セクシュアルマイノリティ・同性愛

性の多様性を描くクィア・ドラマの新時代が到来(6ページ目)

2018年は、『弟の夫』『女子的生活』『隣の家族は青く見える』『おっさんずラブ』といった素晴らしいドラマが相次いで放送され、話題を呼び、好評を博しました。そこで今回は、性の多様性を描いたクィア・ドラマの過去、現在、未来という切り口で、お届けしてみたいと思います。

後藤 純一

執筆者:後藤 純一

同性愛ガイド

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2018年、クィア・ドラマの現在形

1993年がゲイドラマ元年と申し上げましたが、2018年は上半期だけでも前述の5作品が立て続けに放送されたわけで、クィア・ドラマの黄金時代の到来を告げるような、記念碑的な年になったことは間違いありません。

ここに来て急に、日本のテレビドラマ界が一斉にアライな方向へと大きく舵を切り、金メダル級の名作を次々に世に送り出しているのは何事でしょうか。いったい何がどうしてそうなったのか、皆目見当がつきませんが、「機が熟した」と言いますか、「今こそLGBTだ、世間もそういう物語を求めているはずだ」と思った方が、あちこちで一斉に動いたのかもしれないですね。

性の多様性について考えたこともなかった性的マジョリティな人々には、にわかには理解できないであろう「性のありよう」を、堂々とドラマでフィーチャーし、「ヘンタイだ!」とか言っちゃう人もいる現状を描いた上で、葛藤を経て、「理解はできなくても歩み寄った」「慣れた」「一緒にやっていけると思った」という希望が見えてくる様子を描いたのが2018年のクィア・ドラマの現在形と言えます。

2017年にはテレビ番組(バラエティやCM)で炎上騒ぎが続いていたことを考えると、こうしたドラマ作品が「LGBTを侮辱してる」などと言われることなく、「差別的だと言われるかもしれない」と変に腫れ物扱いすることもなく、笑いあり涙ありの見事なエンターテイメントとして世の中に出てきたのは、よく考えるとスゴいことです。2018年のドラマの制作現場には、セクシュアルマイノリティへの理解や配慮が行き届いていたことの証左です。バラエティとドラマでは違った風土であるとはいえ、そこは時代のなせるわざと言いますか、まさに配慮が必要であるという意識が短期間で浸透したことを物語っていると思います。

2000年代以前までに描かれがちだった、中途半端な女装をして悲哀を感じさせるゲイバーのママだったり、過剰に性的な存在だったり、犯罪者だったり、悲劇的な死を迎えたり……といったステレオタイプから脱し、ようやく今、普通にどこにでもいて、きちんと仕事をしている社会の一員として、好感の持てる一人の人間として描かれるようになりました。それだけでも大きな進歩であり、「いい時代になったなぁ」と感慨を覚えます。ブラボー!と拍手したい気持ちです。

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