同居して親の介護をしたいが資金的に不安もあります
皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、両親の介護のために仕事をフルリタイヤしたいという52歳の女性会社員。親は年金も多い方とのことですが、近年病気がちで3~5万円程度の援助をしているとのこと。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。※マネープランクリニックに相談したい方はコチラのリンクからご応募ください。(相談は無料になります)■相談者
Totoroさん(仮名)
女性/契約社員/52歳
新潟県/賃貸住宅
■家族構成
一人暮らし
■相談内容
現在の貯金額で、親の介護のために退職したい(フルリタイア)と考えていますが、可能でしょうか。長くアメリカで生活後に日本に戻り、投資信託の多く(4700万円くらい)をアメリカの口座に残したままで、今年はかなり価値が上がりました。日本での投資は投資信託と株が300万円くらいです。現在借家ですが、退職後は親の持ち家(築25年)に住む予定です。親は年金も多い方ですが、近年病気がちで3~5万円程度の援助をしています。退職金等はありません。年金は国民年金のみで月5万円くらい65歳からです。
■家計収支データ
■家計収支データ補足
(1)親の状況
父親も母親も80代前半。母親は要介護2。現在、デイサービスやショートステイを利用。介護ヘルパーさんは週1で利用。経済的には結構な負担で、相談者が仕事を辞め、介護をしようと思っている。仮に仕事を辞めなければ、2~3年以内に(親の)年金で払える範囲の施設に入れることを考えている。父親も基本的には介護が必要。
(2)教育費について
語学の勉強。リタイア後は資金的余裕があれば続けたい。
(3)実家について
3年以内にトイレ、5年以内にキッチンはリフォームが必要と考えている。
(4)兄弟について
遠方に兄と弟が1人ずついる。介護自体も経済的支援も期待できない。
■FP深野康彦の3つのアドバイス
アドバイス1 現状のままでは老後資金が足りない
アドバイス2 フルリタイアではなくセミリタイアを目指す
アドバイス3 介護が目的のリフォームなら介護保険を活用
アドバイス1 現状のままでは老後資金が足りない
先に結論を言いますと、親御さんの介護のためのフルリタイアは、資金的にはかなりリスクがあると考えます。同居後のTotoroさんの生活費を考えてみます。仮に現在とまったく同じとだとすれば、家賃の月4万円がなくなりますから、月20万円。公的年金が支給される65歳までの13年間で計3120万円がかかります。
Totoroさんが希望されるようにフルリタイアとなれば、この生活費はすべて貯蓄からの捻出となります。今ある投資商品を現金化した場合、どの程度、含み益があるかは不明ですが、米国の証券会社にある投資信託も結果的に課税されますから、全体で10%程度は目減りするかもしれません。だとすれば、現金化した時点で4500万円。つまり、65歳のときに手持ち資金は1380万円に減っています。
65歳以降は、公的年金の受給ができます。月額5万円ですから、毎月の生活費の不足額は15万円。年間180万円となり、あくまで計算上ではありますが、8年を経たずに資金は底をつくことになるわけです。
アドバイス2 フルリタイアではなくセミリタイアを目指す
もちろん、ご両親の年齢を考えれば、毎月の経済援助3万~5万円がそこまで続くとは考えにくいでしょう。Totoroさんが介護をすることで、今までヘルパーさん等にかかっていたコストが減り、その援助も減るかもしれません。しかし、同居することで、さらに援助額を増えることも考えられます。同居後の生活費が見えないのも、不安要素です。また、住宅のリフォーム費用を負担するとなると、もっと早く、手持ち資金がなくなる可能性も否定できません。
そのための対策としては2点。まず、同居後も、定期的収入を確保しましょう。現在されている仕事が同居しても続けることができれば、収入確保の手段としてはもっとも現実的だと思います。それが無理なら、アルバイトでも構いません。月5万円でも年間60万円。65歳まで働けば780万円、70歳なら1080万円、老後資金が増えることになります。
もうひとつは、親の老後や介護については、親の資金で行うのがマネープランの原則です。しかも、親御さんは「年金が多い」とのこと。であれば、なおさらそのことをより意識すべきです。リフォーム費用についても親御さんの資金で行うのが前提です。
アドバイス3 介護が目的のリフォームなら介護保険を活用
また、相談文にもありますが、同居せずに、親御さんの施設入居を選択すると、仕事を継続することになると思われます。ただし、Totoroさん自身、親御さんの介護とは別に、仕事を休みたいという気持ちがあるのかもしれません。だとすれば、同居するしないにかかわらず、一時的に辞めても構わないと思います。しかし、そのままフルリタイアはせず、数年後にはまた働き始める必要があると思います。投資商品の売却については、なるべく早めにすべき。現時点で、まとまった現金がないのも不安。すでに利益が十分出ているのなら、なおさらです。段階的に現金化を進めましょう。
あと、ご存知かもしれませんが、介護を目的とした住宅リフォームは公的介護保険が活用できます。例えば、玄関やトイレに手すりをつける、あるいは浴室の段差を解消したり、腰掛け付きの浴槽に変えたりなど、被保険者1人に対して支給限度基準額=20万円の範囲内でかかった費用の1割(※)だけを自己負担することになります。詳しくは、自治体で確認してください。
(※)所得に応じては2割負担。2018年8月からは3割負担。
Totoroさんから寄せられた感想
ありがとうございます。フルタイム勤務と介護の両立に疲れてましたが、パートやアルバイトでも、継続して働く必要があるとわかり、参考になりました。投資口座は何もしておらず、適宜現金化して行く必要があるとは思ってもみませんでした。今後検討したいと思います。教えてくれたのは……
深野 康彦さん

取材・文/清水京武
【関連記事をチェック!】
55歳貯金1億円。働くモチベーションがなく退職希望
42歳、一刻も早く退社し年収100万円程度で暮らしたい
51歳貯金1億。早期リタイア後子ども2人の教育費が心配
47歳シェアハウス在住。貯金4000万。早期リタイヤ希望
47歳公務員、貯蓄1億3000万。念願のリタイヤできるか