アドバイス1 時間軸を考えれば、優先すべきは教育資金や住宅ローン
まず、老後資金についてですが、「全然考えていないので不安」とのこと。結論から言えば、今はまだ考える必要はありません。理由は、時間軸による優先順位を考えれば、教育資金の準備と住宅ローンの完済が優先されるからです。加えて、ご夫婦ともまだ20代。老後は30年以上先のことです。時間はタップリあります。逆に言えば、老後について不確定要素がまだまだ数多くあります。それをすべて想定して備えることは、あまりに大変であり、かつキリがありません。
では、教育資金や住宅ローンに関して、Kさんの家計に何か問題があるかと言えば、現状はさほどありません。教育資金は、学資保険で200万円ずつ。さらに毎月の貯蓄のうち、児童手当分(現在は月2万5000円)を全額、教育資金として貯めることができれば、これもほぼ200万円ずつとなり、大学費用として目安の1人400万円(私立文系の大学にかかる4年間の学費)を備えることができます。住宅ローンも、一度繰上返済をされて、完済はご主人59歳のとき。定年前に払い終えるという点で、ひとまずは安心です。
アドバイス2 目的を決めず、貯蓄を増やしていく
ただし、不安材料がないわけではありません。例えば、貯蓄ペースを今後も維持できるかどうかは不確定です。とくに、今後数年間は貯蓄が難しい時期になりそうです。もしも下のお子さんが無認可保育園への入園となれば、上のお子さんが小学校入学まで、2人合わせて月7万1000円の保育園費用が発生します。Kさんがパートで働いたとしても、収入が月6万円なら、それらコストを全額カバーすることはできません。また、お子さんが中学もしくは高校から私立に入学する可能性も、決してゼロではないはずです。購入した住宅も今後30年、まったく修繕やリフォームが不要というわけにはいきません。ともに別途、まとまった支出が発生するかもしれないということです。
したがって、貯蓄ができない時期は仕方がないと割り切って構いませんので、できる時期は積極的に貯蓄していく。「これは何のため」と決めず、現金が増えていけば、想定外の教育費にも住宅コストにも、そして余れば老後資金にも充てることができます。
家計管理については、目立った無駄はなく、上手に管理されていると思います。しいて言えば、保険の見直しは可能です。Kさんの終身保険は払済保険にして、保険料コストを下げてもいいでしょう。必要な死亡保障は、割安な掛け捨ての定期保険や収入保障保険で確保する。現時点では、死亡保障はあえて必要はないですが、働くようになったら500万~1000万円はあっていいでしょう。
アドバイス3 無理のない掛け金で「iDeCo」を始めてもいい
それでも、老後が心配という気持ちは理解できます。そこで、今後のマネープランや家計のあまり負担とならない老後対策を。まずは、具体的な老後資金づくりとして、ご主人名義で「iDeCo(個人型確定拠出年金)」を始めてもいいと思います。運用益や配当金等が非課税になる他、掛け金が全額、所得控除となります。つまり、確実に所得税、住民税が還付されるということ。これは大きなメリットです。
毎月5000円以上1000円単位で始められて(勤務先に企業年金制度などがない会社員の場合、月2万3000円が上限)、掛け金の金額は年1回変更でき、休止や再開はいつでもできます。掛け金は60歳以降でなくては引き出せませんので、あまりiDeCoにシフトせず、家計の状況で金額等を判断してください。
また、「投資に関心がある」とのことですので、これもiDeCoで可能です。申し込む金融機関が用意している、複数の限られた投資信託から選ぶ形にはなりますが、これから運用を始めるという人にはそれでもいいでしょう。積み立てによる購入で、結果的に長期投資になることもリスクの軽減につながります。ただし、利用には手数料等のコストが発生します。金融機関によってその金額が異なりますので、事前に調べておくといいでしょう。
また、夫婦の働き方もまた老後対策となります。元気に65歳、70歳と長く働けば、それだけ手持ちの老後資金の目減りを抑えます。さらに、もしKさんが今後、パートではなくフルタイム勤務=正社員を目指せば、収入アップはもちろんのこと、厚生年金に加入するわけですから、受け取る公的年金の受給額も増えます。これもまた立派な老後対策なのです。
相談者「K」さんから寄せられた感想
アドバイスありがとうございました。先生からの的確な指示をいただき、ほっとしました。イデコについては、調べてよさそうなら少額で始めていきたいと思います。この世の中なにが起こるかわからないので、私もがんばって働きたいと思います。本当にありがとうございました。教えてくれたのは……
深野 康彦さん
取材・文/清水京武
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