観葉植物を置く効果とは?
「グリーン(観葉植物)が働き方改革に効果がある」と言ったらちょっと唐突に聞こえますか? この2つがなぜ結び付くのか、多くの方はイメージできないかもしれません。多くの企業のオフィスでは、既に観葉植物が置かれているでしょう。でも、それってフェイク=人工の観葉植物だったりしませんか? 緑色をしていればいいというものではありません。あるいは、本物だとしても、何も考えずに、会議室の奥などに置かれていませんか? 観葉植物も生きものです。光と風、人の動きを敏感に感じるのです。結果、いつまでもみずみずしい緑でいたり、逆にすぐに枯れてしまったり。置く場所によって、大きな影響を受けるのです。
そして、人への作用も侮ってはいけません。グリーンの人に対する影響について、しっかりとしたエビデンスが取れる時代となりました。配置するグリーンや置く場所によって、リラックスして仕事に集中できたり、コミュニケーション活性化の一助になったりします。
なぜ働き方改革にグリーンが効果があるのか。さらに説明していきましょう。
グリーンの効果。リラックス、コミュニケーション活性化。(デザイン:parkERs)
グリーンが集中力を高め、生産性を向上させる
安倍晋三首相が進める「働き方改革」は、長時間労働削減から始まりました。この秋の臨時国会でも、労働時間を制限する法案が決まる予定です。しかし、労働時間が短くなったとしても、仕事そのものの量が減らなければ、どこかで帳尻を合わせなくてはなりません。そこで、いま働き方改革は、生産性の向上が大きなテーマとなっています。生産性の向上、分かりやすく言えば「手際よく仕事をこなし、いつもより大きな成果をあげる」ということです。その実現のためには、労働時間が短くなっても、今までと同等の仕事を処理できる、つまりは「集中力」が必要となってくるのです。
「成果をあげる」という観点では、創造性を高めて新たな企画をバシバシと提案する、そんなことが考えられます。創造性を高めるには、リラックスした状態で考える、あるいは、誰かとコミュニケーションをする、そんなシーンが該当するでしょう。
この「集中力が高まる」「創造性が高まる」ように働く場=オフィスの環境を整備する必要があります。オフィスのグリーンはその強力な一手となるはずです。
人工・フェイクではない本物の観葉植物が人気
いまオフィスの流行は、「五感に響くオフィス」です。昔は、座り心地の良い椅子・ソファー。機能性の高い机・キャビネット、そのようなオフィス什器に関心が集まっていました。いわゆる「触感」であり、肌触りとリラクゼーションがオフィスに求められていたのです。「オフィスのリビング化」も進んでいます。先の触感とともに、「木(もく)」を使った質感のある什器を使い、あたかも自宅のリビングにいるようなリラックスした空間づくりも進んでいます。リフレッシュルームやコーヒールームがそのような空間に変身していますね。
さらに、そのような空間に、アロマを焚いたりして、ほのかな良い「香り」を漂わせるようにしている企業もあります。オフィス向けのアロマの噴霧器も発売されています。さらに、「音」。ハイレゾリューション、略してハイレゾによる自然音をオフィス空間に流す企業もあります。これも安価なシステムが発売されています。
そして、「色」。色については、昔から会議室の壁面を赤くしたり青くしたり、集中モード・拡散モードにあわせて色付けすることがされていました。そして、今の流行が「グリーン」、観葉植物をオフィス内に設置することなのです。フェイクではなく本物のグリーン、あるいは生花の設置です。
いま流行のハンギングタイプのグリーン(デザイン:parkERs)
「適切な量のグリーン」がストレスを軽減する
青山フラワーマーケットのparkERs(パーカーズ)事業部のクリエイティブディレクター城本栄治さんによると、グリーンを置く一番の効果は「ストレス軽減」。イライラが収まり、仕事に集中できるのです。城本さんによると、「緑視率の最適解は10%~15%であり、ヒトは視界に占める植物が多すぎてもストレスを感じ、パフォーマンスが低下します」とのこと。※緑視率:人の視界に占める緑の割合で、緑の多さを表す指標
さらに、「グリーンを設置することで、リクルート効果が高くなった」という声が数多く寄せられているそうです。人材募集の経費にかかる費用をグリーンに回すことで、採用にも寄与し、多くの社員の満足度が高まり、定着率が高まる良い循環が回り出した、という声もあります。
城本さんが携わっているサービスが、つい先日発表された、COMORE BIZ(コモレビズ)というサービス。「緑視率」と「ストレス」の関係性のエビデンス化により、最先端となる植物の最適配置のアルゴリズム化に成功。そのアルゴリズムに基づいて、ストレス軽減に繋がる植物の選定と最適な緑視率を従業員一人一人が確保できるオフィスデザインを提供するサービスです。
多くの企業がオフィスにグリーンを入れ始めている(デザイン:parkERs)
水やりなど観葉植物の育て方
グリーンのメンテナンス等について、先の城本さんと店舗・オフィスの室内植物の提案を数多くしている、FUGAの取締役、仲村博之さんにお聞きしました。専門サービスを利用せず、社員がメンテナンスをする状態ケースも多いでしょう。その場合に注意したいのが、光と風。日光が届かなくても室内の照明で対応できますが、その場合は水銀灯がベストです(赤・青・黄色の光合成に必要な光を作っているため)。風については、窓を開けるのがベストですが、今のオフィスの全館空調は優秀なので、開けられなくても大丈夫。
会議室の奥にグリーンを置くケースがありますが、置く場所はできるだけ入口近くがお薦めです。人の出入りによって空気が流れ、グリーンが人の波動を感じてイキイキしてきます。植物も動物と同じで、動きが感じられた方が長生きするようです。
おしゃれなオフィスになる、お薦め4種類
次に、オフィスに設置するのにお薦めのグリーンを仲村さんに紹介してもらいました。●エバーフレッシュ:細かくさわやかなグリーンの葉がスタイリッシュ。ネムノキと同じ仲間で、日が暮れると睡眠運動で葉を閉じる。変化が分かる、人気のグリーン。
エバーフレッシュ
●フィッカス・ストリクタ:ゴムの樹の一種。枝が垂れるような樹形。暖かい時期がくれば、枝分かれした無数の枝が広がりを魅せ、優しい雰囲気を演出。丈夫すぎるくらい丈夫。
フィッカス・ストリクタ
●サンセベリア:乾燥に強く、水不足で葉がしおれることはあってもなかなか枯死しない。日照不足に強いのも特徴。ただし低温と過湿には弱い。手間がかからない。
サンセベリア
●モンステラ:葉は成長するにつれ、縁から切れ込みが入ったり穴があき、独特な面白い姿に。乾燥には比較的強く、明るい室内でたまに水やりをするだけで、綺麗に育つ。
モンステラ
考えてみれば、人類がこの地球上に登場したのが、チンパンジーと分かれた瞬間だと考えれば600万年前、二足歩行を人類の特徴だと言うのなら化石の発見上では450万年前。この数百万年の間、人類は木陰の下で生活していました。家を建て、室内に暮らすようになったのは1万年も満たない期間です。
そう考えれば、グリーンがあることによりストレスが軽減されるのは自然の摂理。今後はもっと意識的かつ科学的に、オフィスにグリーンが使われるようになることでしょう。