浴衣を選べる温泉宿が増えている!
今や宿の浴衣も楽しみのひとつ
温泉の浴衣といえば、以前は白地に幾何学模様……など、どちらかといえば味気ないものが多かったのですが、最近は女性客や外国人観光客へのサービスとして、何種類かの浴衣の中から自分の好きな色柄の浴衣を選べる特典がある宿も増えてきました。中にはそれを目当てに宿を選ぶという感度の高い人もいます。
でも、宿の温泉浴衣って、どうも上手く着られない!と思っている人が多いのではないでしょうか? 今回は、そんなあなたに宿の浴衣を素敵に着こなすテクニックをご紹介します。
温泉浴衣がなんとなくキマらない理由は?
宿の浴衣の用途はそもそもの湯帷子に近いもの
1.おはしょりがない! 仕立て方が違う
宿の温泉浴衣と普段私達の着ている浴衣との最大の違いは、おはしょりがないこと。対丈(ついたけ。身の丈と同じに布を裁って仕立てること) という男性物の浴衣と同じ作りになっているということです(男物浴衣参照)。女性がこれを素敵に着こなすには、普段自分の浴衣とは違った着方が必要です。
そもそも宿の温泉浴衣は用途は寝巻きであり、浴衣の発祥である湯帷子(ゆかたびら)に近い用途のもの。浴室と寝室のつなぎに着る、バスローブと同様です。リラックスウエアとして着るのならモッタリした着方でも仕方がないともいえますが、実際には温泉浴衣のまま旅館の朝食会場へ行くケースや、お部屋での夕食時に彼氏や夫、親戚や友人など同室で食事をするケースもあり得るでしょう。それに、どうせならだらっとした格好よりも、少しでも素敵に着こなせれば素敵ですよね。
一つの手として、宿の方で浴衣の枚数に限りがなく数枚使うことが可能であれば、お風呂上がりに寝巻きとして使用するものと、朝食会場などちょっと部屋の外に出る時のものを使い分けるのも良いかもしれません。
2.帯一本勝負! 腰ひも・胸紐・半幅帯の用途がたった紐1本
温泉浴衣の場合ほとんどが一枚の浴衣に一本の帯紐がついています。それすなわち腰ひも・胸紐・半幅帯の用途のすべてを1本の紐帯でまかなわなくてはいけないということです。通常女性の浴衣は、腰紐、胸紐など数本の紐を使用しますが、宿の温泉浴衣は、男性の浴衣と同様、紐帯一本勝負なのです。ですから、結ぶ位置が胸紐の位置だと高すぎて裾が開くし、腰ひもの位置だと低すぎて胸元が開く……ということになって、ずり落ち、脱げ、前姿がとんでもないことになりついには「肌着やTシャツなど下に何を着ればいい?」という悩みまで発生してしまう恐れも。つまりは浴衣1枚で素敵に着るためには、帯紐の位置が最需要課題となってくるのです。
3.丈が合わない……長すぎるよりは短すぎる方を選んで!
対丈でできているということは、おはしょりで着丈を調整できません。なるべく自分に合った長さを選びたいところですが、温泉浴衣はワンサイズであることが多く、あってもS・M・Lサイズ。長すぎたり、短すぎたりすることもあります。
ですので、もしサイズに合うものがない場合には、引きずるよりは少し短めを選ぶのが正解。どうしても長すぎて引きずってしまう場合は紐帯を2本使っておはしょりを作り、調整する裏ワザで対応する手もあります。こちらの女性用浴衣の着方を参考にしてみてください。
4.補整なしで素肌に着る! だから、腰紐が安定せずに着崩れやすい
通常、浴衣を着る場合には、腰ひもの位置にタオルを1枚巻いて、腰紐を安定させるのがコツです。しかし、宿の温泉浴衣の場合はもちろん補整をしませんので、動くたびにずれてしまい、安定しません。なのでここでもやはり帯紐の位置が最大の課題となります。
可愛く着るコツは帯紐の使い方にあり!
ここまで読んでいただき、気づいた方も多いでしょう。宿の温泉浴衣を素敵に着るためには、帯紐の位置と帯紐をどう締めるか。これが一番のポイントです。まず、帯紐をする位置です。補整なし、1本で胸紐と腰紐の用途を担うという観点から、腰紐の位置より少し上、胸紐の位置より少し下のくびれたウエストの細い部分が最適。補正をしていないので一番細い部分にずれていく可能性が高いので、最初からその位置にしてしまえばいいわけです。
また、男性のように腰で結んでしまうと胸元が開いてしまいますし、ウエストより上だと脚のあたりが開きすぎて、いずれにしてもだらしのない格好となってしまいます。
そして、次に問題となるのは、結び方です。今回は、一番オーソドックスかつ、結び易い結び方をご紹介します。
温泉浴衣の帯紐の結び方
帯位置はウエスト辺りに
宿の温泉浴衣についている帯は、女性用の浴衣帯に使われる半幅帯よりも細くて柔らかく、腰紐に近いものです。いわゆる男性の浴衣帯に使われる角帯を柔らかくした感じのもののため、女性の浴衣に使う半幅帯の結び方をすることができません。
そこで、一番簡単で可愛い結び方としてオススメなのは、半幅帯の結び方「元禄結び」を前結びで行う方法です。兵児帯のように後ろで結ぶ手もありますが、温泉浴衣の場合、帯が細くて長くて柔らかいので、前で結ぶ(前結び)のが一番収まりが良いと思います。
早速、温泉浴衣におすすめの簡単な「アレンジ元禄結び」を紹介します。
「元禄結び」をアレンジした「温泉浴衣の帯紐の結び方」
ウエスト部分に帯をあて、自分から見て左手を上に重ね、ひと結びします。下の帯を結び目に近いところで半分にして輪を作り、「もろ輪結び」(ちょうちょ結び)にします。下のたれを、ちょうちょ結びの結び目の下から重ねてくぐらせ、引き抜いて再度垂らせば完成です。くわしくは、次の図解をご覧ください。1.自分から見て左手を上に重ねます
2.ひと結びします
3.下の手で輪を作ります
4.「もろ輪結び」(ちょうちょ結び)にします
5.下のたれを、結び目の下からくぐらせます
6.全部引き抜いて垂らします
もし、もっと気合いを入れてかわいく見せたいのであれば、浴衣によく使われる「半幅帯」やふわふわの柔らかい「兵児帯」を持参して自分なりのアレンジをしてしまうという方法もあります。
しじら織りの大人っぽい兵児帯(KIMONO MODERN/ガイド私物)
抜き衿で粋に着たい! 温泉浴衣の「衣紋の抜き」の作り方
宿の浴衣の女っぷりを左右する抜き衿問題
着物でも浴衣でも、女性の着姿のキモとなるのは、後ろ衿の抜け=「衣紋の抜き」です。宿の温泉浴衣の場合、そもそもの仕立てそして補正をしないことを考えると、衣紋を抜くのは少々上級の技となるかも知れません。それでも、ここで抜きを作れれば温泉浴衣の着姿の女子力がさらにアップするのは確実!
と言う事で、無理やりにでも抜きを!と言う方は、浴衣の着方を参考にゆるっと抜いてみて下さい。順番としては、宿の浴衣はおはしょりを作らないので、浴衣をはおり左右を合わせる前に背中心を後ろに引いて抜きを作ります。この際、着崩れの原因となる余分な緩みを避けるため、左右の衿を深めに合わせるのが重要です。帯紐がきちんと結べていれば、必要以上に露出してしまうことも避けられます。
以上、宿の温泉浴衣を素敵に着るコツでした。くつろぎの温泉浴衣ほど、堅苦しい補正やインナーを着ることなく素肌にさらりと着たいもの。旅行の際には、ぜひ参考にしてくださいね。