待望のピュアEVフォルクスワーゲン「e-ゴルフ」が上陸
2015年の発売予定だったフォルクスワーゲンの100%電気自動車であるe-ゴルフ。発売延期から約2年越しとなる2017年10月から受注を開始した。
2015年に発売が延期された理由は、航続可能距離をより延ばすため、さらに日本の急速充電器である「CHAdeMO(チャデモ)」の一部充電器に対応ができないためなどと言われていたが、航続可能距離は2015年の導入予定時の215kmから301kmへとアップし、出力も116psから136ps(最大トルクは最大トルク290Nm)に引き上げられている。
もちろん、「チャデモ」への対応もすませ、充電は急速充電器で約35分で80%まで、普通充電は3kWだと約12時間、6kWへも標準で対応し、こちらは半分の約6時間で満充電が可能。なお、新型リーフは、6kWはメーカーオプションでの対応となっている。
VWゴルフらしさは健在だが
気になるe-ゴルフを街中から走らせると、ゴルフらしい引き締まった乗り味、高いボディ剛性感を味わうことができる。フォルクスワーゲンのファンならまずは「これ、これ!!」と納得できるのではないだろうか。
さらに、「エコ」、「エコ+」、「ノーマル」の3モードのうち「ノーマル」を選んでおけば、モーター駆動らしく発進直後からスムーズかつ力強い加速が可能だ。1人乗車で空荷状態であれば、高速道路に乗っても加速フィールに不満はないと言い切れるほど。
一方、「エコ」、「エコ+」モード時は、出力だけでなくエアコンまで制御されるため、ストップ&ゴーが多い街中などで、短時間もしくは快適な外気温下での利用などに限定される。この状態で空いている高速道路など流れの速い状況で前走車についていくのはなかなか難しい。
電動化されたことで走りの課題は?
専用メーターやシフトレバー前のエンブレムなど、デザインもe-ゴルフ専用となっていて、ブルーのアクセントカラーがフォルクスワーゲンのエコ系モデルであることを主張している。9.2インチの純正ナビ(ディスプレイ)にはe-ゴルフ専用メニューも用意されている
ここまで見ていくと、約300kg増となるピュアEV化の影響がないように思えるが、やはりそこは電動化車両特有の課題も感じられる。
リチウムイオンバッテリー搭載により、よくいえば、重心の低いフットワークといえるものの、逆にガソリン車のゴルフが素晴らしいハンドリングを披露してくれるだけに、床下はさすがに重く感じられる。
旋回時にとくに顕著で、ガソリンエンジン仕様の軽快感を知っているだけになおさらだ。今回の試乗コースは横浜市内と首都高速だったが、これが箱根の山岳路であればより差がハッキリと分かるはず。
また、乗り心地も重量増によって、路面の凹凸に対して大きめのフィードバックが返ってくるような印象を受けた。つまり路面が荒れていると揺すられるような乗り味になってしまう。
ゴルフは「7.5世代」になり、ガソリン仕様は硬さの中にもしなやかさを感じさせる乗り味を得ている印象だが、e-ゴルフはそこまでの柔軟性は持ち合わせていないようだ。
もう1つ気になったのはブレーキで、回生ブレーキは4段階から選択でき、状況や好みに応じてチョイスできるのは電動化車両の利点。日産リーフのように、回生ブレーキで完全停止までは至らないものの、Bレンジにして最も回生を強くすればアクセル操作だけでかなりの加速、減速をコントロールできる。
回生ブレーキの制御ももう少しスムーズだと文句の付けようもないが、肝心なのは、メカ(ブレーキ)のフィールが少し思わしくない点。どこか引っかかるようなブレーキタッチは、ガソリン車ではあまり感じられなかった課題といえるかもしれない。
ガソリン車ベースと考えると総合力は高い
前後席下にリチウムイオンバッテリーを搭載しているがシートの大きさや高さ、室内の広さなどはガソリン仕様から損なわれていない
多少意地悪く、細かな点まで見ていくと、こうした課題や熟成不足を感じさせる一方で、静粛性の高さや先述したようにスムーズな加速などEV化のメリットも十分に感じられる。路面が滑らかであれば、乗り心地の硬さや重さもほとんど意識させられることなく、静かな車内は上級のDセグメントと遜色ないほどの質感も備えている。
どんなモデルも長短併せ持つのが常識で、ガソリンエンジンをベースに仕立て、しかもこれが日本では「初出」となるピュアEV仕様であることを考えると、十二分に合格点をクリアしている。残りの問題は、499万円という価格をどう捉えるかだろうが、日産リーフやテスラ、BMW i3などとは別の選択肢として提示された(日本に導入してくれた)意義も高く評価すべきではないだろうか。