旅館

もう迷わない!旅館で気をつけるべき8つのこと

和のマナーが基本となる日本旅館ですが、施設やサービス内容も宿によって個性豊か。それだけに迷うことも少なくないですよね。でも、基本の考え方は一緒です。チェックイン編、食事編、温泉編とシーン別に旅館で気を付けたいことをお教えします。8つのポイントを頭の片隅に置きながら、心地よい旅館ライフを楽しみましょう。

山田 祐子

執筆者:山田 祐子

旅館ガイド

旅館で気をつけるべき8つのこと

和のマナーが基本となる日本旅館ですが、施設やサービス内容も宿によって個性豊か。それだけに迷うことも少なくないですよね。でも、基本の考え方は一緒です。「旅館で気をつけたい8つのこと」を頭の片隅におきながら心地よい旅館ライフを楽しみましょう。

<INDEX>
・旅館で気をつけるべきこと ~チェックイン編~
・旅館で気をつけるべきこと ~食事編~
・旅館で気をつけるべきこと ~温泉編~

チェックイン編

旅館マナー

旅館の玄関で迷う「靴の脱ぎ方」
 

その1 「靴の向きを直してはいけない」

宿へ到着し、靴を脱いで館内へ入る時。靴の向きを直すか?直さないか?迷ったことはありませんか? 実は、答えはシンプル。

下足番や係が出迎えている場合は、係が靴箱にしまってくれますので、腰をかがめて向きを直さずとも、そのままあがればスマートです。反対に宿の者が不在であった場合には、脱いだままにはせず、つま先を屋外の方へ向け、両靴を揃えておきましょう。

和のマナーでは男性が上位ですので、ご夫婦であれば、ご主人が先にあがり、その後、奥様がご主人の靴を揃え、奥様の分は下座にしておくのも日本ならではの仕草だと言えましょう。

玄関の下座上座は、下駄箱があるほうが上座となりますが、宿の場合、下駄箱の場所が死角の場合もありますので、その際は、帳場やフロントの位置が上座とするとスムーズかと思います。


その2 「偽名を使ってはならない」

チェックインで「名前と住所と電話番号を記入してください。」というお決まりの流れ。「ネット予約しているのにまた書くの?」「個人情報は大丈夫?」と面倒に思ったことはありませんか?

そして、迷う場面の最たるものが「ワケあり旅行」の時ではないでしょうか。「お連れ様の名前もご記入お願いします。」と言われ焦った記憶はありませんか? 「後々バレたらまずいことになる。ここは偽名で!」としたくなる気持ちは分かりますが、以下の事情を知ったうえで判断してもらいたいと思います。

宿泊者名簿に「偽名」を書くこと自体は罪ではありません。刑法には、私文書偽造罪がありますが、宿泊者名簿は私文書ではないことから、偽名を使ったとしても罪に問われることはありません。しかしながら、宿が規制されている旅館業法のなかでは「宿泊者名簿の設置・記載・提出」が義務づけされており、加えて「宿泊者に対し、正確な記載を働きかける」という事項も指導されているのです。

宿泊者にとっても一定の義務を負うことになり、偽名を書いたとしても、宿が宿泊者に身分情報の開示を請求した場合、開示義務があるのです。違反した場合は罰則規定もあります。宿側としては、事件などが発生すれば、警察から宿泊者名簿の開示を求められますし、事故や天災による保険や補償の対象外になる可能性があるため、正確な記載をお願いしているのです。

偽名は罪にならない。しかし、求められれば正確に開示しないと罪になる、というのが現状です。

旅館マナー

部屋に通されて覚えておきたい2つのこと


 

その3 「『心づけ』は渡さなくてもよい」

海外のレストランやホテルに行くと 、食事後に渡すことが多い「チップ」。日本でも高級旅館などでは、「心付け(チップ)」を渡すべきかどうか迷いますよね。

結論からすると「渡す必要はありません」。戦後、日本へは海外から「チップ」という文化が入ってきましたが、最後に金銭を渡すような流れは日本には馴染まなかったため、利用者一律に課せられる「サービス料」が生まれたのです。よって、サービス料は既に料金に含まれています。もちろん、慣れた方なら自然に渡すのも粋な仕草なのかもしれませんが、今の旅館の体制を考えると「見栄」以上の意味にはなりにくいのが現状です。

なぜなら、働き手が沢山いた高度成長期の時代には、「それを渡せば、その人が特別な計らいをしてくれる。」という「茶代」と呼ばれる風習があったのですが、人手不足に悩む現在の宿業において、チェックイン時には通される部屋は既に決まっており、夕食の仕込みも始まっている場合が多いため、「心付け」を渡されたからといって、期待されるような「眺めの良い部屋」「食事の内容を良くする」など、特別な対応に宿側も苦慮してしまう場合も少なくないのです。

もし渡すなら「サービスをしてくれた後」です。あくまでも「サービスの前」に渡すのは「わいろ」。期待をしてはいけません。自然に「渡したい」という気持ちが芽生えて渡すのが本当の「心付け」。感謝の気持ちとしての「心付け」は、人間の自然な生業かもしれません。

とはいえ、心付けを渡すことによって、気がねなく過ごせる場合もあります。子供や不自由な方がいる時や記念日などで特別な演出をしたい時に、宿側が通常の範囲を超えた時間や人員を提供する場合です。目安は、総額の10%程度。部屋に案内され係が下がる時にでも、白い封筒や懐紙に包んで渡すのがいいでしょう。「袖の下」ではなく、「迷惑かけるね。」と、相手を想う気持ちをもちたいものです。「心付け」とはそういう日本人ならではの精神文化の一つと言えるでしょう。

その4 「レディファーストはしなくてもよい」

部屋に通されて部屋係にお茶を入れてもらう時。「どちらに座る?」と悩むカップルさんを目にします。和のマナーでは基本的に男性が上位です。上座(床の間側)に座るのは男性です。床の間がない部屋の場合は、入口から奥の方が上座となります。

もちろん例外はあります。例えば、親族であれば祖母や母親。仕事関係であれば上司や立場的に上位の女性は、上座に勧めるのがマナーです。


食事編

旅館マナー

旅館の食事時に覚えておきたい2つのこと


 

その5 「乾杯の生ビールは頼まなくて正解の場合がある。」

これは「部屋食に限り」という限定をしておきましょう。「温泉でサッパリ! お腹も空いたー。乾杯は生だよね!」という気持ちは良く分かりますがお待ちください。飲食店のように「へいお待ち!」という訳にはいかず、部屋食の場合はどうしても時間がかかってしまう時があるのです。大きな宿では、各フロアーに生ビールサーバーを置いているところもありますが、離れタイプの客室や小さい宿ですと、離れた場所から運んでくる場合もあります。

そんな時は、イライラするのも損ですし、冷蔵庫にキンキンに冷えている瓶ビールで一先ず乾杯するのはいかがでしょう? ひと息ついて宿自慢のドリンクメニューをしげしげ眺め始めるのでも遅くはありません。

旅館は規模の大小にもよりますが、その歴史の長さから増築や増床を繰り返しているため、厨房から客室までの導線が複雑であるところも少なくありません。そこで宿としては、提供の仕方を工夫し、昨今ではIT技術を駆使して「温かいものは温かいうちに冷たいものは冷たいうちに」と迅速に配膳できるよう改善を続けています。


その6 「お酒好きは『火は自分でつけますので』」

お酒が大好きなガイドですが、チャッカマンやマッチが卓上にあれば、空かさず自分の方へ引き寄せてしまいます。既に並んでいる料理のなかに火を使う品があった場合、係によっては良かれと思って最初から火をつけてくれる事がありますね。そうすると、ゆっくり食事とお酒を楽しみたい左党の方ですと、例えば、刺身の前に肉のしゃぶしゃぶを食べる事になるのです。または、固形燃料の替えをお願いすることになってしまう。

そんな時は「自分で付けますから置いておいてください。」と言い切ってしまいましょう。小さいお子様がいた場合は、危険ですので、チャッカマンやマッチは一旦下げてもらい必要な時にお願いするようでも良いかもしれません。


温泉編

旅館マナー

温泉に入る時に覚えておきたい2つのこと


 

その7 「最後にシャワーはしてはならない」

温泉に入って浴室から出る直前。どうしていますか?「必ずシャワーをします。」という方は温泉のパワーを十分に得られていないかもしれませんよ。

温泉成分は、湯上り後も肌に浸透し続けます。ですので、特に源泉かけ流しの湯に浸かった後に、普通の湯をかけてしまっては、その成分が流されてしますのでもったいない!脱衣所に出る前に軽く浴用タオルで水分を抑え、あとは、体の温度で自然乾燥をさせましょう。

*刺激の強い酸性・硫黄泉は洗い流してください。


その8 「ボディタオルを使ってはならない」

浴室に入ったら湯船に入る前に体を洗浄することはマナーでありますが、ボディタオルや浴用タオルでゴシゴシ洗ってはいませんか?実はそれ、NGです。

温泉によっては、温泉そのものが肌の角質を落としてくれる成分が入る泉質や、肌に刺激が強い泉質である場合は、ゴシゴシ洗ってはお肌を傷つけてしまうことがあるのです。

前者の代表的な泉質は炭酸水素塩泉。Ph値が高いアルカリ性ですと肌触りがトロトロするのが特徴です。後者は、白や青色をして臭いが強い酸性泉です。その場合は、汚れている箇所を手で優しく洗うのがベターと言えます。


ホテルと違って、その設備や食事に「お決まりパターン」が少ないのも日本旅館の魅力です。以上、基本の「8つのこと」を応用しながら、充実した滞在にしてもらいたいと思います。

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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