少女漫画の実写化はスポ根から恋愛へ
少女漫画の実写化=恋愛映画が定番ですが、ずーっと遡ってみると、最初に少女漫画の実写映画化作品となったのは、1970年『サインはV』ではないかと思われます。バレーボール選手がヒロインのスポ根映画だったのです。しかし、今の時代、少女漫画の実写映画はラブストーリー全盛期です。
少女漫画の実写化に興味ない人には、全部同じに見えるかもしれません。しかし、製作陣はあの手この手で攻めています。最近の少女漫画の実写映画でよく見られる3つの「あるある」パターンを挙げながら、その魅力を探っていきましょう。
「あるある」その1.「俺様王子」が多いのはなぜ?
少女漫画の実写化作品で多いのが俺様王子とヒロインのラブでしょう。俺様王子は、基本的にクールで女性にやさしくありませんし、徒党を組まない一匹狼タイプ。女子から見ると近寄りがたい……。だからいいのです!映画としても実に描きやすいキャラクター。イケメンだけどぶっきらぼうという個性はわかりやすく、まず最初に「なにこの人~!」と観客に印象づけるアクセントになります。
ラブストーリーで恋が成就する物語のパターン「第一印象最悪!」は、よくあることで、要は「嫌い」から、どうやって「好き」になるのかがドラマなのです。
壁ドンなんて俺様キャラがやるからこそ、流行ったと言えます。実にドラマチックなキャラなんですよ。
俺様王子が見れる映画の2強はコレだ!
俺様王子映画の2強としては『オオカミ少女と黒王子』『黒崎くんの言いなりになんてならない』があげられます。両作ともにドS王子が登場。『オオカミ少女と黒王子』は、ヒロイン(二階堂ふみ)が「お願い、彼氏のフリをして」と頭を下げた途端に「お前はオレの犬になれ」と、王子(山崎賢人)が命令するところから関係がスタート。『黒崎くんの言いなりになんてならない』は、寮生活を送るヒロイン(小松菜奈)が、副寮長の王子(中島健人)から「俺に絶対服従だ」と命令されます。
ヒロインは俺様王子に翻弄されながらも、ときどき見せる優しさや情熱にキュンとする。それを見る女子たちはヒロインに大共感して一緒にキュン。やさしいだけの男じゃ物足りない女子は多い+やさしい男子はギャップが出しにくいため、映画としては俺様王子の方が面白いのです。
そういう女子の琴線にふれる&キャラとして魅力的なのが俺様王子の映画。フィクションとして面白く演出できるキャラクターなのです。
「あるある」その2.教師と生徒の禁断の恋…なぜ人気なの?
最近の少女漫画の映画化で増えているのが、教師と女子生徒のラブストーリー。付き合ってはいけない、禁断の関係だからこそ燃えるわけです。恋愛映画は男女の間の壁が分厚いほど盛り上がりますからね。
また現実にかっこいい男性教師に憧れても、お付き合いに至るのは難しい……。そこで少女漫画の登場ですよ。漫画でウットリとイケメン先生との恋を妄想してからの実写映画鑑賞で、より深く堪能できるわけです。
さて、最近の教師と女子生徒の少女漫画の実写映画としては『ひるなかの流星』『先生!、、、好きになってもいいですか?』『近キョリ恋愛』がありますね。いずれも教師役は三浦翔平、生田斗真、山下智久とイケメン揃いで、まさに夢物語です。
教師と生徒の恋愛は、壁が厚い分、登場人物の葛藤がハンパないので、意外と見応えのある恋愛映画になるような気がします。
でも、いけない関係でもあるからこそ、丁寧に登場人物の気持ちを綴ってほしい。ノーテンキにキャピキャピと軽く扱ってほしくない題材ですね。
※『ママレード・ボーイ』(C)吉住渉/集英社 (C)2018 映画「ママレード・ボーイ」製作委員会
「あるある」その3.なぜヒロインはいつも平凡なのか?
少女漫画には個性的なヒロインもたくさんいますが、実写映画化される作品は比較的、フツーの女の子が多いです。たまに『のだめカンタービレ』や『ヒロイン失格』の主人公のようにぶっ飛んだ女子も出てきますが、やはりターゲットは女子中高生。彼女たちが共感できて、自分を投影できるヒロインが好まれる傾向にありますね。
しかし、ただ平凡では映画として成立しないので、平凡な中にアクセントとなるプチ個性を投入します。
2018年3月に公開された『honey』はヘタレ女子、『プリンシパル ~恋する私はヒロインですか?~』はイジメられ女子、『ちはやふる』は、スポ根女子など、それぞれワンポイントの個性を持っています。
『ちはやふる』の千早は、ちょっとぶっ飛んだ方にも片足突っ込んでいますが……。
彼女たちの共通点は「友達になりたい女の子」。つまり映画を見ていて応援したくなる、かつ、女の子に嫌われないタイプじゃないと、少女漫画映画のヒロインとして成り立たないのです。
※『honey』(C)目黒あむ/集英社(C) 2018映画「honey」製作委員会
『ちはやふる -結び-』(C)2018映画「ちはやふる」製作委員会(C)末次由紀/講談社
非・王道の女性向け漫画にも注目!
少女漫画は基本キラキラな世界ですが、少女漫画とは違った路線で人気を博している女性向け漫画もあり、その実写映画の中には鋭利なナイフのようにとんがった作品も登場します。
『リバーズ・エッジ』は、キラキラした王道の逆を歩んでいる映画です。ヒロインの周囲の人物がみんな心病んでおり、登場人物が強烈な葛藤を深堀りしていく作品。こういう青春もあるのかという衝撃がありました。
『溺れるナイフ』は、少女漫画の映画化ですが、こちらも青春のダークサイトを描いていましたし、ヒロインが恋する彼がエキセントリックで最後まで謎めいていましたね。
少女漫画の中でも、ヒロインが非・王道な映画もあります。前述の『のだめカンタービレ』もそうですが、2回も映画化された『白鳥麗子でございます!』です。1995年と2016年に映画化された本作は、ヒロインが超高飛車!というのが異色でしたね。
※『リバーズ・エッジ』(C)2018映画「リバーズ・エッジ」製作委員会/岡崎京子・宝島社
2018年の少女漫画の映画化はどうなる?
「2018年も豊作!少女漫画の実写映画化、注目の8作品」で2018年に見られる少女漫画の実写映画注目作を8作品ピックアップしています。
まだまだ少女漫画の実写化ブームは終わりそうにないどころか、加速していきそう。2018年の少女漫画実写映画の王子は、俺様を差し置いてオクテ男子がグイグイきそうな気がします。どうなるのか楽しみ。
キャスティングなど、原作ファンは賛否両論あると思いますが、またそれについて語り合うのも楽しい! 温かく見守っていきましょう。
※(C)2018 映画「3D彼女 リアルガール」製作委員会 (C)那波マオ/講談社