高額の延滞料を請求された場合

久しぶりに近所のレンタルショップに行ったときのこと。私がDVDをレンタルしようとカウンターに会員証を差し出したら、店員さんに「返却されていないDVDが3本ございます。本日はこのDVDをお貸しすることはできません」と言われてしまいました。そういえば3ヶ月前に映画を3本借りていたのですが、仕事が忙しくて返しに行くのを忘れていたようです。

すぐに家に戻ってDVDを返却したところ、店員さんに「返却期限から本日まで90日延滞されています。延滞料が1日につき300円、3本延滞されていましたので、合計8万1,000円になります」と言われてしまいました。私は延滞料を全額払わなければならないのでしょうか?

会員規約によれば支払義務あり

私たちがDVD等を借りる行為は、法的には、お客とレンタルショップとの間の賃貸借契約の締結行為にあたります(民法601条以下)。レンタルショップ店舗のカウンターには、通常「延滞料1日につき○円」と掲げられていますが、このような延滞料の定めは、民法上、DVDの返却が遅れたことによって生じた損害額等を事前に定めたものとされています(民法420条1項、3項)。DVD等をレンタルする前提として、私たちは、そのレンタルショップの会員規約等に同意した上でレンタルショップの会員になります。

そして、そのレンタルショップの会員規約には、延滞料について「返却予定日経過後にレンタルされた商品を返却した場合は、所定の追加料金をいただきます」との定めが通常記載されています。このような記載は先ほど説明したように、損害額を事前に定めたものですので、その会員規約に同意して会員になった以上、延滞料の支払いについて、「こんな延滞料支払う約束なんてしたつもりはない」と言い切ることは法律上難しいといえます。

したがって、延滞料について会員規約で定められていた場合には、この金額を支払わなければならないのが原則です。では、冒頭の相談のケースは全額支払わないといけないのでしょうか?

消費者契約法によれば、全額払う必要はなし?

通常DVDは定価5,000円前後で販売されています。レンタルの場合はDVDを返却しなければならない上に、定価の5倍以上の金額を支払わなければならない……。これに相談者が納得いかないというのは至極まっとうな意見のように思えます。

消費者契約法では、業者と消費者との間の契約に関して民法の原則が修正されています。本件でも、延滞料についての定めが「民法、商法その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって……民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」場合には、その延滞料の規定のうち消費者の利益を一方的に害する部分について無効となります(消費者契約法10条)。

民法第1条第2項に規定する基本原則とは、信義誠実の原則と呼ばれるもので、言い換えれば、権利の行使や義務の履行においては、相手の信頼を裏切らないように誠意を持って行動しなければならない、という原則です。そのような原則に反し、消費者つまりレンタルショップの会員の利益を一方的に害する部分については無効となるというのがこの条文の意味するところです。

本件でも、上限なく延滞料が発生すると、たとえ1日あたりの延滞料が高額でなくとも、長期間にわたって延滞することで延滞料の総額は非常に高額なものとなると考えられるため、消費者に過大な不利益を一方的に被らせることになります。そのため、過大な損害部分については、消費者契約法第10条により無効となります。

さらに消費者契約法第9条では、消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超える部分についてはその部分を無効とする、と規定しています。つまり、消費者契約法第9条に基づき、非常に高額な延滞料は通常生ずべき平均的な損害を超えるためその部分は無効である、と主張することも考えられます。いずれにしても、過大な損害部分については支払う必要はないということになります。では、支払うべき金額と、交渉の仕方はどうなるのでしょうか?

平均的な損害とは?

消費者契約法第9条により無効だと主張する場合も、消費者契約法第10条により無効だと主張する場合も、「無効といえる部分」、言い換えれば「支払わなくてよい部分」とは、消費者契約法第9条の「平均的な損害を超える部分」になりそうです。それでは、DVDレンタルの返却期限が過ぎた場合に、レンタルショップに生ずべき平均的な損害とはどのように算出されるのでしょうか。まず、

  • DVD本体の価格が基準

とされるべきでしょう。次に、

  • そのDVDレンタル料金、延滞期間及び従前のレンタルの状況などを加味して、本来の返却期限までに返却されていれば他のお客にレンタルできた場合の儲け

についても通常生ずべき平均的な損害として考えることも可能かもしれません。例えば、あるDVDが品薄で市場に出回らないほど人気があり、レンタルするのにも常に予約待ち状態が続いているような場合には、レンタルショップは返却がなかったために、他の顧客にレンタルさせる機会を逃してしまいます。この場合にはレンタルショップは多大な損害を被ることになり、通常生ずべき平均的な損害も高額になると予想されます。

そのほか、返却されなかったためにかかった費用、例えば手紙でDVDディスクの返還催促をした場合の切手代等などについても通常生ずべき平均的な損害として加味することも考えられます。DVDレンタルの返却期限が過ぎたためにレンタルショップに生じた平均的な損害については、まずはDVD本体の価格が基準になりますが、具体的事案によっては、当該DVDのレンタル実績等も加味して考えることができるかもしれません。

延滞金を支払いたくない場合の対抗手段

冒頭のケースでは、どう動けばよいでしょうか?

■延滞金の一部支払を提案する
まずは、延滞金の一部支払いを提案してみましょう。「DVDディスク本体価格を大幅に超過した延滞料が発生しているような場合には、通常生ずべき平均的な損害を超えており、その超過部分についての合意は消費者契約法10条に反して無効です」と述べ、和解の提案するのです。この場合には、アルバイト店員ではなく、決済権限をもつ責任者と交渉すべきでしょう。しかしながら、この方法は、相手方次第で交渉が決裂することもあります。

■延滞金の一部について供託する
そこで次に考えうる方法として、延滞金の一部について供託するという方法があります(弁済供託:民法第494条前段)。これは、話し合いがまとまらず、ショップ側が延滞料の一部の受取りを拒否した場合にとりうる手段です。いくら金額が大きすぎるとはいってもまったく延滞料を払わないわけにはいきません。

通常生ずべき平均的な損害の部分についてはきちんと支払いを試み、相手方が受け取りを拒否した後供託を行うことにより、相談者が支払わなければならない通常生ずべき平均的な損害の部分について支払いが遅れたとの責任を免れることができます。

■1年以上経過している遅延料は、時効を主張
相手方の請求からさかのぼって1年以上経過している遅延料については、その超えた部分について時効によって消滅したことを主張すべきでしょう(民法174条5号、145条)。最後に、当事者間での話し合いにより解決できない場合には、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

おわりに

以上のように、通常生ずべき平均的な損害を超える部分については、レンタル延滞料を支払う必要はありません。しかしながら、平均的損害を超えるか否か、何を持ってそれを判断するかは非常に難しい問題です。また、その後もその店を利用したいのに、トラブル客としてブラックリストにのり、使えなくなってしまうことも考えられます。われわれ消費者も、無用な紛争を事前に避けるため、返却予定期限を守って返却し、楽しいレンタルライフをエンジョイしたいものですね。

【関連記事】
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。