辛い花粉症症状に対応策はあるのか
春は花粉症で悩まされる人が増える季節です。薬で症状を抑える方法もありますが、食事で対処する方法はないものでしょうか?
西洋医学の考え方では、症状が出る前から抗アレルギー薬を服薬したり、症状を抑えるための薬を使ったりする、薬物的な対処療法が中心になります。
薬に頼るだけでなく、食生活でも何かしらの対策をしたいと、いわゆる「花粉症に効く食べ物」「花粉症に効く飲み物」などを探す方は少なくありません。まず前提として、食べ物は薬ではないので、薬のような「効果」を求めることはできません。今回は花粉症と食べ物の関係を、管理栄養士の視点で考えてみたいと思います。
東洋医学の視点で見る「花粉症」のメカニズム
西洋医学では薬による対症療法が中心になることは、上記で述べた通りです。ここで少し視点を変えて、東洋医学の花粉症の捉え方を見てみましょう。東洋医学では「陰陽五行説」を中心に症状を分析していきます。陰陽とは、月と太陽、女と男のように、対となるものを指します。
五行説は、木→火→土→金(きん)→水(→木)の5つに分類されます。この関係は木が燃えて火になる、火が燃え尽きて灰になると土へ返る……と、順に変化していきます(参考:田辺三菱製薬:生薬薬学)。
東洋医学では、それぞれ木が肝(胆)、火が小腸(心臓)、土は胃(脾臓)、金は大腸(肺)、水は膀胱(腎)5つの臓器を対応していると考えています。
この関係は先述の「木→火→土→金→水」と同様で、小腸(心臓)を強くするには、肝(胆)を強くする必要があり、胃(脾臓)を守るためには、小腸(心臓)を守る必要があるというよう形で、弱くなっている臓器の1つ前に置かれている臓器をケアすることが重要と言われています。これを「親子の関係」と例える漢方医もいます。
この考え方では、花粉症の症状である鼻水、目のかゆみといった症状は、呼吸器(=肺)が弱っているために起こると捉えます。肺の1つ前は「胃(脾臓)」ですので、消化器のケアを行う必要があると考えるのです(参考:漢方の知恵袋)。
腸内環境を整えるのは花粉症対策に有効か
次に、西洋医学の研究に目を移しましょう。花粉症の症状が食品で軽減できたという論文は非常にたくさん発表されていますが、特に注目すべきなのは「プレバイオティクス」や「プロバイオティクス」すなわち、ビフィズス菌で花粉症が軽減したというものでしょう(※1・2)。ここで1つのデータを見てみましょう(※3)。中等度のスギ花粉症症状のある患者40名にビフィズス菌(BB536)入りヨーグルトと非配合のヨーグルトを1日200g、14週間連続で食べてもらったところ、BB536入りのヨーグルトを食べた群の方が、症状が軽かったという報告です。一方で、腸内細菌叢は個々人によって異なると言われているため、全員に同じビフィズス菌が効果があるかどうかは分からないという指摘もあります。実際、この論文でも、ビフィズス菌の種類によっては改善効果がみられなかったものもあると記されています。そのため高い効果が期待できるとは言い切れませんが、試してみる価値はあるかもしれません。
また、腸内環境を整えるためにはビフィズス菌のエサとなるオリゴ糖を摂取することも有効だと言われています(※4)。オリゴ糖は、さまざまな自然食品に含まれていますが、気になる場合は「オリゴ糖」としても市販されていますので試してみるのもよいでしょう(※5)。
また、日本で古来から食されている豆製品やごまなどの、いわゆる「まごわやさしい」に該当する食品も、オリゴ糖を多く含む食品として知られています。また、食物繊維を多く含むため「噛む回数」が増え、「唾液の分泌」が増えることから、免疫機能が高まるとも言われています(※6)。若干、調理は面倒なものが多いですが、試してみる価値はあると思います。
腸内細菌叢を整えるために必要なことは、以前の記事「便で分かる腸内環境…腸環境を整える腸内細菌とは」にも記してあります。ぜひ参考にして下さい。
他にも「抗アレルギー作用」を持っている食品として、「べにふうき緑茶」「甜茶」などについての研究報告もみられますが、ビフィズス菌と比べるとその数は少ないようです(※7・8)。
特定の食品だけに頼らず、基本の食生活で体調管理を
以上、今回はさまざまな抗アレルギー食品について論文から考察を進めてみましたが、いずれにしても大切なのは基礎体力。そもそも体調が整っていない状態でいわゆる抗アレルギー食品ばかりを摂取しても、期待するような結果は得にくいかもしれません。健康的な食の基本は、「主食(ご飯、パン、麺)」「主菜(肉、魚、卵、豆腐)」「副菜(野菜のおかず)」が揃った、栄養バランスのよい食事。日ごろから食生活にもなるべく気を配り、基礎体力をつけられるように心がけることが大切です。■参考論文
※1 ヨーグルト・乳酸菌飲料摂取によるアレルギーの発症抑制(PDF)
※2 Lactobacillus acidophilus L-55含有ヨーグルト引用のスギ花粉症に対する臨床効果の検討(PDF)
※3 プロバイオティクスとその臨床的展望(PDF)
※4 乳果オリゴ糖含有クッキーが若年女性の排便および腸内菌叢に及ぼす影響(PDF)
※5 オリゴ糖―現在の市場での動きと課題(PDF)
※6 実験的な唾液分泌機能低下が食物咀嚼時間と嚥下時食塊水分量に及ぼす影響
※7 抗アレルギー効果のある茶葉成分(PDF)
※8 スギ花粉症に対する甜茶飲料の臨床的検討(PDF)