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パリ「レ トロワ ショコラ」佐野恵美子シェフを訪ねて

パリのマレ地区にあるチョコレート専門店「レ トロワ ショコラ」。オーナーショコラティエールの佐野恵美子さんにお話を伺いました。

市川 歩美

執筆者:市川 歩美

チョコレートガイド

パリにある佐野恵美子さんのお店「レ トロワ ショコラ」へ

パリの小さなチョコレート専門店「レ トロワ ショコラ」をご存知ですか?福岡県出身の、佐野恵美子さんが経営するお店です。
「レ トロワ ショコラ」のショーケース

「レ トロワ ショコラ」のショーケース

テレビ東京の番組「セブンルール」で知った方も多いかもしれませんね。オーナーショコラティエの佐野恵美子さんは、福岡で76年続く「チョコレートショップ」の三代目。

フランスを拠点にして10年、このお店をオープンしたのは2017年2月5日ですから、オープン1年2ヶ月になります。

ボンボンショコラは25種類以上、タブレットは9種類、他にもチョコレート菓子やケーキが揃っています。

パリ・マレ地区にある小さなチョコレート専門店

「レ トロワ ショコラ」があるのは、パリのマレ地区です。
レ トロワ ショコラの外観

最寄り駅は、「サンポール」または「バスチーユ」駅です。

私はここのところマレ界隈が好きで、大抵このあたりにステイしたり、足を運ぶのですが、ここは小さな商店が並ぶパリの旧市街です。アートやファッション、フードなどのショップが集まり流行が芽生え、最新のスタイルが息づいています。

「レ トロワ ショコラ」があるのはアンティーク通りで、奥へと進むとヴィラージュ・サンポールというアンティーク街があり、骨董品店が軒を連ねています。
恵美子さんとスタッフのあいみさん

恵美子さんとスタッフのあいみさん

お店の扉をあけると「ボンジュール!」。明るい声が響きます。フランス人のお客さまが次々と入ってきて「ボンジュール」、また「ボンジュール」!

フランス生活が長いので、流暢なフランス語を話す恵美子さん。私がこのお店っていいな、と感じるのは、フレンドリーでホスピタリティがあること。きっと「お店に来ること自体」が楽しい方がいるはず。実際に、恵美子さんやスタッフのファンが多いと聞いて、納得でした。
レ トロワ ショコラ undefined佐野恵美子シェフ

レ トロワ ショコラ  佐野恵美子シェフ

私がこのお店を訪れるのは2度目です。いつも思うのですが、恵美子さんは前向きで真っ直ぐ。明るくてやさしくてお気遣いがあって、すごく真剣。

お祖父様の代から続く店の3代目として「父親から認められる職人になる」という確固たる意思のもと、情熱を持ってお店をきりもりしているのです。

日本素材を使ったボンボンショコラが並ぶ店内

レ トロワ ショコラの主役はやっぱりボンボンショコラ。全ては、お店の地下にあるキッチンで作られています。
常時25種類くらいが並び、お店でも一番人気

常時25種類くらいが並び、お店でも一番人気

特徴は、日本の素材を積極的に使っていること。「生まれ育った日本、福岡を誇りに思っている」恵美子さんの気持ちが、チョコレートに現れています。
カカオニブが敷き詰められたショーケースに並ぶボンボンショコラ

カカオニブが敷き詰められたショーケースに並ぶボンボンショコラ

人気のボンボンショコラをご紹介すると……

「ASO」
濃厚なミルクチョコレートのガナッシュです。阿蘇のミルクは使っていませんが、お客さまから「ASO」って何?と聞かれた時に「日本の九州に、ミルクが美味しい場所があるんですよ」という会話をするそうです。

「KINAKO」
初めていただいて、美味しいな、と思ったショコラです。きな粉の香ばしさを引き出すために煎りゴマを、食感のために粗めのアーモンドプラリネを加えています。

■「SAKURA」
SAKURA

SAKURA

このお店の立ち位置や、恵美子さんの考えが現れている気がしてとても面白いと思うのがこのショコラ。「日本の方にもフランスの方にも納得して楽しんでもらいたい」という思いやバランスが1粒になっています。

どういうことかというと、日本人が桜、というと想像する、桜の塩漬けや葉の香り、同時にフランス人が桜、というと思い浮かべるグリオットチェリーの味がひとつのガナッシュに調和しているということです。
新作(左から)「 YUZU OLIVE」「CARAMEL TONKA」「MIRIN」

新作(左から)「 YUZU OLIVE」「CARAMEL TONKA」「MIRIN」

恵美子さんが新作として私に勧めてくれたのが上の3種類。新たな素材の組み合わせを考え始めたそうで、昨年からの進化を感じました!

三河みりんをホワイトガナッシュにした「ミリン」、良質なオリーブオイルと柚子が香り、口どけが新しい「ユズオリーブ」。そして特に私が特に気に入った「キャラメルトンカ」です。

ガナッシュに空気を入れ込んでいるので、センターが口に入れた途端にふわっと溶けます。ミルクチョコレートとキャラメルの苦味がマッチ、そこに加わる桜のようなトンカの香り。私はとても気に入って、色々食べたにも関わらず、2個いただいてしまいました(笑)

<補足>
「レ トロワ ショコラ」は福岡にもお店があり、パリからボンボンショコラを約20種輸入して販売しています。現在、パリでしか購入できないのは、上で紹介した新作、「サクラ」「ブラジル」「パンプルムース」「ローズ」などです。

佐野恵美子シェフにお話を伺いました

―お店をオープンして1年、お客さまからの反応はどうですか?

「近場にこのお店ができてよかったわ」と言ってくれる地元の方がいます。今では20キロ先から車で買いに来てくれる人もいます。

お客さんともよく話をして、お店に出ていないと「あなた最近いないわね」と言われて「キッチンにいるからカーテンからのぞいて、呼んでよ!」なんて話したりして。(販売スタッフの)あいみちゃん、ジュリエットのファンもいますよ。「あのお店は、週末になるとケーキがなくなるから予約しておかないと買えないよ」と口コミが広がって、予約もすごく増えました。

―表面にデザインを入れたボンボンショコラが人気だそうですね。

もう、フランスのお客さまのこだわりは半端ないです。9個入りなら「真ん中に桜を入れて、両サイドはこの柄を!」と、相手のセンスや自分の好みにあわせて真剣に選ぶんです。デザインを入れたボンボンショコラがやっぱり人気があって、花火の柄のは、一度やめたら「あの花火のはなくなったの?」と何人からも言われて、復活させました。

―なぜフランスにお店を出したのですか?

祖父の代から守ってきた、親子3代の味を世界に広げたいと思いました。「日本のものをフランスへ伝える」、このことに誇りを持っています。だから日本の素材を積極的に使っています。

―以前からご実家のお店を継ぐつもりだったのですか?

子供の頃はなんとなく恥ずかしくて、実家がお菓子屋ということを隠していました。友達はみんなクリスマス会を家でしていたけど、クリスマスの日も弟とふたりで過ごしてましたね。朝ごはんにケーキが出てきたり。両親は全然家にいないし。クリスマスももちろんいないですしね。

大学を卒業して、外で営業の仕事を3年間しました。外商だったので、両親よりも上の方々と話をするようになったんです。お客さんと世間話の流れで実家の話をすると「あ、おじいちゃんの代から通っているよ」「あぁ、旦那とデートでよく行っていたわ」と話されるんです。

そういうのを初めて聞いて、私の家のお店は、福岡でこんなにも愛されていたんだと知りました。そんなに有名だと知らなかった。祖父も父も凄い人だってわかったんですよね。お客さまに「で、あなた継がないの?じゃあ終わっちゃうのね……」と言われて。「私が続けば100年続く洋菓子店になるのかな」と思って。そうなりたいなと思いました。

ある日私が父に「お店を継ごうか」と話したら、すごい勢いで「職人を舐めるな」と反対されました。そして「本当にその気があるならフランス行ってこい」と。私は「じゃあ、行く」と言いました。2008年、25歳のときです。

―最初はフランスのどこへ?

ロワール川のそばにある、トゥールにいました。ここは人がやさしくて。語学学校に通いながら職業訓練校のお菓子を教えるコースへ行っていました。一番初めに、ダミエ柄のクッキーを作ったんですけど、ぜんぜんうまくいかない。「向いてないなー」と思いました。でもお菓子作りの面白さに気づかせてもらえました。

それから南仏の街ペルピニャンに1年いました。人口5000人位の山の中。MOFのオリビエ・バジャールさんがいて、3ヶ月、製菓学校へ。色々なシェフと知り合えて、2012年にはミシャラクさんを紹介していただいて、パリのプラザ・アテネへ。そこで半年いてフランス生活が楽しくなって、チョコレートをやりたいと思いました。ジャック・ジュナンでも勉強しました。

―単身乗り込んだパリ、お店を開くのは一筋縄ではいかなかったのでは?

資材を自分で全部運んだり……もう大変でした。「売上報告しろ」と日本にいる親に言われたり。親が抱えている重みがわかりました。でも親を超えなきゃ、という重圧もあって。だってそうでなければ、ただのお飾りになっちゃう。
夜遅くまで作業をすることも

深夜まで一人で作業をすることも

―1年たってお父様からの評価はいかがでしょう?

オープンして半年は、父から毎日毎日どうなっているのかとチェックが入っていましたが、最近は変わってきて「なんか新作作った?」みたいに言われるようにはなりました。でも今でも認められていないし、頭が上がらないです。いつか任せて、と思うんですけど「もう無理だし閉めろ」と言われたこともあるし「俺が死んだら売れ」とか、今も言われていますよ……(笑)

ーいま、そして今後に向けた思いを教えてください。

祖父や父がいなければ私はありませんでした。チョコレート屋を継いで職人になったのは運命。10年パリにいて無茶していますが、私は安定しちゃうとだめなんですよね。

近くには有名なチョコレート店が多いですが、私のチョコレートを選んでほしい、という気持ちが強いです。マレ地区はそういうところ。自分の成長のためにもフランスでやっています。20年後、3代目として立つためにです。祖父、父に負けないチョコレートを作りたいです。
ショコラショーは地元の方にとても人気があるそう

ショコラショーは地元の方にとても人気があるそう

今年から、新たにショコラショーの販売が始まりました。定番の「クラシック」のほか、日替わりで西京味噌を使った「ミソ」や三河みりんを使った「ミリン」のショコラショーも。

「ショコラショーの『カフェ』を、毎日夜になるとおじいちゃんが飲みに来てくれて、朝は毎朝、おばあちゃんが飲みに来てくれるんです。この間はお孫さんを連れてきてくれました」と恵美子さん。

私が伺った日には、神奈川県から卒業旅行でパリに来たという女性お二人が「セブンルールみました!」とチョコレートを買って、感激していました。
パティシエの木村さんが作るガトーも魅力的!

パティシエの木村さんが手掛けるガトーも魅力的!

「日本に帰ったら佐野さん(お父さまの佐野隆シェフ)の娘と言われますけど、パリだと、父はEmikoのパパと言われます」と笑う恵美子さん、これからも頑張っていただきたいです。

みなさんもパリ旅行の際はぜひどうぞ。私もまた「レ トロワ ショコラ」のショコラを食べに行くのを楽しみにしています。

DATA
Les trois chocolats
レ トロワ ショコラ
住所:45 rue Saint Paul75004 Paris FRANCE
アクセス:メトロ Saint-Paul駅 ( 1番線 )、 Sully-Morland駅 ( 7番線 )
営業時間 : 11:00 – 20:00 ( 月曜日休業 )
電話番号 : +33 (0)1 44 61 28 65
公式サイト
※日本語のできるスタッフがいるので、旅行でパリへ出かける方も安心です
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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※メニューや料金などのデータは、取材時または記事公開時点での内容です。

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