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【ネタバレ】ドラクエ11と自分だけの物語

PlayStation4とニンテンドー3DSの2機種で発売され、合計300万本以上を販売しているドラゴンクエスト11。その最後の最後に生まれた、ゲームでしかありえない物語を、極上のゲーム体験をお伝えしたいと思います。

田下 広夢

執筆者:田下 広夢

ゲーム業界ニュースガイド

ハマれなかったはずなのに

ドラクエの図

ニンテンドー3DSとPlayStation4で発売され、今後ニンテンドースイッチ版も予定されています。ちなみにガイドはニンテンドー3DS版を遊んでいました

正直に言うと、ガイドはあまり「ドラゴンクエストXI」にはハマれていませんでした。スクウェア・エニックスからPlayStation4とニンテンドー3DS用タイトルとして発売している大人気RPGシリーズドラゴンクエスト最新作、ドラゴンクエストXI(以下ドラクエ11)。2機種合計の販売本数は300万本を超え、評判も非常によく、ガイドの周りでも多くの人がはまっていました。しかし、ガイドはどうにもうまくハマれていませんでした。

ゲームというのは、作品とプレイヤーお互いに響きあって初めて素晴らしい体験が生まれます。多くの人が楽しめた作品だからといって、それが全員にとって素晴らしい体験を必ずもたらすと保証するものではありません。もう何十年もゲームを遊んでいますと、みんな面白いと言ってるのに自分はうまくハマれなかったというゲームに出会うことがいくつもあります。そういう時、ガイドは基本的にそのゲームについてインターネットで何かお話することはありません。こういう人は楽しめて、こういう人にはオススメでない、という情報であれば書くこともありますが、みんなが楽しめている時に、単に自分ばかりが楽しめなかった話をして水を差す必要はないからです。

しかしそれでもドラクエ11というビッグタイトル。クリアはしておくべきだと思って、半ば義務感で最後まで遊びました。しかし、その後ガイドの中での評価は激変します。クリア後、その物語に引き込まれるように止められなくなり、そしてついにはいわゆる裏ボスへとたどり着きます。そこでガイドは、これまでの初代から全て遊んできたドラクエ体験の中でも格別のプレイを味わうことになります。

この記事は、ドラクエ11がガイドに体験させてくれた最高のドラマを、ドラマが伝えるゲームというものの醍醐味を、是非多くの人に伝えたくて、書いたものです。ドラクエ11の重要なネタバレが非常に多く含まれる記事になりますので、それをご了承しただいた方のみ、お読みいただければと思います。また、基本的にドラクエ11を遊んでいる人に向けて、基本的なことはご存知であることを前提に書いておりますことも、ご了承いただければと思います。

壮大な前置き

PS4の図

ガイドは3DS版でしたが、進めていくとPS4版の豪華な画面で見てみたいと思うこともたくさんありました

ガイドはドラクエ11にあまりハマれてはいませんでしたが、それでもパーティーの中で、魔法使いの少女ベロニカがとてもお気に入りで、ベロニカと戦うことを大きな楽しみにゲームを進めていました。しかし、ご存知の通りベロニカはストーリーの途中で亡くなり、その能力は双子の妹であるセーニャに引き継がれます。

ゲームを遊ぶモチベーションを大きく失いながらも、なんとかクリア、そしてクリアしたらもうやめようと思っていたわけですが、クリアデータでちょっとだけ遊んでみると、非常に気にかかることを言われます。ベロニカを復活させる方法があるらしい。世界が崩壊する前にタイムトラベルし、本当の平和を手に入れろと、そういわれるわけです。

ガイドはこれまでのドラクエも、クリアはしてもその後の裏ボスを倒すまで遊びこんではいませんでした。しかし、このストーリー展開で遊ぶのをやめられるゲーマーがどれほどいるでしょうか。むしろガイドが遊んできたそこまでの60時間は壮大な前置きのようにすら感じられます。

ガイドは時間をさかのぼり、ベロニカを救い、そして真の平和を取り戻すべく、「邪神ニズゼルファ」に挑むことを決心します。

油断が生んだ絶体絶命

ドラクエ11の図

ベロニカも助け、レベルもあげ、余裕で倒せると思っていたのが間違いでした…

ドラマが起こったきっかけは、決して熟慮を重ねた深遠なるプレイによるものではありませんでした。むしろその逆、油断と慢心による適当なプレイがドラマの始まりでした。ベロニカを救うことに成功したガイドは、クリアまでとは違う時間軸のパラレルワールドを満喫し、いつしか勇者のレベルを85まで上げ、概ねの有用なスキルは手に入れ、歩けばほとんどのモンスターが逃げ出すような状態になっていました。

おそらくニズゼルファも楽勝だろう、そう思って、ろくに準備もせず、なんなら周りの人の話も適当に流して挑んだのが間違いでした。ガイドがニズゼルファと戦って最初に思ったのは「硬い」ということでした。敵の攻撃は凌げるんですが、とにかくこちらの攻撃が通りません。ニズゼルファは本体の他に右手と左手が別々に体力を持ち、攻撃してきますが、片手を倒すことすら全くできる気配がありません。

最初にマズイと思ったのは、セーニャのMPがつきた時でした。他のキャラクターは全て「めいれいさせろ」を使い、自分で操作していましたが、セーニャだけは「いのちだいじに」にして、状況に応じて勝手に回復してくれるようにしていました。しかし、そうするとセーニャはベホマズンを連発し、MPをどんどん消費していきます。それでも、MPが尽きる前に簡単に勝てると踏んでいたのですが、こちらの攻撃が全く通じないことで計算が狂ってしまったのです。

回復の要であるセーニャのMPがつきると、情勢はどんどん悪くなります。カミュが倒れ、ベロニカも逝き、ツッコミで状態以上を治すシルビアがやられればもう後は悪くなる一方です。それから少しすると、ガイドのパーティーは勇者1人になっていました。

ひかりのたま

ドラクエ3の図

ドラクエ3を夢中になって遊んだあの日々の記憶が蘇ります

勇者1人になって、これはもうやり直しだなとあきらめかけていた時、あるメッセージが気になりました。「邪神ニズゼルファは 闇のころもを まとっている!」。実は戦闘中、何度も見かけているメッセージなのですが、なんとなく無視していました。しかし、よく考えれば無意味なメッセージであるわけもありません。闇の衣…闇の衣…やみのころも…やみのころも? やみのころも!! やみのころもじゃねーか! その時初めてガイドの脳みそが、30年近い時間をさかのぼり、過ぎ去りし時を求めて、小学生の頃の、ドラクエ3を遊んでいた自分と繋がりました! そう、やみのころもと言えばドラクエ3のラスボス、ゾーマがその身にまとい、勇者たちの攻撃を退けていたバリアのような存在です。

闇の衣をまとっているんだとしたら、攻撃は通らなくて当たり前。闇の衣を払うには…「ひかりのたま」だ! しかしひかりのたまなんてアイテムは持っていません、流石にひかりのたまを持っていれば、闇の衣を払うことにも気がついたことでしょう。何かないものかと勇者のアイテムを探ってみると、そこでようやく気がつきました。「勇者のつるぎ・真」のアイテム説明に、「闇の衣を打ち払う 起死回生の聖剣」と書いてあるではありませんか。

試しに勇者の剣を掲げてみると、見事闇の衣を打ち払います。まさしく聖剣…ではありましたが、起死回生となるかは非常に微妙でした。なぜなら戦場には仲間たちの死体が横たわり、こちらの戦力は勇者ただ1人しかいなかったからです。

勇者の盾

グレイグの図

ガイドの頭の中には、笑顔で散っていくグレイグの姿が…

ガイドが真っ先におもいついたのは、セーニャを復活させることでした。ドラクエ11の冒険ではそれまで1度も使ったことがありませんでしたが、ドラクエには自分の命と引き換えに全ての仲間を救う「メガザル」という呪文があります。幸いにも、勇者はザオリクが使えます。セーニャを復活させ、なおかつメガザルを唱えられれば、まだ勝機はあるはずです。

勇者はなんとかセーニャを復活。その間に今度は勇者がニズゼルファによって倒されてしまいます。希望の光となるはずのセーニャ、しかしガイドは再び絶望の淵に立たされます。そこに現れたメッセージは「MPが たりない!」でした。そう、序盤に油断してベホマズンを連続使用させていたセーニャは、メガザルを覚えてはいたものの、それを唱えるだけのMPを残していなかったのです。

もし勝つすべがあるとしたら、ニズゼルファの猛攻に耐えつつ、1人1人復活させるしかありません。MPがないセーニャの道具をあさると、仲間を復活させることができる「せかいじゅのは」がありました。誰か復活させてもセーニャはもう回復呪文は使えません。生き返ってもまたすぐに死んでいくだけかもしれません。祈るような思いで、一番耐久力があり、なおかつザオリクの使えるグレイグを復活させます。しかし、その過程でやはり、今度はセーニャが倒れます。

あきらめかけながらも、グレイグの呪文ウィンドを開くと、そこには予想もしていなかった呪文が乗っていました。「メガザル」です。そう、ガイドは覚えたことなどすっかり忘れていましたが、数少ない呪文の中に、グレイグらしいと言えば本当にグレイグらしい、自己犠牲呪文、メガザルが入っていたのです。

そして、さすがは耐久力のあるグレイグ、ニズゼルファの攻撃で沈むことなく、メガザルを唱えます。それはまさしく起死回生。もちろんその時、そんな演出はありませんが、ガイドの頭の中でははっきりと声が聞こえました。光に包まれたグレイグがこちらを振り向き、「今度こそ、最後まで勇者の盾になる」と誇らしげに言うその声が。

自分の物語

プレイヤーの図

ゲームの物語は、プレイヤーの心の中に生まれるのです(イラスト 橋本モチチ)

全てのMPと、その命を散らしてグレイグが倒れます。引き換えにカミュが、マルティナが、ロウが、シルビアが、セーニャが、ベロニカが、そして勇者が再び蘇ります。その瞬間から、この戦いは絶対に負けられないものとなりました。負けても教会に戻ってやり直せる、セーブしたところから始めればいい、そういう性質のものではなくなったのです。今この時だけしか存在しない、今この瞬間、散っていったグレイグの心に答える物語が始まっているのです。

。MPが無くなったセーニャの代わりにロウが回復役を引き受けます。勇者のギガブレイク、ベロニカのイオグランデ、さらにはマダンテで全体を攻撃、ようやくこちらの攻撃が通ります。マルティナはデビルモードから爆裂脚、最後はシルビアのバイキルトで援護を受けたカミュが分身、そして二刀流の心眼一閃が2,000以上のダメージをたたき出し、邪神ニズゼルファを沈めます。

ニズゼルファを打倒した時、ガイドは心からドラクエ11を最後まで遊んでよかったと思いました。ゲームにはこういうことがあるんです。ドラクエ11を何十時間もあり、幾重にも折り重なった物語があってこそのドラマでした。

気がつけばプレイ時間は80時間を超え、ガイドは冒険を終えることとなりました。しかし、その終わりは、ガイドが想像していたものとは全く違う形になっていました。なんとなく義務感で進めていたはずの冒険は、いつしか仲間との別れが名残惜しく感じられる、自分だけの物語になっていました。

冒頭、お話したように、ゲームというのは、作品とプレイヤーがお互いに響きあって初めて、素晴らしい体験が生まれます。時には、うまくいかなくて、そのポテンシャルが発揮されないこともあるでしょう。でもある瞬間、奇跡のような物語が生まれることもあるのです。それこそ、ゲームが持つ大きな大きな可能性であるように思うのです。

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