「頭金を用意しない住宅購入」という視点
この記事は、「頭金を用意しない住宅購入」をお勧めする内容ではありません。頭金は用意しているが「購入時に使う」のと「預金として取っておく」のと、どちらが「より安心なお金の使い方か?」との視点で考えています。ガイドは以前に「繰上げ返済」には注意が必要と記事を書きました。本稿はその内容にも通じるのですが、世間一般が「通説」と考えていることを時には疑ってみることも必要です。
※「繰上げ返済の前に考えておきたいメリット・デメリット」
https://allabout.co.jp/gm/gc/425639/
「頭金を20%入れたローン」と「頭金を使わないフルローン」の比較
住宅購入時に「頭金を20%用意してローンは80%に抑えましょう」という話は、住宅購入時の定番となっている感がありますが、果たして本当にその住宅ローンは“安心かつお得”なのでしょうか。それでは、次の条件で、「頭金を20%入れたローン」と「頭金を使わないフルローン」の比較をしてみたいと思います。(条件)
・物件価格:5000万円
・融資期間:35年
・金利:2.0%(固定金利)
・借入額:
(試算1)頭金1000万円を使い、4000万円のローンを組んだ場合
(試算2)頭金は使わず、5000万円のフルローンをあえて借り、手元に残した1000万円を住宅購入11年目に「期間短縮型」で繰上げ返済した場合
【金利2.0%、期間35年の場合】
(1)頭金を20%入れるメリット
- 頭金を入れることで 返済月額が抑えられる
- 頭金を入れローン額が小さくなることで、保証料や抵当権設定の登録免許税の負担を抑える事ができます
- 住宅購入当初に頭金を20%入れて、かつ、毎月の返済額を16万円とすることで、ローンの期間を27年で完済でき、総支払利息を1180万円とすることも可能です。損得勘定で考えれば、この方法が最も「お得」と言えますが、しかしながら、この場合は「期限の利益」の有効活用という点で、損失とも言えます。その意味からこの度の試算は「融資期間を35年取る事」を前提に試算しています
(2)頭金を使わないメリット
- 1000万円という大金を手許において置く安心感
- 期間短縮型の繰上げ返済を11年目に行うことで、総返済利息額は「(1)頭金として使う」場合と比較して、127万円以上も少なく済みます
- 年末のローン残高に応じて計算される「住宅ローン減税」を10年間最大限に有効に使える可能性があります
- 団体信用生命保険が付いているので、ローン契約者が万が一亡くなったとき、繰上げ返済の前であれば、「(1)頭金として使う」場合と比較して、遺族に1000万円多く残すことが可能となります
フルローン(頭金を使わない)最大のメリット
頭金を使わずにフルローンをあえて組む最大のメリットは、現金が手元に残るという事です。「現金」がある安心感です。これは借金返済に苦労した経験のある人であれば、痛いほど良く分かります。- 借金があっても“現金”があれば自殺しなくて済む人もいます
- “現金”さえあれば生活ができます
- “現金”さえあれば、その“現金”はどのようにでも使えます
- ”現金”さえあれば……
正しい借金との付き合い方
ゆとりある生活を送るために、高利の借金は早期返済が望ましいですが、低利かつ超高額の住宅ローンは、ゆっくりと返済すること。これがガイドの理想です。借金は、なんでもかんでも早く返せばよいというものではありません。「損得」よりも「リスク管理」という目線を大事にしてください。●大きな借金(金利の低い借金)はゆっくり返済
●小さな借金(金利の高い借金)は急いで返済
これが正しい借金との付き合い方です。
この度の試算は「金利2.0%」で計算しています。金利が低ければ、結果は異なるのでは?との意見も有ろうかと思います。そこで、「金利1.0%」で試算した結果も最後に掲載いたします。
【金利1.0%、期間35年の場合】