ドラクエの呪文は全部言えた

勉強とゲームの図

何故かゲームに必要な用語などは完全に覚えてスラスラと言うことができました

ガイドは小学生の頃、暗記物の勉強が大の苦手でした。漢字の100問テストで9点をとり、社会は47都道府県を覚えるところで挫折しました。なのに何故か、ドラゴンクエスト(以下ドラクエ)シリーズに登場する呪文は空でほとんど言うことができました。いまだに漢字も地図も苦手で、パソコンやスマートフォンの恩恵を受けて仕事をしていますが、当時のドラクエの呪文は空で言えます。メラ、メラミ、メラゾーマ、ギラ、ベギラマ、ベギラゴン、イオ、イオラ、イオナズン。この記事を読んでいる人の中には、自分だってそのぐらい当たり前に言える、という人が結構な割合でいらっしゃるのではないでしょうか。

ドラクエのタイトルに限らず、ゲームに限っては複雑なルールを理解したり、難しい操作をマスターしたり、ややこしいパズルを丁寧に解いて面倒な単純作業を何時間もこなしていました。今の子供達なら、ポケットモンスター(以下ポケモン)シリーズに登場するキャラクターの名前や属性をバッチリ答えられたり、モンスターハンターシリーズで出てくる素材が、どこのモンスターのどの部位から取れるかを把握していたりするのではないかと思います。

良くできたゲームというのは、良くできた学習方法を搭載しているものです。ゲームは楽しく遊んでもらうために、あの手この手でユーザーにゲームを理解させようと試みます。もしかすると、それらの方法は、実際の勉強や仕事の役に立つエッセンスを含んでいるかもしれません。というわけで今回は、ゲームがどうやってゲームを学ばせているかについて、ちょっとお話してみたいと思います。

すぐ使える

ポケモンの図

実はポケモンは対戦で勝とうと思ったら、覚えなきゃいけないことが山のようにあるゲームです

当時、都道府県が覚えられなかったガイドは、そもそもなんで覚えなくちゃいけないかを良く理解していませんでした。覚えたからって使い道のない知識のように感じて興味を持ちませんでした。しかし、ドラクエの呪文は違いました。メラが使えるようになったらすぐさま試して、小気味いい効果音とともにスライムが倒せたことに喜びを覚えました。ホイミがあればやくそうを大量に持たなくてもずっと遠くまで旅ができると嬉しくなり、ルーラを覚えれば背中に羽が生えたような気分にすらなりました。

良くできたゲームは、プレイヤーに新しい要素を与える時、それを使う場面をセットで用意します。ポケモンにはほのお、みず、でんきといったように異なる17のタイプがあり、それぞれ、例えばほのおはみずに弱く、みずはでんきに弱いといったような相性があります。17全てのタイプと、それぞれの対応する相性をいっぺんに覚えなさいと言われたら、これはかなり難しいし、苦痛です。単純に掛け算して17×17で289の組み合わせを覚えなければいけません。ですから、少しずつ登場します、そしてすぐ使えます。でんきのポケモンを手に入れた直後に、みずのポケモンを使う強敵が現れる、という具合です。

こういった体験を繰り返して、最終的に友達との対戦で勝ちたいというところまで到達すると、17全てのタイプとそれぞれ対応する相性はもちろん、自分のポケモンのタイプや使う技のタイプ、さらには相手のポケモンのタイプまで即座に分かるようになります。

次は、ゲームがプレイヤーを上手く遊ばせる要素の、褒めることと、チャレンジさせることです。

すぐ褒める

レイトン教授の図

レイトン教授の何が楽しいかって、1つなぞなぞを解くたびに「俺って頭いいんじゃないか」と思わせてくれるんです

都道府県を覚えるという課題があった時、子ども達はどこに到達すれば褒められるでしょうか。基本は、全て覚えるというところで褒められるんじゃないでしょうか。1つ、2つ間違ったって褒められるかもしれません。10くらい間違えると、もうちょっと頑張ろうと言われそうです。東京都だけは覚えたと威張ってみたらどうでしょう、むしろ呆れられてしまうかもしれませんね。

でも、ゲームは違います。1つでもできたらすぐ褒めます。ドラクエで敵を1匹倒す、スーパーマリオブラザーズでステージ1-1をクリアする、レイトン教授でなぞなぞを1つ解く、みんなちょっと気持ちのいい効果音だったり、得点だったり、ゲームが有利になる要素だったり、ご褒美をくれます。

逆に、遊んでも遊んでもなかなかいいことがないゲームは、すぐにプレイヤーは遊ぶのをやめてしまいます。勉強と違って、やらなくてはいけないことではないからこそ、やりたいという欲求を高めるためにどんどんゲームは褒めるんですね。でも、勉強だってやりたいという欲求を高めることは大事なはずです。

すぐチャレンジする

スーパーマリオブラザーズの図

失敗してもいい小さいチャレンジがたくさんあって、どんどんうまくなる実感が持てるのは良いゲームです

ガイドは漢字の100問テストで9点をとった際、間違えた漢字をノートに2行ずつ練習することになりました。90点をとった子は10個の漢字を2行ずつなので20行ですが、ガイドは9点ですから、91個の漢字を2行ずつで182行の書き取りです。その後、行った再テストでは53点をとりましたが、この中途半端な結果は達成感よりは脱力感や苦手意識をもたらしました。

ゲームでもたくさん努力させて時間をかけてチャレンジをして失敗させてしまうと、相当ゲームにのめり込んだプレイヤーでないとやめてしまう恐れがあります。ゲームの構成でいえば最終ステージ、ラスボスの時にようやくそういう目標を設定します。じゃあ、最初はどうするか、先ほどのすぐ褒めるということと関係してきますが、達成の最小単位を小さく小さくして、その分チャレンジもたくさんたくさん用意します。

先ほどスーパーマリオブラザーズでステージ1-1をクリアしたらご褒美をくれると書きましたが、もう少し細かくお話してみましょう。ゲームをスタートしてダッシュすると出会い頭にクリボーがやってきます。これでいきなりやられるプレイヤーもいます。しかし、すぐさまもう1回チャレンジです。Aボタンでジャンプしてクリボーを避ければすぐその先にはキノコを取ることができます、ご褒美です、マリオが大きくなってテンションが上がります。少し先に進むと穴があいていて、ここに落ちるとミスになってしまいますが、ジャンプで飛び越えられればその先にはフラワー、さらにちょっと進めるとスターがとれて、その先はもうゴール目前。

常に今できることよりもほんの少しだけ難しいことにチャレンジさせ、失敗してもリスクは少なく、やるごとに少しずつ前に進んでる実感があってチャレンジそのものが楽しめる、そういう条件の揃ったゲームはついつい何度も遊んでしまいます。

ゲームと学習効果について、いかがだったでしょうか。最後に、どうしてゲームがこんなにも高い学習効果を持つ仕組みを搭載しているのか、お話して終わりたいと思います。

とにかく遊んでもらうために

桃鉄の図

地図の苦手なガイドが唯一都道府県を覚えかけたのは、桃鉄を遊んでいた時だけでした。残念ながら自分では所有してなく友達の家で遊んでいたので、完全に学習するには至りませんでしたが(イラスト 橋本モチチ)

ガイドは大人になって、職業柄、1つの同じゲームをずっと遊び続けるというよりは、次々に色んなゲーム、色んなジャンルを試しています。その度に新しいルール・操作方法・攻略法が必要になります。にもかかわらず、最近説明書を読むことが非常に少なくなりました。多くのゲームが、説明書を読まなくてもゲームの中で楽しく操作やルールを教えてくれるようになったからです。

ゲームを開発する人達は、自分達の作ったゲームをできるだけたくさんの人に遊んでもらおうと必死です。最初ちょっと遊んだだけで、「これ、なんかよく分かんない」と投げ出してしまうことのないように考え抜いています。ゲームが進化して複雑になればなるほど、初心者が遊びにくくなり、逆にスムーズに遊んでもらうための工夫はとても重要になります。

全てのゲームが親切で分かりやすく、スムーズに遊べるとは言いませんが、多くの人に遊ばれた名作の中には、驚くべき学習効果で巧みにゲームの内容をストレスなくプレイヤーに理解させてしまうものがあるのも事実です。今回ご紹介した、すぐ使える、すぐ褒める、すぐチャレンジする、という3つの要素は思い出してみれば、自分達がハマッた数多くのゲームに当てはまるんのではないでしょうか。

なんとしても遊んでもらいたい、というゲームクリエイターの考え方を理解することは、ゲーム以外の勉強や、仕事をいかにうまくやるかということにも応用できるかもしれません。

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