最新のディーゼルターボをパサートに搭載
20年ぶりにディーゼルエンジン仕様を日本に上陸させたフォルクスワーゲン。日本では、2015年の排気ガス不正問題、いわゆるディーゼルゲートの当該車種は1台も正規輸入されていなかったが、その後、輸入車ナンバー1ブランドの座をメルセデス・ベンツに譲っている。
ディーゼルゲート以降、世界的なディーゼルエンジン離れが進み、環境汚染が深刻な欧州では都市部のディーゼル規制が進む流れになっている。それでもフォルクスワーゲンは、2017年8月までの実績として、ヨーロッパ全体で約46%、ドイツ本国では約45%だという。
一方の日本では、欧州の都市部ほどはディーゼルエンジン車による環境汚染について神経質になっていない。東京などの都市部では、石原慎太郎元知事が進めたディーゼルエンジンの排ガス規制も効果を発揮してきたのだろう。日本では、輸入車メーカーの約2割がディーゼルエンジンになっている。
各国の規制をクリアした最新ディーゼルエンジン
セダンのパサートTDIは、全長4785×全幅1830×全高1465~1470mm。ワゴンのパサートヴァリアントTDIは、全長4775×全幅1830×全高1485~1510mm。ホイールベースはセダン、ワゴンともに2790mm。ワゴンの方がセダンよりも全長が10mm短い
さて、前置きが長くなったが、ディーゼルエンジン仕様が追加されたフォルクスワーゲンのパサート/パサートヴァリアントは、最新のユーロ6、日本のポスト新長期排ガス規制をクリアしている。とはいえ、住宅街などでの不必要なアイドリングはオーナーのマナーとして避けたいところ。
パサートTDIには、コモンレール式燃料噴射やDPF(ディーゼルパティキュレートフィルター)、SCR(選択触媒還元システム)、EGR(排気再循環)システムなどを搭載。ほかの某国産メーカーのエンジニアからすると、「贅沢なほどの後処理システム」を積んでいるという。もちろん、それはパサート/パサートヴァリアントという同社のトップモデルだからだろうが。
高速道路でありがたみを実感
最高出力190ps/3500-4000rpm、最大トルク400Nm/1900-3300rpmという2.0L直列4気筒ディーゼルターボは、セダンが1560kg、ヴァリアントが1610kgという車両重量に対して、全く不足なく加速させていく。
それは、急な登り坂はもちろん、高速道路の巡行でもそうで、とくに高速道路で巡行する際はどこから踏んでも力強い加速感が得られる。ただし、湧き出るようなトルク感ではなく、踏んだ分だけストレスが少なく加速するという感じで、また注意して乗るとターボラグも感知できる。
それでも、スムーズかつ反応のいい6速DSG(デュアルクラッチトランスミッション)による変速も利いていて、ストレスを感じさせる加速フィールではない。
ディーゼルエンジン仕様の利点は?
また、同じ2.0Lのガソリンターボも220ps/4500-6200rpm、350Nm/1500-4400rpmという力強い動力性能を確保するから、2.0L同士の比較だとディーゼルの利点は、分厚い最大トルク、20.6km/Lという燃費(2.0Lガソリンは15.6km/L)、そしてプレミアムガソリンと軽油の燃料代の差ということになる。
先述したように、ディーゼルエンジンの利点は、高速道路を使ったロングドライブと航続可能距離の長さ。多走行という人には、魅力的な選択肢になるはずだが、逆に街乗り中心であれば、1.4Lガソリン(150ps/5000-6000rpm、250Nm/1500-3500rpm、20.4km/L)で不足はないだろうし、2.0Lガソリンならスポーティで切れ味鋭い走り、加速の立ち上がり感が得られる。
こう考えると、ディーゼルエンジン仕様のパサート/パサートヴァリアントTDIは、長距離走行、多走行になる人の指名買いが多くなりそう。
こうしたユーザーにとっては、35万円高というイニシャルコストもランニングコストで回収できるか、という点はひとまず置いておいても、高速道路のロングドライブ時にありがたみを感じるのではないだろうか。