『アメリ』
5月18日~6月3日=天王洲銀河劇場、6月7~10日=森ノ宮ピロティホール【見どころ】
『アメリ』(C)Marino Matsushima
パリを舞台に、変わり者と言われる空想好きの女の子アメリが、周囲の人々を幸せにしながら自分も小さな一歩を踏み出してゆくまでを、時にユーモラス、時にシニカルに描く物語。
主人公アメリを渡辺麻友さん、彼女が出会う青年ニノ役を太田基裕さん(『手紙』『刀剣乱舞』)が演じるほか、老画家役の藤木孝さん、物乞い役の植本純米さん、カフェのオーナー役の明星真由美さんら、演劇界からミュージカル界まで、幅広い実力派が集結。この布陣でミュージカル「黒執事 -Tango on the Campania-」他を手掛けてきた児玉明子さんがどんな演出を見せるのか、期待が膨らみます。
【観劇レポート】
『アメリ』(C)Marino Matsushima
カフェで働くうち、誰かの子どもの頃の“宝箱”を発見、その持ち主を探したり、知り合いの男女の恋のキューピッド役を密かに務めたりと、“いいこと”を積み重ねる日々に喜びを見出すが、自分のことは後回し。そんなアメリを見かね、近所の老画家(藤木孝さん)は“このまま人生が終わってもいいのか?”と忠告する。そんな折、彼女は風変わりな青年ニノの落とし物を拾うのだが……。
『アメリ』(C)Marino Matsushima
彼らの動きはかなり複雑で忙しいものの、多彩なフィールド出身の彼らが芝居っ気たっぷり、そして何より楽し気に動きをこなしていることで情景に生命感が漲り、“慌ただしい世間”のなかで、人との関係がうまく築けない主人公の人物像が強く印象付けられます(演出・児玉明子さん)。
『アメリ』(C)Marino Matsushima
『アメリ』(C)Marino Matsushima
『アメリ』(C)Marino Matsushima
『アメリ』(C)Marino Matsushima
『Play a Life』
5月3日=シーメイトホール(プレビュー)、5月6~7日=シアター代官山【見どころ】
『Play a Life』
ひょんなことから、自分の指導教員が昔の恩師の夫であることを知る教育実習生。“夫”の秘密を知り、教育実習生は自分に出来ることは無いかと思いあぐねる。夫、妻、教育実習生それぞれの思いが交錯するが……。
ロビン・ウィリアムズ主演映画のタイトル『いまを生きる』をキーワードに、生と死、永遠の愛をじっくりと描く本作ですが、今回は作者・上田さんが執筆時からイメージしていたという彩吹真央さんが妻役を、そして数々の大作ミュージカルで活躍してきた岸祐二さんが夫役を演じるのが最大の話題。教育実習生役には澄んだ歌声が魅力の平川めぐみさん。これまで夫婦役には比較的若手がキャスティングされてきたなかで、今回はキャリア十分のお二人がどんな夫婦像を見せてくれるか。注目が集まります。
【観劇レポート】
『Play a Life』写真提供:Tip Tap
『Play a Life』写真提供:Tip Tap
『Play a Life』写真提供:Tip Tap
『Play a Life』写真提供:Tip Tap
終盤、彼女が夫の肩に手を置き“長い間、有難うね”という台詞のさりげない優しさに、周囲ではハンカチを取り出す観客、多数。作者が執筆時からイメージしていたキャスティングであることを知らない方にも、理想的な“妻”役と映ることでしょう。実習生役の平川さんも、フレッシュさを見せつつポイントを押さえ、クライマックスでは“だから私は毎日、今を生きているんです”の台詞を、しっかりと聴き手の胸に届けています。
『Play a Life』写真提供:Tip Tap
『たいこどんどん』
5月5~20日=紀伊國屋サザンシアター【見どころ】
『たいこどんどん』撮影:宮川舞子
吉原を訪れた大店の跡取り息子・清之助と、彼についた太鼓持ちの桃八。二人はなじみの女郎を巡って薩摩の侍たちとトラブルになり、命からがら川へととびこむが……。
はじめこそお気楽なロード・ムービー調ですが、事態は坂道を転がるように悪化、いったい二人はどうなってしまうのかと目が離せなくなる本作。今回は『HEADS UP!』再演の記憶も新しいラサール石井さんを演出に迎え、彼いわく「井上先生の初期の“枯れていない”面白さがある作品」を、「原点回帰」を意識しつつ上演。
太鼓持ちの桃八役に噺家の柳家喬太郎さん、若旦那役に(病気降板した窪塚俊介さんの代役として)江端英久さん、女郎・袖ヶ浦ほか各地のキーパーソン役にあめくみちこさんはじめ、『キューティ・ブロンド』『Suicide Party』 の武者真由さんやSET、ラッパ屋、青年座、第三エロチカ等様々な劇団出身の手練れたちが集結、おかしくも切ない物語を生き生きと描いてくれそうです。
【観劇レポート】
*若干のネタバレがありますので、未見の方はご注意ください*
『たいこどんどん』撮影:宮川舞子
『たいこどんどん』撮影:宮川舞子
個人的な悲劇が“体制”や“歴史”と結びつくラストで、人間という存在や安穏とした暮らし(言い換えれば平和)のはかなさ、頼りなさが強烈に風刺される作品であることが印象付けられますが、今回のラサール石井さん演出では“超高速”ばりの円滑な運びに重きが置かれ、場面転換はもちろん、芝居そのものもてきぱきと展開。重要な台詞のくだりに音でアクセントをつけるなどわかりやすさにも配慮、玉麻尚一さんによるジャズ風、ラップ風と様々な曲調のナンバーを取り入れ、エンタテインメント性も充分です。
『たいこどんどん』撮影:宮川舞子
また急病のためやむなく降板した窪塚俊介さんの代役として、わずか10日間の稽古期間で本番に臨んだという清之助役の江端英久さんも、気ままに生きてきた若旦那の頼りなさを巧く醸成。悲劇の発端である女郎・袖ヶ浦や、各地で桃八たちが出会うファム・ファタール(運命の女)たちを演じ分けるあめくみちこんさんはじめ、多様な劇団出身のキャストも、各役を個性豊かに、生き生きと見せてくれます。
『たいこどんどん』撮影:宮川舞子
*次ページで『ウーマン・オブ・ザ・イヤー』をご紹介します!