Japanese Musical『戯伝写楽 2018』
1月12~28日=東京芸術劇場プレイハウス、2月3~4日=久留米シティプラザ ザ・グランドホール、2月7日=日本特殊陶業市民会館ビレッジホール、2月10~12日=兵庫県立芸術文化センター阪急 中ホール『戯伝写楽』
“天才絵師、東洲斎写楽は女だった“という仮説のもと、中島かずきさんが江戸を舞台にクリエイターの“業”を生き生きと描き、2010年に誕生したミュージカルが、装いも新たに登場。今回は演出を河原雅彦さん、作詞を森雪之丞さんが手掛け、さらなるパワーアップを図ります。
初演でもパワフルな歌声とスケールの大きな存在感が好評を博した橋本さとしさんが主人公の斎藤十郎兵衛を演じるほか、絵を愛する娘・おせいを中川翔子さん、喜多川歌麿を小西遼生さん、花魁・浮雲を壮一帆さんが演じ、新たな文化が次々と生まれていった時代のエネルギーを“体感”させてくれるミュージカルとなりそうです。
【演出・河原雅彦さんインタビュー】
「荒唐無稽な熱い人間ドラマを、“芝居心”たっぷりの
皆さんの力を借りて作り上げています」
河原雅彦 福井県出身。演劇やライブ活動を行う「HIGHLEG JESUS」総代として作・演出を手掛け、02年に解散。俳優・演出家・脚本家として幅広く活躍している。ミュージカル、音楽劇の演出作品に『ロッキー・ホラー・ショー』『魔都夜曲』『50Shades!~クリスチャン・グレイの歪んだ性癖』『ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ』等がある。(C)Marino Matsushima
「庶民の手で新しい娯楽が次々と生まれて、自由を謳歌し始めてる時代だから、ものすごく活気があったでしょうね。でも僕は特に造型が深いわけではなく、写楽の正体が謎であることも全く知りませんでした。今回知って、なるほどエンタメの題材になりそうな面白い話だと思いましたね」
――初演の舞台は御覧になりましたか?
「DVDで観ましたが、役者さんたちが魅力的で、とっても面白く感じました。ただ、演出家として見ると、出演者の数が限られているなかで、江戸の町が庶民の熱で華やいでいる、町にものすごく力があるというスケール感を出し、観客を引き込んでいくのはなかなか難しそうにも思えましたね。でもこの作品はミュージカルで、いろんなジャンルが混在する(立川智也さんによる)音楽の“でたらめな”感じが、荒唐無稽な物語にマッチして面白いんです。音楽の力も借りつつ、知恵を振り絞ってワンシーンずつ作ってきました。
ヴィジュアル的には抽象的なセットを使いますが、そういう舞台では、出演者一人一人がきちんとそこで“生きている”、魅力的に舞台に立っていることが大前提。かなりハードルは高いけれど、皆さんそれはわかってやってくださっているし、台本がとても面白いエンタテインメントなので、大きな助けになっていますね」
――写楽にまつわるドラマを追いながら、“表現者の業”をエネルギッシュに描いた台本ですね。
「登場人物は(江戸文化の)先駆者ばかりですからね。彼らは何もないところからジャンルやスタイルを生み出したわけで、人間力というか、生きる力が現代の人々よりでかいんだろうなと想像がつくし、そのスケール感を現在のわれわれが想像して再現してくというのが大事なんだろうと思っています。昭和の話だって東京オリンピックの頃の庶民と今の庶民の熱気は違うだろうし、ましてや江戸なんて僕らは生きてもない時代。衣裳も着慣れてないものを着るわけだから、感覚としては翻訳劇に近い。それくらい思い切ってやったほうがいいと思っています」
――キャストの方々の稽古でのご様子をお聞かせください。まずは主人公・十郎兵衛役の橋本さとしさん、いかがでしょうか?
『戯伝写楽』
――絵が好きな娘・おせい役の中川翔子さんは?
「おせいは架空の人物で、或る意味一番スケール感を求められる役なのですが、はじめはどうしても捉え方が現代的で、難しそうでしたね。でもとても頭のいい方で、気づくとぐんぐん良くなっていくんですよ。何より、しょこたん自身も絵を描くのが好きで、今回の役を自分にとって特別なものにしたいという思いがある。自分の枠を超えたものにトライしていらっしゃるので、きっといい“おせい”が生まれるんじゃないかと思います」
――歌麿役の小西遼生さんはいかがでしょうか?
「彼は“演劇道を持っている”というか、芝居心があって、歌一つ歌うにも、歌麿という人物がきちんと立ててないとこういう歌は歌えないということが良く分かっていて、すごくいい俳優さんだなあと思いますね。初演ではクールな歌麿でしたが、今回はホットで、熱いです。新曲もあって、印象がかなり変わると思いますよ。自分のことだけじゃなくて他の俳優さん、他の役についてもよく考察してて、こうあるべきというイメージを持ってる人で、真面目というか、つくづく芝居が好きなんだなと思います」
――吉原で一番人気の花魁・浮雲役の壮一帆さんは?
「素敵な人ですね。彼女もすごく真面目な方です。初演ではソニンがこの役を演じて素晴らしかったけど、今回は年齢設定も違って、壮さんの華というか、魅力がすごく生かされた浮雲になっています。出そうと思っているだけじゃ出ない“色っぽさ”が自然に滲んでいて、そういう意味では新たな浮雲を立ち上げてくれていると思います」
――どんな舞台になりそうでしょうか?
「だいたいこの時期(開幕10日ほど前)になると目星がつくものですが、今回はその余裕もなくて、駆け抜けるだけですね。でも周りは手ごたえを感じてるような感じに見受けられるので、面白くなってるんじゃないですかね。この作品は本が面白いし音楽も楽しいけど、俳優がまずいと演出負けしてしまう。その点、実力派の人たちが一丸となって“もっと面白く”と頑張っているこのカンパニーは、僕にとってもすごく心強いです。まだまだ、行けると思っていますよ。初日の幕が開くまで、もっともっとと思っています」
【観劇レポート】
『戯伝写楽』撮影:桜井隆幸
ラテンにジャズ、ヘビメタ風?と、歌うキャラクターや情景に合わせてくるくる表情を変える曲調(作曲・立川智也さん)は個性的で、“クリエイターたち”の物語にぴったり。写楽の浮世絵作品をあしらったセット(美術・石原敬さん)もアナログで遊び心に富んだ“仕掛け”をほどこしており、リアルなセットとはまた一味違う、写楽的な“かぶいた”精神を表現しています。
『戯伝写楽』撮影:桜井隆幸
『戯伝写楽』撮影:桜井隆幸
『戯伝写楽』撮影:桜井隆幸
『戯伝写楽』撮影:桜井隆幸
『戯伝写楽』撮影:桜井隆幸
『マタ・ハリ』
1月21日~28日=梅田芸術劇場メインホール、2月3~18日=東京国際フォーラムホールC『マタ・ハリ』
第一次世界大戦時に二重スパイとして処刑された踊り子マタ・ハリの愛を描き、2016年に韓国で初演された新作ミュージカルが、日本に上陸。石丸さち子さんの演出のもと、柚希礼音さんが一世を風靡した妖艶なダンサーをどう演じるか、そして彼女の人生に深くかかわる二人の男ラドゥ、アルマン役を、加藤和樹さんが日替わりで演じる(wキャストはラドゥが佐藤隆紀さん、アルマンが東啓介さん)のが話題です。昨年も『デスノート』『スカーレット・ピンパーネル』が上演され、日本でもファンの多いフランク・ワイルドホーンの肉厚の楽曲も聞き逃せません。
【観劇レポート】 第一次世界大戦が混迷を深めていた1917年、フランス。戦火の中を逃げまどいながら人々が“生”への執着を歌う光景に、炎のように赤い衣裳に身を包んだ舞姫マタ・ハリのダンスが交錯する形で、舞台は幕を開けます。
『マタ・ハリ』(C)Marino Matsushima
『マタ・ハリ』(C)Marino Matsushima
『マタ・ハリ』(C)Marino Matsushima
『マタ・ハリ』(C)Marino Matsushima
『マタ・ハリ』(C)Marino Matsushima
『マタ・ハリ』(C)Marino Matsushima
『マタ・ハリ』(C)Marino Matsushima
『マタ・ハリ』(C)Marino Matsushima
*次頁で『ジーザス・クライスト=スーパースター』他の作品をご紹介します!