老後を迎えるまでに収入は2~3段階で減少する

人生100年時代といわれるようになったため、長生きに対する備えがより重要になってきました。しかし、何歳まで生きるかは神のみぞ知る。公的年金と資産の山だけで長生きに備えるのは難しいと言わざるをえないのです。資産の山を築く、キャッシュフロー(終身年金の確保)を増やすことを述べてきましたが、一方で生活をダウンサイジングしていくことが長生きに対する備えの両輪となるのです。
 
老後を迎えるまでに収入は2~3段階で減少する

老後を迎えるまでに収入は2~3段階で減少する



定年退職まで会社を勤め上げた場合、収入(給与)がピークをつけた後、数段階で収入は減少していくことになりますが、50歳代に入ると完全リタイアまでに2~3段階の減少が残されているだけです。最も顕著なのは、60歳で定年退職を迎え再雇用となった時、最後は公的年金を受け取る時になります。

減少額は企業によってさまざまですが、再雇用となった時の収入は現役時代(定年退職前)の5割前後に減少、完全リタイア時にはさらに減少となるようです。その状況を簡単に統計データで確認しておきましょう。

総務省が公表している2020年の「家計調査報告(家計収支編)」によれば、2人以上の世帯のうち勤労者世帯の実収入は50歳~59歳=69万5882円、60歳以上=46万6747円になります。年齢階級別ではこれ以上詳細なデータでは公表されていません。

次は、高齢無職世帯(世帯主が65歳以上の無職世帯)になり、65歳~69歳=29万3608円、70歳~74歳=26万6321円、75歳以上=25万5706円となっています。そして高齢単身無職世帯(65歳以上の単身無職世帯)では13万6964円となっています。

あくまでも平均データなのでわが家とは大きくかけ離れているなと思われるかもしれませんが、世代が上がるごとに収入が大幅に減少していくことがわかるはずです。
 

生活をダウンサイジングしないと資金の山はすぐ平地に

完全リタイアに向けて収入が大幅に減少していくのですから、支出も大幅に減額させていかないと資産の山はあっという間に低くなり、いずれ枯渇することになりかねません。先のデータによれば、勤労世帯の50歳~59歳の消費支出は33万8611円、60歳以上は28万6136円となっています。(いずれも社会保障費等は含まず)

仮に50歳代の支出約34万円を減額せず老後生活(65歳以降)に入った場合、先の収入に照らし合わせると、69歳までは年間約54万円のマイナス、74歳までは同約87万円のマイナス、80歳までは同約99万円のマイナスとなり、80歳までの15年間で約1200万円、85歳までの20年間で約1700万円も生活費だけで資産の山を取り崩すことになるのです。

人生100年時代を考えれば、夫婦2人の時を30年(95歳)、単身の時をさらに10年(105歳)と仮定すれば、生活費だけで約2800万円(単身の場合は年間の取崩額を約9万円と仮定)も必要になるのです。この金額にリタイア後の旅行代、家のリフォーム代、車の買い替え、子どもの結婚資金の援助等々を含めれば、その額は3800万円~4300万円前後になることでしょう。簡易的な概算値でこれだけのお金を準備しなければならないのです。

これだけのお金を完全リタイアまでに準備するのはとても無理と諦めるのではなく、準備ができなければ支出を抑えることを考えればよいのです。仮に夫婦2人の期間30年の生活費を月5万円、年間60万円、単身10年間の生活費を月3万円、年間36万円減額するだけで、105歳までの40年間に2160万円も準備するお金が減少することになり、先の約2800万円の生活費は640万円まで少なくなるのです。

生活費を減額するだけで収支はかなり改善されますが、2020年の支出は新型コロナの影響で巣ごもり生活となった結果、例年と比較してかなり支出が減少しているのです。新型コロナの影響がなかったら、105歳までの生活費は640万円から1500万円前後は増えると考えておくべきでしょう。2020年の統計データは新型コロナの影響で異常値(イレギュラーな数値)が出やすいと認識しておくべきなのです。
 

どうやって生活費を減額していくのか

簡単な試算でも生活をダウンサイジングさせることがかなり効果のあることだとわかったところで、問題はどうやって減額させていくのかです。最も簡単なのは、支出の全項目をたとえば一律2割あるいは3割カットする方法です。この方法は簡単ですが、失敗するリスクが高い方法です。車のハンドルに遊びがあるように、支出項目にも遊び、言い換えれば「聖域(こだわる部分)」を設け、その聖域はカットしないか、カットしたとしても他の項目よりもカット率を低くするのです。その代わり、聖域を守るために他の項目のカット率を高くして全体のカット割合を調整するわけです。

次に減額、カットのやり方です。たとえば、完全リタイアまでに生活費を3割カットするとしましょう。この場合、完全リタイアから3割カットだと生活スタイルが激変することになり、かなりストレスが溜まることになりかねません。これまでの筆者の経験では、一気に3割カットできますか?と質問すると、かなりの人ができますと答えますが、カットの前後で生活が大きく変わってしまい結果として頓挫してしまうことが多いようです。

そこで一気にカットするのではなく、時間をかけて生活をダウンサイジングしていくのです。たとえば、10年間かけて3割カットなら毎年3%ずつカットしていく、あるいは当初5年間は2%ずつ、残り5年間は4%ずつ。当初3年間は2%、次の3年間は3%、最後の4年間は3.75%ずつカットなどというように、カットのやり方に決まりはありません。時間をかけて徐々にカットしていくのがよいはずです。

カットする項目は聖域を除く全ての項目(聖域も一部カット)ですが、ダウンサイジングの効果が高いのは水道光熱費や食費よりも、通信費。通信費よりも生命保険や住宅ローンになります。ダウンサイジングを実行する前にまず行っておきたいのが「家計収支の確認」。まさかないとは思いますが、使途不明金の有無を確認しましょう。収支が把握できていない人は、家計簿をつけることからスタートするのは言うまでもないことです。

【参考文献】55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣(明日香出版社)

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