総務・人事

中小企業が大企業と戦うための採用戦略とは

景気が持ち直し、企業の人材採用意欲が高まっています。労働集約的産業においては、人手不足により値上げを余儀なくされている業種もあります。企業喫緊の課題である働き方改革も、元をただせば人口減少が背景にあります。企業における最大の課題である人材採用。「採用力を上げて選ばれる会社になる」ために、中小企業でも大企業と戦える採用の極意を見ていきましょう。

豊田 健一

執筆者:豊田 健一

総務人事・社内コミュニケーションガイド

就職で重視するものは「個人の生活と仕事の両立」が増加

月刊総務2017年8月号に掲載した株式会社マイナビの「2018年卒マイナビ大学生就職意識調査」によると、学生の就職観は以下の通りです。

  • 1 楽しく働きたい
  • 2 個人の生活と仕事を両立させたい
  • 3 人のためになる仕事をしたい
  • 4 自分の夢のために働きたい
  • 5 プライドの持てる仕事をしたい

1位の「楽しく働きたい」はこの10数年変わりなく1位のままです。2位の「個人の生活と仕事を両立させたい」は2014年卒調査さから5年連続で増加傾向にあります。

特に理系女子では「楽しく働きたい」を抜いて1位と、ワーク・ライフ・バランスの浸透により、仕事と私生活の両立が就職観としてより重要視されるようになってきています。

福利厚生は「どれだけ使われているか」を示す

先の調査データ、企業選択のポイント(2つ選択)の結果では、
  • 「勤務制度、住宅などの福利厚生の良い会社」
  • 「休日、休暇の多い会社」
を選ぶ学生が増加傾向にあり、女子学生は、長く働ける制度があるか、女性が活躍している、単に制度があるだけでなく、実際に利用されているか、といったことに高い関心を示しています。

両立支援や女性活躍推進の取組みが進んでいることや福利厚生が充実していることは、採用活動においてはポイントとなります。そのアピールとしていい面ばかりを強調してしまいがちですが、学生が望んでいるのは本音であり、そこは、先輩社員とのリアルなコミュニケーションの場で、じっくりお話してあげるのが良いでしょう。

大事なのは、制度がどれだけ実際に利用されているのか、利用しやすい環境にあるかということです。利用率や実際に利用している先輩社員の話を紹介するの工夫が必要です。

リアルのコミュニケーションで大事なのは、ベテラン社員ではなく、若手社員を登場させることです。学生が苦手とするのは中年の男性。「怖い」と思われたら、ブースに立ち寄ってもらえなかったり、質問も避けられてしまうことがあります。

若手の女性社員は男子学生も話しやすいので効果的でしょう。年の近い先輩社員に親近感、あこがれを持ち入社を決める、という場合もありますから、採用活動の配役にも気を配りたいものです。
採用活動

採用活動には、現場の若手社員を全面に打ち出す



「企業理念に共感できるか」が見られている

先に記した福利厚生は学生が就職先を選ぶ際の大きなポイントとなっていますが、この点で中小企業が大企業と互角に戦うのは厳しいでしょう。

しかし、学生はその福利厚生とともに企業理念をしっかり見ています。以下、月刊総務2018年5月号で取材した、採用ブランディングの実践をサポートしている「むすび株式会社」、代表の深澤さんのお話です。

「”企業理念”は、規模の大小にかかわらず、事業戦略や社風や社員の雰囲気、仕事の仕方などに、その会社らしさ、あるいは価値観としてしみこんでいる。だからこそ、単純に数値化して比べられない。企業理念を前面に出して勝負することで、企業規模や知名度を超えた部分で勝負できるのです」

「変化の激しい時代には、事業内容や待遇で会社選びをしても、将来的にどう変わっていくか不透明。しかし、価値観が一緒なら、納得感や共感は変わらない可能性が高い。そうした本質を見極めたいと考える応募者が増えているのかもしれません」

採用活動で企業理念を伝えるための実例

では、深澤さんがお話される企業理念を学生にどのように伝え、感じてもらえればよいのでしょうか。「月刊総務」2018年5月号からいくつかの事例を紹介します。
  • 株式会社グローバル・リンク・マネジメント
土地の仕入れ、企画、開発、分譲、建物管理、賃貸管理まで、ワンストップで展開する不動産ソリューション企業です。各部署からの選抜メンバーがプロジェクト的に本業と兼務しながら採用活動を行っています。若手社員がが説明会に登壇し、説明、面接、質問を受けます。学生からは「一緒に働く人がイメージできる」と好評です。

この企業では、社員の中に「一緒に働きたい人」としてのロールモデルを見つけ、その社員に採用活動に加わってもらっています。ロールモデルにあこがれ、共感する学生を集め、積極的に採りに行く採用活動をしているのです。そのような魅力的な社員は、対人力も高く、学生から相談を受けながら、上手に自社を売り込むそうです。
採用活動

どんな人と働きたいかをしっかりと明文化するのがポイント


採用パンフレットにも魅力的な社員を登場させることを徹底しています。どんな人が、どんな仕事を、どんな思いでしているのか。社員の情熱を感じてもらえるものとなっています。

  • 株式会社ベッセルホテル開発
広島県福山市に本社を構え、福山ニューキャッスルホテルを旗艦ホテルに、3つのホテルブランドを全国展開する企業です。同社は「採用ブランディング」に取り組みました。

まずは「会社の強み」を整理し、「3つの強み」にまとめました。さらに「求める人材像」を明確にして全社で共有し、学生に伝えるためのキャッチコピーを作りました。結果として、その強みに共感した学生が応募するようになりました。

ターゲットを絞りましたが、応募者数は増えています。また、同社でも採用活動は全社活動としており、説明会等のイベントには、若手社員が同行し、説明会で話をします。現場の社員が話すことで、活躍できるチャンスやフィールドについて説得力が増します。

同社が採用を成功させるために大事にしているのは以下の3つです。
  • 1 求める人材像を明確にすること
  • 2 求める人材に響く自社の強みを訴え続けること
  • 3 既存の社員を大事にすること

採用サイトに掲載したいコンテンツ

以上を踏まえ、採用サイトの作り方にも言及します。

今は、企業が学生に選ばれる時代です。学生が最初にアクセスすることが多い採用サイトに何を書くかは非常に重要です。

単に募集事項を掲載するだけではなく、先に記した学生の就職観とのマッチングを効果的にアピールし、学生に働きがいや働きやすさをイメージしてもらうことが重要です。

採用サイトに掲載すべきコンテンツには、次のようなものがあります。

■一般的なコンテンツ
  • 企業ビジョン
  • 代表メッセージ・思い
  • 会社概要・事業紹介
  • インターンシップ紹介や募集事項

■その他のコンテンツ
  • 働きがいや働きやすさを直接社員に語ってもらう社員インタビュー
→テキストもよいですが、動画だとさらにインパクトがあるでしょう。男女、職種別に、多くの社員を掲載することで、フックポイントが増えます。登場人物は名前はもちろん、担当業務を詳細に掲載します。一日の使い方やプライベートもできるだけ掲載しましょう。バックグラウンドを理解することで、より親密感が増します。

  • 入社後の研修、教育風景の掲載、あるいは動画掲載
→自らがどのように成長していくのか、そのイメージを提供します。入社後のイメージを持たせる、自己投影できるようなコンテンツが大切です。

サイトデザインは、シンプルで分かりやすく。多くの情報を確実に届けるには見る側が欲しい情報にすぐにリーチでき、多くの情報に触れられることが必要です。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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