ミステリーの女王アガサ・クリスティ原作のおすすめ映画を紹介!
アガサ・クリスティ原作のミステリー小説「ナイル殺人事件」が、2022年2月25日にケネス・ブラナー監督&主演で映画化されました。1978年に制作された『ナイル殺人事件』とは少し趣の違う作品に仕上がっています。本作も含め、アガサ・クリスティの原作ミステリーは多く映画化されており、ケネス・ブラナー監督は『オリエント急行殺人事件』(2017年公開)も映画化していますが、この原作も1974年制作されたシドニー・ルメット監督版もあります。日本でも三谷幸喜監督がドラマ化。
というわけで、最新作『ナイル殺人事件』&アガサ・クリスティ原作の映画化作品をピックアップ。映画を通してアガサ・クリスティー・ワールドをご紹介していきます。
名探偵エルキュール・ポアロの最新作『ナイル殺人事件』
本作はアガサ・クリスティ原作小説「ナイルに死す」の映画化で、愛をテーマにした本格ミステリー作品です。エジプトのナイル川をゆく豪華クルーズ。船内はセレブな乗客で埋まり、その中に、エルキュール・ポアロ(ケネス・ブラナー)もいました。乗客の中でもひときわ目立っていたのは大富豪の娘リネット(ガル・ガドット)。
彼女は夫のサイモン(アーミー・ハマー)と豪華客船の旅を楽しみにしていましたが、リネットは船内で何者かに殺されてしまうのです! 今回は海に囲まれた船で起こる密室殺人で「犯人は船内にいる!」というワクワクな展開。1978年版の『ナイル殺人事件』に比べると、雰囲気はよりゴージャスになり、華やかですが、全体的にドラマ重視の印象。ユーモアの要素があまりないかも。 ケネス・ブラナー監督は、ほかのポアロ映画とは全く異なる「名探偵ポアロ」を作り出したいのだなあと感じました。さまざまな伏線が張り巡らせてあるので、ぜひポアロと一緒に推理してください。
2022年2月25日公開
監督:ケネス・ブラナー
出演:ケネス・ブラナー、ガル・ガドット、アーミー・ハマーほか
(C)2022 20th Century Studios. All rights reserved.
意外な真犯人で有名な名作ミステリーの映画化 『オリエント急行殺人事件』
雪崩により雪山で足止めされた豪華寝台列車で起こった殺人事件の謎を、名探偵エルキュール・ポアロが推理するミステリー映画『オリエント急行殺人事件』は、アガサ・クリスティ原作ミステリーの中でも人気の作品。トルコのイスタンブールからフランス北端の街カレーを繋ぐ豪華寝台列車オリエント急行で、富豪のラチェット(ジョニー・デップ)が胸を12カ所を刺されて殺されました。 殺人が行われた時間、列車は雪崩に遭い脱線事故で止まったままで、外部の者の侵入は不可能。ということは、犯人は乗客の中にいる。ポアロは乗客ひとりひとりに話を聞いて推理。ついに意外な犯人を突き止めるのです。 なぜ12カ所も刺されていたのか、犯人の動機は?というシンプルな疑問が、乗客の話からポアロの脳内で紐解かれていく……。真相に驚くこと必至です。
シドニー・ルメット版の傑作『オリエント急行殺人事件』(1974年)
ケネス・ブラナー版に負けない豪華キャストが結集。エルキュール・ポアロはアルバート・フィニーという当時38歳の演技派の俳優で、彼が60代(50代?)のポアロを原形をとどめないメークで熱演。アカデミー賞主演男優賞候補になりました。
事件→容疑者への尋問→犯人の特定という推理小説のセオリー通りの構成ですが、ショッキングな結末への流れが見事。じっくり見たい本格推理映画の傑作です。監督:シドニー・ルメット
ポッチャリしたポアロの名推理を楽しむ『ナイル殺人事件』(1978年)
1974年の『オリエント急行殺人事件』が大成功してから、ポアロ映画が続けて制作されました。ケネル・ブラナー版の最新『ナイル殺人事件』よりも、愛嬌のある名探偵ポアロを演じるのはピーター・ユスティノフです。
監督:ジョン・ギラーミン
容疑者全員アリバイあり! 『地中海殺人事件』(1982年)
ピーター・ユスティノフ版のポアロ映画第二弾。地中海の小さな島の高級リゾートを舞台に、宝石の盗難事件の調査を依頼されたポアロが、その地で女優(ダイアナ・リグ)が殺される事件に遭遇します。
殺された女優は宿泊客全員から恨まれており、この中に犯人が……と思うものの、全員アリバイがあるのです。ところがポアロは見事な推理で犯人のアリバイを切り崩していく。この名推理が気持ちいい! 原作はアガサ・クリスティの「白昼の悪魔」。宿泊客のひとりを演じるジェーン・バーキンのファッションが素敵です。
監督:ガイ・ハミルトン
大富豪毒殺事件の驚くべき真相『死海殺人事件』(1988年)
ピーター・ユスティノフ版のポアロ、最後の映画化作品はアガサ・クリスティの「死との約束」の映画化です。
被害者+家族と船で知り合ったポアロは、この毒殺事件の謎を解くことになるのですが、おそらくこれまで映画化された作品で一番人間関係が複雑かもしれません。心臓病を患い、薬を服用していた被害者の毒殺の方法に事件解決のヒントあり。
監督:マイケル・ウィナー
ミス・マープルの名推理が見られる『クリスタル殺人事件』(1980年)
アガサ・クリスティの小説ではポアロに並ぶ人気探偵ミス・マープル(アンジェラ・ランズベリー)が活躍するミステリー映画です。原作は「鏡は横にひび割れて」。ミス・マープルの住む街に大女優マリーナ(エリザベス・テイラー)が新作映画の撮影のためにやってきます。しかし、彼女の熱狂的ファンの女性が殺される事件が発生。ミス・マープルが解決に乗り出すのです。
マリーナのライバル女優(キム・ノヴァク)が登場し、エリザベス・テイラーとともに往年の二大女優の火花バチバチの共演が話題。本作は犯人が意外というより、殺人の動機が意外。どちらかといえば女性の共感度が高いミステリーですね。
監督:ガイ・ハミルトン
アガサ・クリスティ映画の最高傑作『情婦』(1957年)
アガサ・クリスティの戯曲「検察側の証人」を名匠ビリー・ワイルダーが監督&脚色。アガサ・クリスティの映画化作品中、最高傑作と呼ばれる作品です。金持ちの未亡人が殺され、若い愛人が容疑者として捉えられますが無実を主張。しかし、彼の妻(マレーネ・ディートリッヒ)は、夫が殺人を犯したと裁判で彼に不利な証言をするのです。しかし、これには裏があり……。
古い映画ですが、今見ても鮮やかなドンデン返しは見事としか言いようがありません! ネタバレになるので詳しく書けませんが、愛の深さがそうさせたというか……。体の弱い弁護士と相棒のように寄り添う看護婦のコミカルなやり取りも絶妙。すべてが完成された必見作です。
監督:ビリー・ワイルダー