『アダムス・ファミリー』観劇レポート
風変りな賑々しさの中で、人生についての
ちょっとした気づきを与えるミュージカル
『アダムス・ファミリー』撮影:引地信彦
一部に新キャストを迎えて帰ってきた、日本版『アダムス・ファミリー』。首都圏会場は(今はなき)青山劇場からKAAT神奈川芸術劇場へと移ったことで、まずは間口、奥行きともに広々とした空間が“お化けの一族”アダムス家の邸宅という“異空間”にぴったり。客席前方数列をつぶして設けたピットからの音もクリアで、10人ほどのオーケストラは特に弦楽器と打楽器の音色が程よいバランスです(音楽監督・指揮=浅川寛行さん)。
『アダムス・ファミリー』撮影:引地信彦
本作の台本は構造的に、(異なる)二人の人物の会話が続き、見せ方によっては平坦な芝居になってしまうのですが、白井晃さん演出では“ご先祖様ゴースト”を演じるアンサンブルがさりげなく場をアシスト、場面転換にも参加することで常に舞台が立体的に、流麗に進行しており、観客を飽きさせることがありません。
『アダムス・ファミリー』撮影:引地信彦
この日の妻・モーティシア役の壮一帆さんはセクシーな物腰とちょっぴり気が強く、さっぱりとした口跡がそこはかとないユーモアを醸し出しており、クールなエレガンスを漂わせるもう一人のモーティシア役・真琴つばささんとは全くカラーが異なりますが、どちらも魅力的なのがこの演目の面白さです。
『アダムス・ファミリー』撮影:引地信彦
『アダムス・ファミリー』撮影:引地信彦
そして今回、作品のスパイス的な存在となっているのが、“グランマ(おばあちゃん)”役の梅沢昌代さん。その絶妙の台詞術でウェンズデーの弟・パグズリーに含蓄ある人生訓をぽんぽんと放ちながらも、しっかりピンでとめるように聞き手の胸に届け、単なる“大騒動”というわけではない、この作品の奥深さを伝えています。
『アダムス・ファミリー』撮影:引地信彦