フィンランド議会の独立宣言から100年
北欧の小国フィンランドが悲願だった独立を宣言したのは1917年12月6日のことです。2017年が独立からちょうど100年の節目を迎える年であり、フィンランドの国内外でさまざまな催しが行われています。そこで今回はムーミンを中心にフィンランド切手の魅力、日本とフィンランドの関わりについて解説したいと思います。ムーミンの故郷フィンランド
ムーミンを知らない人はいないでしょう。フィンランドの女性芸術家・作家トーベ・ヤンソン(1914-2001年)の手によってムーミンの作品が生まれたのは、第二次世界大戦中のことでした。ムーミンが初登場する『小さなトロールと大きな洪水』が世に出たのは1945年のこと。しかしヤンソンは早くも1939年の時点で書き始めていました。トロールとは北欧に伝わる架空の生き物で、ムーミンの登場人物たちはそこから着想を得ています。
芸術一家に生まれたトーベ・ヤンソン
ムーミンの著者トーベ・ヤンソンはスウェーデン系フィンランド人であり、1914年に芸術一家に生まれました。スウェーデンやフランスで美術教育を受けている期間を除けば、生涯の多くをヘルシンキのアトリエとフィンランド湾に浮かぶ島にある自宅との行き来だけで過ごしています。ムーミンがあまりに有名ですが、後半生では小説やエッセイの執筆に力を入れ、公共建築の壁画なども制作しました。フィンランドで発行された世界最初のムーミン切手
世界で最初のムーミン切手が登場したのは1992年10月のこと。4種組の切手帳として発行されました。特に知られているのはそのうちの1枚で、絵本『ムーミン谷の夏祭り』(1954年)の表紙になったものです。ムーミンパパのお芝居を見ているシーンで、観客席となっている中央のボートにはスナフキンやリトルミイがいる様子までシルエットで分かるようになっています。
タンペレのムーミン美術館がオープン
ムーミンファンの方にぜひオススメしたいのは、2017年5月発行のムーミン切手です。タンペレ市立博物館内のムーミン谷美術館が移転し、2017年6月にムーミン美術館として開館したのを記念したものです。特に注目されるのは左上の1枚です。ムーミンシリーズ第1作『ムーミン谷の彗星』(1946年)の冒頭をなす有名なシーンで、物知りのじゃこうねずみに「地球が滅びる」という予言を聞いているところです。シートの右隅にはじゃこうねずみの姿が見えます。
日本は世界で2番目のムーミン切手発行国
少々意外かもしれませんが、日本の郵趣界はフィンランドと深いつながりがあります。その1つが、日本は世界で2番目にムーミン切手を発行した国だということです。郵便局が2015年5月に発行したムーミンのグリーティング切手52円×10種、82円×10種(シール式・現在は発売終了)が、実はフィンランド以外の国では初めて実現した公式のムーミン切手なのです。フィンランド切手の至宝!金井宏之コレクション
もう1つは、日本にはフィンランド切手の珠玉のコレクションが存在することです。日本の郵趣界で長年にわたって指導者的な役割を果たしてきた金井宏之氏(1925-2012年)の収集は世界最高レベルのフィンランド切手コレクションとされ、1988年の国際切手展Finlandiaでナショナル・グランプリに輝いたレジェンド的な作品です。このたび、(公財)日本郵趣協会はコレクションを所蔵する(一財)切手文化博物館とタイアップを行い、フィンランド独立100周年記念事業の一環として2017年10月に「SUOMI FINLAND 1856-1875」(金井フィンランド・コレクション)の特別記念出版物を刊行しています。なお、金井コレクションは2017年11月3日から5日にかけて東京・浅草で開催される第52回全国切手展<JAPEX2017>で招待展示作品として公開されます。