法的性質は一般的に、試用期間中に社員として不適格であると使用者が判断した場合には解約できる旨の特約が留保されていると解されています。わかりにくいですが、たとえ試用期間であっても法律的にはちゃんと雇用契約は成立しています。
 

試用期間中の解雇

試用期間中であっても労務契約は成立しています。したがって、試用期間中であっても無条件に解雇できるわけではありません。客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当として是認できるものであることが必要です。相当でないと判断された場合には、権利の濫用したものとして解雇は無効です(労働契約法16条)。判例では、
 
企業者が、採用決定後における調査の結果により、または試用中の勤務状況等により、当初知ることができず、また知ることが期待できないような事実を知るに至った場合において、そのような事実に照らしその者を引き続き当該企業に雇用しておくのが適当でないと判断することが、上記解約権留保の趣旨、目的に徴して、客観的に相当であると認められる場合には、さきに留保した解約権を行使することができるが、その程度に至らない場合には、これを行使することができないと解すべきである(三菱樹脂事件最高裁大法廷昭48.12.12判決)

とされました。わかりやすく言い換えると、試用期間をやってみて初めてわかったことで、雇用継続することが適当ではない理由でなければ解雇できないということです。イメージとしては、試用期間ではない解雇に比べて少し解雇が認められやすいとお考えください。

試用期間中の解雇で多い理由としては勤務態度不良や勤務成績不良、業務遂行能力の不足、非協調性、経歴詐称などがあります。企業の中には、試用期間中の解雇について誤った認識を持っているところもあり、安易かつ軽率に解雇をするところも見られます。試用期間だから解雇されても文句が言えないというわけではありません。試用期間中の解雇について疑問がある場合、弁護士などの専門家に相談して、効力を争うことを検討してみてください。
 

争い方

試用期間中の解雇で不当解雇で争うには主に2つの方法が考えられます。それは裁判と労働審判です。どちらにもメリットとデメリットがありますのでそれらを考慮のうえで選びます。もっとも、試用期間は入社直後であることが多く、争って勝ったとしてもそのまま合意退職するケースがとても多いです。具体的には、給与数か月分を支払われる代わりに、そのまま合意退職するということになります。
 

争うポイント

まさか試用期間中に解雇されるとは思わないでしょうから、準備が難しいことは確かです。求人広告、面談時の様子、試用期間中の勤怠などが重要なポイントになってくるでしょう。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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