運動と健康

運動しすぎ・ストレッチしすぎは逆効果?運動の注意点

【アスレティックトレーナーが解説】運動や激しいスポーツをしたりした翌日、ひどい筋肉痛に悩まされた経験はありませんか? 体が硬いからと痛みを無視してストレッチをしていませんか? 体力レベルや柔軟性から運動強度を考えることは大切。運動は心身にいいものですが、合わない運動ではケガのリスクも高まります。自分にあった運動の見つけ方も合わせて解説します。

西村 典子

執筆者:西村 典子

アスレティックトレーナー / 運動と健康ガイド

運動時間・強度・頻度はゆるやかに増やすことが大切

ランニングをする男性

運動時間・強度・頻度を少しずつ段階的にあげていくことが運動効果を高めるコツ

健康のために体を動かそうと思って、いきなり激しい運動に参加したり、長時間のスポーツを続けたりすると、体へのダメージは予想以上に大きなものとなります。翌日以降に筋肉痛が残るだけではなく、肉体的な疲労が蓄積されやすくなり、今度は動くことが億劫になってしまうことも……。スポーツ選手においても運動強度の高いものを毎日続けて長時間行っていると、体が回復する前にまた大きな負担を筋肉などにかけるため、やがては運動をしすぎることによる「オーバートレーニング症候群」を発症することがあります。運動のしすぎによって、心身に変調をきたし、回復するのに数ヶ月といった長期間を要するようになります。

運動習慣がある人は今まで行ってきた運動時間や強度・頻度を少しずつ増やしていくようにしましょう。20分ウオーキングしている人は、20分から30分といった具合に時間を少しずつ増やしていく。同様に強度であればウオーキングをジョギングに切り替える、頻度であれば週2回行っていたものを週3回にするといった具合に、急激に増やすのではなく少しずつ増やしていくことが大切です。

今まで運動をしてこなかったという人はまず運動を「心地よい」と感じる強度で始めるようにします。目安としては「運動の途中で話しかけられても答えられる」程度の強度です。翌日以降の筋肉痛はどうしても起こってしまうと思いますが、運動後の適切なクールダウンと食事、入浴、十分な睡眠等、心身のケアを行うようにすると筋肉痛は最小限度におさえられることが期待できます。
 

ストレッチも伸ばしすぎは良くない?

パートナーストレッチ

パートナーストレッチの際には相手に痛みを我慢させないように心がけよう

また、体の柔軟性を高めるためにストレッチをしている人は多いでしょう。手軽に室内でできますし、運動強度も比較的軽いものが多いので取り組みやすい運動の一つと言えます。

一方で体の硬い人が、痛みを我慢してストレッチをすると筋肉や腱などの軟部組織を傷めることにつながります。体の柔軟性には個人差がありますので、特にパートナーストレッチで相手の体を押す場合は、相手が痛くないレベルでゆっくりと筋肉を伸ばしていくことが大切です。ストレッチをしているときに伸ばされている感覚以外に部分的に痛みを伴う場合は、筋線維が傷んでいわゆる「肉離れ」を起こしていることがあります。肉離れかもしれないと思ったらストレッチは行わず、氷などを使って痛みのある部位を冷やす等の応急手当を行いましょう。しばらくたっても痛みが変わらない、または悪化する場合は早めに病院で適切な処置を受けることをおすすめします。

効果的にストレッチを行うポイントとしては、息をゆっくり吐きながらゆっくり伸ばすようにするということ。息を吐くことで筋肉はゆるみ、より伸びやすくなります。またお風呂上がりや運動後など体が温まった状態は筋肉も温まっているのでよりストレッチ効果が高まりやすいといわれています。ストレッチをするタイミングも考慮してみると良いでしょう。
 

膝痛・腰痛・疲労骨折など……運動が原因となるリスク

ウォームアップをする女性

筋力や体の柔軟性が低下しているとケガをしやすくなる

ランニング初心者の方がランニング練習を繰り返し行っていると、膝や足首が痛くなったり、腰痛になってしまったりすることがあります。ひどい場合にはすねや足の骨を疲労骨折してしまうこともあります。こうしたケースをみると「やはり激しい運動はやめておいたほうがいいのでは……」と思うかもしれませんが、この場合も運動時間や強度・頻度を見直すことが大切になってきます。練習内容が自分自身の体力レベルにあっていない場合、筋力が伴っていない場合、体の柔軟性が低下し、姿勢が崩れた状態で繰り返し運動していた場合にも、運動によってケガをすることがあります。

スポーツによるケガは打撲や転倒、衝突など突発的に起こるものを急性のスポーツ外傷、繰り返し起こる負荷が原因となってケガをする慢性のスポーツ障害と大きく二つにわけて考えられますが、時間をかけて発症する慢性のスポーツ障害はある程度予防することが可能です。多くの場合痛みを感じる前に「何かいつもと違う」「運動前後に軽い痛みがある」といった予兆がみられますので、それを見逃さないことや痛みを我慢しないことなどが運動によるケガを回避することにつながります。
 

自分の健康状態を把握しておくこと

ゴルフをする男性

自分の健康状態を把握しないまま無理な条件で運動をすると、体に大きな負担がかかる

急に体を激しく動かすことによってまれに運動中に突然心臓が止まってしまうことがあります。本人が自覚していない心臓疾患など内科的な要因によるものが多く、心臓に大きな負担をかけるマラソンやジョギングなどは運動前にメディカルチェックを受けることが不可欠です。近くに除細動器(AED)などがある場合は気づいた人が一次救急救命を行い、命が助かるケースもありますが、自分の健康状態を把握していないまま激しい運動を行うことはとてもリスクの高い行為といえるでしょう。ジョギング、マラソン、ゴルフなどでこのようなケースが散見されますが、疲労がたまった状態やウォームアップを十分に行っていない場合、睡眠不足などが続いている状態で激しい運動を行うことは体に大きな負担がかかることを理解しておきましょう。

運動をすることは健康的な生活を送る上で欠かせないものですが、その一方で過度な負荷をかけたり、間違った知識で運動を行ったりすると心身にとって大きな負担となってしまいます。自分にあった運動強度を確認し、無理のない範囲で行うようにしましょう。
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