INDEX
健康経営とは?そもそもの意味を知る
健康経営の対象は、経営層からパートまでの全社員
健康経営に関する指定銘柄・認定制度・表彰制度が登場
健康経営優良法人認定制度「ホワイト500」とは?
健康経営はどこからはじめればよいのか
先端企業の健康経営の取り組み事例を紹介
健康経営とは?そもそもの意味を知る
今注目の「健康経営」とは?
その意味は、「経営者が従業員とコミュニケーションを密に図り、従業員の健康に配慮した企業を戦略的に創造することによって、組織の健康と健全な経営を維持していくこと」です。
健康経営研究会の岡田邦夫理事長は、「健康経営とは、『企業が従業員の健康に配慮することで、経営面でも大きな成果が期待できる』との基盤に立ち、健康管理を経営的視点から考え、 戦略的に実践することで」と補足します。
健康経営のメリットを整理してみましょう。
- 医療費負担の節減
- 生産性の向上
- 従業員の創造性の向上
- 企業イメージの向上
- リスクマネジメント面の効果
従業員の健康管理責任者は経営者であり、その指導力のもと、健康管理を組織戦略に則って展開することがこれからますます重要になるでしょう。
健康経営の対象は、経営層からパートまでの全社員
健康経営の対象は役職員も含めた全従業員となります。今の企業にはパートやアルバイト、契約社員や一部派遣社員などさまざまな雇用形態の従業員がいますが、そのすべてが対象です。また、外国籍の従業員がいる企業も増えています。価値観・文化が異なるさまざまな従業員全員の健康に留意することが健康経営であり、この健康には身体のみならず精神面も含まれます。
健康経営を考えるにあたり、最初に必要となるのが、全社員の勤務状況の把握です。どのような働き方をしているか把握しないことには、対応策が見えません。法定の定期健康診断の結果と勤務状況を照らし合わせ、対応策を検討します。
健康経営に関する指定銘柄・認定制度・表彰制度が登場
健康経営には認定制度・表彰制度も
2012年 日本政策投資銀行「健康経営格付」
選定企業には、融資の金利優遇特典
2013年 東京商工会議所 政策提言
中小企業活性化のため「健康経営のすすめ」を作成、政策提言
2015年 健康経営銘柄の選定
経産省と東証が共同して開始「健康経営銘柄」を選定
2015年6月 厚生労働省「安全衛生優良企業公表制度」の受付開始
厚労省、労働災害の防止や労働者の健康増進に積極的な企業を公表
2015年7月 「日本健康会議」が発足
経済団体、保険者、自治体、医療団体等が連携し、健康寿命延伸と医療費適正化について実効的な活動を行う
2016年 「健康経営優良法人認定制度」の創設
「ホワイト500」とは、経済産業省が2016年に創設した認定制度「健康経営優良法人」のうち、規模の大きい企業や医療法人を対象とした大規模法人部門の認定法人を指す愛称です。大規模法人部門と中小規模法人部門の2部門に区分して認定しています。
このように大企業のみならず、中小企業に対する施策も増えています。
【経産省】経営者へのノウハウの蓄積・共有(商工会議所等を通じて)
「健康経営ハンドブック」(PDF)の制作と公表
指導、助言を行う「健康経営アドバイザー制度」の創設
【厚労省】 保険者機能の強化
協会けんぽによる中小企業向け保険事業の強化
【経産省・厚労省】 インセンティブ付与
政策金利の優遇や、保険制度上のインセンティブ
健康経営優良法人認定制度「ホワイト500」とは?
上記の中で特に注目度の高いのが、経済産業省の「健康経営優良法人認定制度」です。これは優良な健康経営を実践している法人を顕彰する制度であり、規模の大きい企業や医療法人を対象とした「大規模法人部門」(ホワイト500)と、中小規模の企業や医療法人を対象とした「中小規模法人部門」の2部門に分け、それぞれ「健康経営優良法人」を認定します。
「ホワイト500」の認定を受けるためには、経済産業省が実施する「健康経営度調査」に回答し、「ホワイト500」の基準に適合しているかの判定を受け、適合となった場合に限り、申請資格を得ることができます。
認定条件は、健康経営銘柄選定の必須項目と同じく、経営理念(経営者の自覚)、組織体制、制度・施策実行、評価・改善、法令遵守・リスクマネジメントで、法人の規模に応じて達成レベルの基準が設定されています(詳しくはこちら。2018年の受付は11月から開始)
健康経営優良法人認定を受けることのメリットは数多くあります。
まずは採用面です。サービス残業やパワハラなども問題を抱えた「ブラック企業」が注目されており、この認定を受ければ「政府お墨付きのホワイト企業」というイメージになり、採用時に学生や中途応募者にアピールできます。その延長として、企業イメージ・ブランディングの向上にもつながります。
また、認定企業に対して低利融資の優遇措置をとる銀行・信用金庫やインセンティブを措置を用意する地方自治体もあります。また、企業間取引においても取引先の労働衛生や従業員の健康の状況を把握・考慮する企業が増えており、「ホワイト認定」が取引に好影響するケースもあります。
健康経営はどこからはじめればよいのか
これだけメリットのある健康経営ですが、その範囲は広く、担当者はどこからはじめればいいのか、戸惑うことも多いでしょう。ここでは、法定の「定期健康診断の100%実施」からはじめましょう。そして、従業員の健康に関するコンプライアンス意識を徹底が必要され、ストレスチェックなどの法的に要求される事項を確実に実施します。
そうした部分から、自社の足りないところが見えてくるので、次はその対策を実行していきましょう。人事労務的な法改正をきちんとウォッチし、確実に対応することが必要です。
先端企業の健康経営の取り組み事例を紹介
法的要求事項を実施したら、次に何をすべきでしょうか。日本政策金融公庫の資料によると、以下のような取り組み事例が紹介されています。
- 社長による「食」の情報提供
- 「メモリアル休暇」の新設
- 毎朝のラジオ体操や禁煙運動
- 建設現場の衛生管理を徹底し、働きやすい職場を創設
- 健康診断は診断後こそ重要
- 健康状態の共有に向けた工夫
- 要再検査受診率100%の達成に向けて
- 残業時間を削減し、ワークライフバランスを追求
- 全国労働衛生週間を活用した行事計画の策定
- 有給取得の推進と健康データの還元
- 健康教室の開催
経済産業省の「健康経営会議」の資料によると、下記のような取り組みも紹介されています。
(啓蒙関連)
- 目標体重に挑戦する「ダイエットチャレンジ」の実施
- 毎年10~11月を「健康生活月間」とし、各自が目標を決め生活習慣の改善に取り組む
- イントラサイトに「健康レター」を毎月配信
- 減量ゲーム(減量キャンペーン活動)の導入
- 健康アプリを導入、グループ間で競争しながら生活習慣の改善の目指す
- 新入社員に適切な睡眠や食事などをアドバイスする
- 健康教育を30、40、50代の年代別で実施
- 35歳の従業員を対象とした「ヘルスアップセミナー」の実施
- 社長の血液サラサラ指数を従業員が超えられるかどうかをイベント形式の企画にした「社長に挑戦! サラサラ宣言」
- 従業員の家族や取引先へ健康増進に関する手紙を送る
- 職種別の生活習慣指導の実施
- 「健康を測る環境づくり」として、事業所に体組成計と血圧計を設置
- ストレステストをWeb化して、通年で受信できる体制とした
- 人事担当役員や上長からの定期健康診断の受信勧奨
- 部署や事業所ごとに受診率を公開し、競う
- 有所見者の診断結果に「イエローペーパー」を同封
- 四半期ごとに有給休暇を計画的に取得する「ホームホリデー」を時間単位、半日単位でも取得できる
- 四半期ごとに必ず1日有給休暇を取得する「俺(私)の休日」
- 全員参加型の「ヘルスアップキャンペーン」の実施
- 1ヵ月間、腹八分目を心がける「ハラハチキャンペーン」の実施
- 社員食堂のしょうゆ差しをワンプッシュタイプに変更
- 1日1万歩、2ヵ月間の「ウォーキングキャンペーン」の実施
- ヨガ体験などの女性社員向け健康増進プログラムの実施
- 睡眠改善プログラムの実施
- お昼寝タイムの実施
- 職場にバランスボールを導入
- 禁煙プログラムを実施し、最初の参加者は社長とした
健康経営実践により、それを自社サイトに掲載するなどして、採用の応募者数が増加したり、従業員の定着率が高まったり、人口減少の日本において、ますます必要とされる戦略がこの健康経営なのです。
参考資料)
日本政策金融公庫(PDF)
経済産業省