アドバイス1 月25万円なら年収100万円では足りない
ご相談文を拝見して思うことは、合わないと思う仕事に就いて、よく18年間も頑張って勤務されたということ。大変だったと思います。では希望どおり、早期退職は可能でしょうか。資産をしてみましょう。現時点で退職し、すぐに年収100万円程度のアルバイトを始めたとします。生活費を月25万円とすれば、公的年金が支給される65歳までの22年間で6600万円。対して、年収は65歳までに計2200万円ですから、この間、貯蓄から取り崩すのは4400万円。したがって65歳の時点で3600万円が手元に残ります。
65歳以降は公的年金が支給されますが、おそらく額面で月12万円程度(老齢基礎年金を満額まで増えると想定)。つまり、貯蓄を取り崩す額は年間に160万円ほどとなり、87歳で用意した老後資金は底をつきます。長生きリスクはもちろんのこと、まとまった大きな支出(病気入院や介護費用など)が発生すれば、資金不足となる時期は当然前倒しとなります。さらに、80歳以降、手持ち資金が目に見えて減っていくことは精神的にもつらいでしょう。結果、年収100万程度では不足と言わざるを得ません。
アドバイス2 生活費が増えることを想定し、収入アップを目指す
予定しているリタイア後の生活費を下げることは、有効な手段ですが、そう簡単ではないかもしれません。まず、意識的に生活費を落とし、それを維持する家計管理が必要です。さらに、アルバイト生活となればボーナスがなくなりますから、そこから捻出していた支出は、結果的に月の生活費に上乗せされます。加えて、国民年金を含む社会保険料や税金を、月25万円の生活費に含めているかどうか。含めていないなら、生活コストに上乗せしなくてはいけません。仮に平均月3万円支出が増えれば(実質の生活費は月28万円)、計算上、79歳で手持ち資金はゼロになります。そうなると、退職後の収入アップがもっとも確実な対応策となります。生活費を月25万円として、かつ社会保険料や税金を別とするなら、年収150万円で65歳まで働いても、上乗せできるのは1100万円ほど。金額としては心許ないでしょう。いくつかのリスクを考慮するなら年収220万~230万円程度はほしいところです。
アドバイス3 早期に退職し、心身を休めることが大切
もうひとつの対処策として、リタイア時期を延ばすという方法もあります。相談にも「いつまで現在の仕事を続けるべきか」とありますが、マネープランから言えばより長く続ける方が望ましいのは間違いありません。しかし、健康を第一に考えれば、年内に辞めた方がいいですし、退職後は数カ月はゆっくり休むことを勧めます。老後資金が足りないという状況で矛盾しているようですが、今、優先すべきは、働くことではなく、休むことです。バッジョさんは心身ともに限界に近づいているのではないでしょうか。したがって、まずはひと休みして、18年間の疲れを取る。そしてリフレッシュした後に、リスタートすればいいでしょう。
焦る必要はありません。アルバイトで月18万円前後の収入を得るのは難しいですが、バッジョさんは、働いて収入を得る=人的資本がしっかりと備わっています。派遣社員はもとより、正社員で働くこともそう難しくはないはずです。正社員であれば、厚生年金の受取額も増え、さらに資金的な余裕も生まれます。そして、元気に65歳まで働くことが大切です。
あとは投資ですが、徐々に利益確定をして、投資額を減らしていくべきです。今の投資商品の総額は、あくまで評価額であり、含み益に過ぎません。売却してはじめて資産として確定するわけです。今後は「投資はしない」とのことですが、その方向でいいと思います。少なくとも、自分に収入がない(あるいは少ない)時期に、「お金に働いてもらおう」といったことは、考えるべきではありません。
教えてくれたのは……
深野 康彦さん
取材・文/清水京武
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