労務管理/雇用側の労務知識

しっかり理解したい!派遣社員のメリット・デメリット

「派遣だとアルバイトより高い時給で募集されていることが多いけど何が違うの?」 。仕事を探していると、求人票に「派遣」という働き方が示されていることがあります。派遣と正社員、契約社員にはどんな違いがあるのでしょうか?特に女性が選択することの多い派遣という立場、派遣で働くメリットとデメリットを解説します。

小西 道代

執筆者:小西 道代

労務管理ガイド

「派遣社員」は、「働く会社」と「雇われる会社」が違う

派遣社員

派遣社員のメリット・デメリット

「正社員」「契約社員」「アルバイト」といった雇用形態の場合、雇われる時に契約を交わすのは「会社」と「労働者(皆さん)」です。このかたちを「直接雇用」と言います。

直接雇用の場合、仕事内容や働く時間を相談するのも会社ですし、業務の指示をするのも、契約を交わした会社です。

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直接雇用と派遣の雇用の違い



これに対し、「派遣」の場合、雇用契約を結ぶのは「派遣会社」と「労働者(皆さん)」です。労働者は、仕事内容や働く時間などを派遣会社に相談し、派遣会社は、労働者との契約に合った派遣先を探します。

毎日通勤するのは「派遣先の会社」であり、毎日の業務指示も「派遣先の上司(指揮命令者)」から受けますが、給与は「派遣会社」からもらいます。

「直接雇用」が会社と労働者の2者であるのに対して、「派遣」は会社と労働者と派遣先の3者が関わる、という違いがあります。

「派遣」の雇用契約には、「有期雇用」と「無期雇用」がある

「派遣で働く」とは、
・派遣会社と雇用契約を結んでいる労働者が
・派遣会社と派遣先が結んでいる「派遣契約」の内容に従って
・派遣先の指示を受けて派遣先で働くこと
を言います。

派遣には、派遣会社と結ぶ雇用契約の期間によって
  • 有期雇用
  • 無期雇用
の2種類があり、以下が違います。

・「有期雇用」の人が「派遣で働く」
派遣会社との雇用契約に3ヶ月や6ヶ月の期間が決まっているときは「有期雇用」となり、派遣先の同じ仕事で3年以上働き続けることができません。3年を迎える日を「抵触日」と言いますが、その日を超えると「派遣」という働き方ができなくなります。

派遣法では、派遣で働くことを「臨時的・一時的なもの」と定義していて、3年も同じ会社の同じ仕事をしているのであれば、その場所で「直接雇用」されるのが当然だろう!という考えなのです。

・「無期雇用」の人が「派遣で働く」
期間を決めずに派遣会社に雇用されるときは「無期雇用」となって、「抵触日」の例外にあたります。派遣先が派遣会社との派遣契約を解約しない限り、労働者は派遣先の同じ仕事をずっと続けることができます。
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派遣では専門性発揮と多様な派遣先が魅力


無期雇用契約を結んでいる以上、今の派遣先が何らかの理由で派遣契約を解約したとしても、派遣会社は別の派遣先を用意するなどして、労働者が働ける場所を提供し続ける責任があります。だったら、「抵触日」の例外としても労働者に不利益はないだろう、という考えなのです。

「派遣で働く」メリット

1986年に派遣法が成立したときは、ごく一部の専門的な業務に限って派遣として働くことができるルールとなっていました。その後、何度かの法改正によってハードルは下がってきましたが、「専門的なスキルを持っている人だけができる働き方」というイメージが今も残っています。

現在では、仕事の内容にかかわらず「派遣」という働き方ができるようになりました(医療行為や建設現場などの一定の禁止業務を除く)。翻訳・通訳や秘書、システムエンジニアなどの専門的な仕事に加え、事務作業や製造現場など、経験・未経験問わず、幅広い仕事から選ぶことができます。

一般的に「派遣で働く」メリットは、以下です。
・時給が高い
・生活スタイルに合わせて働く場所、時間、日数を選ぶことができる
・スキルに合わせた仕事内容を選ぶことができる

「専門性がある」もしくは「多様な経験をしたい」人にお薦め

派遣で働くメリットを受けるためには、「専門的なスキルを持っている」ことが必要です。派遣法が「派遣で働くこと」を「臨時的・一時的なもの」としているため、派遣先も一定期間に限り即戦力として活用できるスキルを求めています。

極端な例ですが、派遣で働く初日に簡単な説明を受けるとすぐに山盛りの作業を指示されることもあります。「出産や育児で退職せざるを得なかったけれど、身につけた専門的なスキルを活かして働きたい!」というときにぴったりの働き方です。

反対に、「まだ自分に向いている仕事が分からない」「やりたいことが見つからない!」というときにも「派遣」という働き方が使えます。そんなときのメリットは以下です。
・いろんな業種、業界で経験を積むことができる
・専任のコーディネーターがついて相談にのってくれる
・1つの仕事が終わっても、次の派遣先を探してくれる
派遣法では、派遣で働く人の「キャリアアップ」を図るよう派遣会社に義務づけています。派遣先の仕事が未経験であったり、ビジネスマナーやパソコンスキルに不安があるときでも、派遣会社が研修をしてくれます。研修会社と契約して「簿記」「英会話」「医療事務」など幅広い研修の中から、自分のキャリアプランに合った研修を選択できるところもあります。

60歳以上の人が「定年後にもう少し働きたいな」と思ったら、派遣で働くこともお勧めです。「有期雇用」のうち60歳以上の人であれば、「抵触日」の例外として「3年」の期限なく働き続けることができるとあって、自身の体力や希望に合わせて「派遣で働く」シニアが増えています。

「派遣で働く」デメリット

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派遣のデメリットにも注意

労働者、派遣会社、派遣先の3者が関わるのが「派遣」という働き方です。直接雇用の2者であれば、何かあったときに相談する相手は会社だけですし、会社が仕事の指示をして労働者がその通りに働く環境であれば、労働者の仕事ぶりを評価して給与アップも見えやすいかもしれません。

しかし、「派遣」では仕事の指示をする人(派遣先)と給与を払う人(派遣会社)が違うため、以下のデメリットがあります。
・給与アップなど労働条件を自分で交渉できない
・交通費や賞与が出ないことが多い
・派遣先では「お客さん」扱いされることも
派遣会社は労働者が働いている様子を直接見ることができないため、仕事ぶりを把握しづらいことは事実です。しかし、専任のコーディネーターが月に1回程度は面談に来てくれますし、有給休暇を取りにくい雰囲気であれば派遣先に交渉してくれることもあります。

また、交通費や賞与が出ないことが多いのも、「派遣」は「臨時的・一時的」な労働力という考え方から、派遣先が長期的な雇用をイメージしていないためです。その分を時給に反映することで、「時給が高い」というメリットにつながるのです。

職場の人間関係を大切にする女性にとって、特に辛いのが「お客さん」扱いかもしれません。もちろん、自社の従業員と変わらない対応をしてくれる派遣先も多くありますが、会社への忠誠心や帰属意識という点でどうしても低く見られがちです。

よって、
・担当する仕事はルーティン業務が中心
・責任ある仕事を任せてもらえない
・役職につくことができない
組織の中で管理職としての経験を積むことができないということは、マネジメント力やリーダーシップを身につける機会が少なく、30代後半や40代の頃に同世代の人が役職を与えられて給与も上がっていく中、「派遣」として時給をアップし続けることが難しくなるかもしれません。

「派遣で働く」ときの心構え

派遣先は、必要なときに必要な労働力が欲しくて派遣会社を利用します。労働者一人ひとりの個性よりも、「どんなスキルを持っているか」「どんな仕事ができるか」が重視されます。この点、直接雇用よりもシビアかもしれません。

一方、直接雇用の正社員であれば、全国転勤や配置替えがあったり、役職者となって長時間労働になったりすることがあります。さらに、定年までの長い会社人生を考えると、派閥などの面倒な人間関係も無視できないことも…。

これらの「派遣で働く」メリットとデメリットを考えると、以下の人が派遣に向いている、と言えます。
・自分のキャリアプランが明確になっている人
・まずはいろんな仕事を経験してみたい人
・会社の行事に強制されず、自分の時間を大切にしたい人
・子育て中で残業はできないという人
・責任の重い仕事は苦手という人
自分は、仕事をするうえで何を重視しているのか?をしっかりと考え、「派遣で働く」ことも選択肢の一つとしてみましょう。
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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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