世界から30年遅れている!日本のBPOの現状
世界から遅れているのは、アウトソーシングの活用の仕方と言われます。日本ではアウトソーシングとは言っても、単純作業の外注がほとんどではないでしょうか? これはアウトソーシングではなく「アウトタスクキング」と言われます。業務(タスク)を外に出す、業務の実行部分だけを外部に委託することを指します。世界で言われるアウトソーシングは、戦略立案をはじめ、業務設計、管理責任、業務実行の全てを外部に委託する形態を言います。ですから、世界では、アウトソーシングではなく、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)という言葉で表現されます。アウトソーシング戦略を構築するところから、ノウハウを有する委託先を活用することです。
一方、日本は業務だけをアウトソースし、世界はアウトソーシング戦略から委託する。この差が30年あると言われる所以なのです。ですから、外資系企業の総務(厳密には、外資系には総務部はないですが……)は本当に少ない人数で構成されています。ある従業員数3500人の企業では、総務は一人でした!
日本でBPOが進まなかった理由
なぜ日本では、BPOがなかなか進まないのでしょうか? 一つの理由として「なんでも自前で対応してきた」というこれまでの経緯があります。ほとんどの社員が無限定社員で、明確なジョブ・ディスクリプションが無い中、全て自前主義で対応してきたのです。無限定社員がなんでも対応の自前主義により、アウトソーシングが進まなかった。
「外部にお金を払うのであれば、なんでも対応してくれる自社の社員に任せよう」という選択になり、社員もそれに応えてきました。特に、総務部門は他の部門がやらない仕事、本来社員がやるべきでない仕事まで引き受けてきたケースが多いのです。
また、総務の仕事に対するイメージにも課題があります。「誰でもできる仕事」「専門性は必要ない」というイメージが根強く、外部委託など検討もされなかったのです。
BPOのメリットとデメリット
■メリット- 限られたリソースをよりコアな部分に集中させることができる
- 専門企業に蓄積されたノウハウの活用によって業務プロセスを最適化し、効率的な業務運営が可能となる
- 専門知識やスキルを持つスタッフが業務を担当するので、法改正への対応や、最新のIT技術の導入などが可能となる
- 業務が見える化され、誰でも対応できるようマニュアルが整備され、業務の継続性が確保される
- ISMSやプライバシーマークの認証を取得している事業者も多く、適切なレベルのセキュリティが確保されることになります
- 業務の効率化やスケールメリットにより、コストダウンが期待できる
■デメリット
- 業務がコントロールできなくなる危険性がある
- 緊急対応がしにくくなることがある
- 情報漏えいなどのリスクが高まる
アウトソーシングをすることのデメリットは、アウトソーシングにより、業務プロセスの分断と外部に任せることのリスクが生じることです。
委託先(アウトソーサー)との良好な関係作りとは?
委託先とどのような関係を構築するかも大事なポイントです。目的がコスト削減のみであれば、あるいは、単純作業であるならビジネスライクな関係で良いでしょうが、委託業務の改善や改革を望むのであるなら、パートナーとしての関係構築が必要です。パートナーとしての関係作りが、アウトソーシングの成功の鍵となる。
必要な情報は提供しつつ、業務目的を共有しながら、ともに作り上げていく姿勢が必要です。パートナーとして対等な関係で向き合うべきです。ただ、どちらにせよ、委託先企業の厳正な評価、積極的な評価による適度な緊張感は必要でしょう。
業務に精通した、委託先のスタッフを管理できる人材の育成も必要です。企業を取り巻く環境変化の激しい現在、一度委託したからその内容がそのまま、ということはあり得ません。変化に応じた要求、改善は自社の人間により的確に指示しなければなりません。委託先の事業者を進化させることも、自社にとって大切なことなのです。
上手なBPOの進め方
アウトソーシングを考える場合に必要なのが、自部門だけの視点でアウトソーシングを考えてしまうこと。自部門ありきではなく、企業全体から考えるべきです。自社にとって総務がやるべきことは何なのか。その業務を行うためには、総務は何を強化すべきなのか。その強化のための効率化、外部リソースの活用、そのためのアウトソーシングという流れです。決して、自部門だけの視点で考えてはいけません。
そして、アウトソーサーの持つ情報やナレッジ、企業事例を活用するとともに、実際にアウトソースすることで総務にリソースを作り、会社を変える仕事に取り組むのです。