アドバイス1 現状のままでは老後資金が足りない
先に結論を言いますと、親御さんの介護のためのフルリタイアは、資金的にはかなりリスクがあると考えます。同居後のTotoroさんの生活費を考えてみます。仮に現在とまったく同じとだとすれば、家賃の月4万円がなくなりますから、月20万円。公的年金が支給される65歳までの13年間で計3120万円がかかります。
Totoroさんが希望されるようにフルリタイアとなれば、この生活費はすべて貯蓄からの捻出となります。今ある投資商品を現金化した場合、どの程度、含み益があるかは不明ですが、米国の証券会社にある投資信託も結果的に課税されますから、全体で10%程度は目減りするかもしれません。だとすれば、現金化した時点で4500万円。つまり、65歳のときに手持ち資金は1380万円に減っています。
65歳以降は、公的年金の受給ができます。月額5万円ですから、毎月の生活費の不足額は15万円。年間180万円となり、あくまで計算上ではありますが、8年を経たずに資金は底をつくことになるわけです。
アドバイス2 フルリタイアではなくセミリタイアを目指す
もちろん、ご両親の年齢を考えれば、毎月の経済援助3万~5万円がそこまで続くとは考えにくいでしょう。Totoroさんが介護をすることで、今までヘルパーさん等にかかっていたコストが減り、その援助も減るかもしれません。しかし、同居することで、さらに援助額を増えることも考えられます。同居後の生活費が見えないのも、不安要素です。また、住宅のリフォーム費用を負担するとなると、もっと早く、手持ち資金がなくなる可能性も否定できません。
そのための対策としては2点。まず、同居後も、定期的収入を確保しましょう。現在されている仕事が同居しても続けることができれば、収入確保の手段としてはもっとも現実的だと思います。それが無理なら、アルバイトでも構いません。月5万円でも年間60万円。65歳まで働けば780万円、70歳なら1080万円、老後資金が増えることになります。
もうひとつは、親の老後や介護については、親の資金で行うのがマネープランの原則です。しかも、親御さんは「年金が多い」とのこと。であれば、なおさらそのことをより意識すべきです。リフォーム費用についても親御さんの資金で行うのが前提です。
アドバイス3 介護が目的のリフォームなら介護保険を活用
また、相談文にもありますが、同居せずに、親御さんの施設入居を選択すると、仕事を継続することになると思われます。ただし、Totoroさん自身、親御さんの介護とは別に、仕事を休みたいという気持ちがあるのかもしれません。だとすれば、同居するしないにかかわらず、一時的に辞めても構わないと思います。しかし、そのままフルリタイアはせず、数年後にはまた働き始める必要があると思います。投資商品の売却については、なるべく早めにすべき。現時点で、まとまった現金がないのも不安。すでに利益が十分出ているのなら、なおさらです。段階的に現金化を進めましょう。
あと、ご存知かもしれませんが、介護を目的とした住宅リフォームは公的介護保険が活用できます。例えば、玄関やトイレに手すりをつける、あるいは浴室の段差を解消したり、腰掛け付きの浴槽に変えたりなど、被保険者1人に対して支給限度基準額=20万円の範囲内でかかった費用の1割(※)だけを自己負担することになります。詳しくは、自治体で確認してください。
(※)所得に応じては2割負担。2018年8月からは3割負担。
Totoroさんから寄せられた感想
ありがとうございます。フルタイム勤務と介護の両立に疲れてましたが、パートやアルバイトでも、継続して働く必要があるとわかり、参考になりました。投資口座は何もしておらず、適宜現金化して行く必要があるとは思ってもみませんでした。今後検討したいと思います。教えてくれたのは……
深野 康彦さん
取材・文/清水京武
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